ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2007.03.10]

松山バレエ団の新『白鳥の湖』

通常上演されている『白鳥の湖』の基本とされるプティパ版では、ある王国の王子ジークフリートの成人式から始まり、母の王妃から王国をつつがなく収めるためにも花嫁を娶るように要請される。
王子は、自由気ままに過ごしてきた青春の終りという人生の節目に、憂愁を感じる。そして、神秘的な森の中で出会ったオデットに惹かれる。

  清水哲太郎の演出・振付による松山バレエ団の新『白鳥の湖』は、神聖ローマ帝国皇太子のジークフリードが戴冠式を行うシーンから始まる。その豪華な式典に は既に、魔王フォン・ロットバルトが経験の浅い新皇帝が着任するこの国をさん奪しようと奸計を廻らして参加している。さらに、ジークフリードがオデットと 出会い恋に陥るのも、じつはフォン・ロットバルトの導きである。そして、魔王の奸計によって始まった恋がどのような結末を迎えるのか、が描かれる。ジーク フリードの青春の終りが、具体的な政治的社会的背景の中に捉えられているのである。

複雑なコール・ドの動かし方は見事であり、ロットバルトの魔術が巨大な暗黒の塊を自在に操って封印を行うシーンも迫力がある。また、3幕はプティパ版などで踊られるディヴェルティスマンではなく、ヨーロッパの様々の王国からの派遣団が踊る、という設定となっている。
4幕は幕が開くと、舞台全面にホワイトリノリュームが敷き詰めてあり、まばゆいばかりの明るさが感じられて、たいへん印象的だった。純白の美しさが、オデットとジークフリードの愛の崇高さを際立たせる、心憎い演出である。
(2月1日、NHKホール)