ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2007.01.10]

スターダンサーズ・バレエ団のフォーサイス、チューダー、バランシン

 スターダンサーズ・バレエ団がトリプルビル公演を行い、ウィリアム・ファーサイスの『アプロクシメイト・ソナ タ』(フォーサイス、ヴィレムス)、アントニー・チューダーの『リラの薗』(チューダー、ショーソン)、ジョージ・バランシンの『スコッチ・シンフォ ニー』(バランシン、メンデルスゾーン)の三作品を上演した。

フォーサイスの『アプロクシメイト・ソナタ』は、1996年にフランクフルト・バレエ団で初演されたもので、日本初演となる。
舞台は背景に半開き状態の幕が見え、その前でダンスのリハーサルとおぼしき光景が演じられる。まず、男性ダンサーが舞台の奥から手前に演技しながら歩い てくる。舞台監督からそのダンサーへのインカムがオンになっていて、指示の声が聞える。トリッキーの「パンプキン」が流れ、交代でリハーサルをするダン サーが登場する。音楽はピアノのソロに変わるが、外部から(例えば他のスタジオとか)聴こえてくる音らしく、リハーサルをするダンサーは無頓着。ポーズが 決まるとそのまま次のダンサーが受け継いだり、あるいはさっさと退場したりする。
パ・ド・ドゥのリハーサル風景----幕の内側----を、ソナタの形式に整えて作品としたものと思われる。劇場のプロセニアムの中で行われるダンスを 解体して、再構成しようという意図をもった作品である。アプロクシメイトとは、アルゴリズムなどに用いられる「近似の」という意で使われているのだろう。



『アプロクシメイト・ソナタ』
小山恵美、新田知洋

『アプロクシメイト・ソナタ』
福原昌美、大野大輔

 チューダーの『リラの薗』は、1936年にバレエ・ランバートに振付けられた作品だが、昨夜ゲネプロを終えたばかり、といっても不自然ではない。とても今から70年も前に創られた作品とは思えないほど、男女の関係の襞をヴィヴィッドに描いている。
1900年代のエドワード朝時代の、強いられた結婚を前夜に控えた女性と彼女を密かに愛する男性と、夫となる男性の愛人が交錯するお別れパーティが舞台 である。リラの花が咲き乱れ、月光が射し込む中庭で登場人物それぞれが胸に抱いた想いを、様々な方法で相手の胸に刻みこもうとするが、思うようには進展し ない。そうした心理が織りなす綾を月明りが冷ややかに映し出すのである。
愛を求める人たちの心理をいかに細やかに、絵解き風にならずに緊張感を失わずに展開できるか、それがこの作品の命と言ってもいいのではないだろうか。

最後はバランシンの『スコッチ・シンフォニー』が踊られた。トリプルビルとしては、優れた高度な作品によるプログラミングだった。
(12月2日、ゆうぽうと簡易保険ホール)



『リラの園』
小池知子、福原大介

『スコッチ・シンフォニー』
林ゆりえ、新村純一