ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2006.12.10]

東京バレエ団が『ドナウの娘』を日本初演

  ロマンテッィク・バレエ復元のスペシャリスト、ピエール・ラコットが手掛けた『ドナウの娘』が、東京バレエ団により日本初演された。『ラ・シルフィード』 同様、19世紀の伝説の舞姫マリ・タリオーニのために、父フィリッポ・タリオーニが振付けた作品で、ラコットが1978年に復元・改訂したもの。ドナウの 川辺で発見された娘フルール・デ・シャン(「野の花」の意味)と男爵の従者ルドルフの愛を描いた二幕の作品だが、現実世界とドナウの川底という幻想の世界 を行き交い、水の精が登場する展開は、ロマンティック・バレエそのもの。娘は、はからずも男爵の花嫁に選ばれ、自分との仲を告白したルドルフが捕らえられ たため、絶望してドナウ川に身を投げる。後を追ったルドルフは、水の精の中から恋人を探し当て、ドナウの女王により、二人で地上に戻ることを許されて幕と なる。これを彩るのが、全編に散りばめられた、様々な技を駆使した多彩な踊りである。

フルール・デ・シャン(斎藤友佳理)の家の前に、高いジャンプで跳び込んできたルドルフ(木村和夫)が軽やかな跳躍で恋心を伝え、斎藤と組んで踊り、養母 とやりとりする和やかな導入部は、『ジゼル』を思わせた。ここでの斎藤は繊細なつま先の動きを際立たせたが、男爵の花嫁選びの場では、わざと脚を引きず り、ヨタヨタ歩く姿で笑わせた。木村は、悲しみで気が触れ、男爵に歯向かう所では、形相を変えた迫真の演技を見せ、夢の中の斎藤とのデュオではしっとりと した情感を醸し出す。川底の場では、斎藤のたおやかな身のこなしと、木村の律動的なアントルシャが優しいハーモニーを奏でた。
花 嫁選びの場で、男爵役の大嶋正樹は切れ味の良い跳躍を披露し、花嫁候補の村娘たちも、異なる技が盛り込まれたソロをきれいにこなした。ドナウの女王の井脇 幸江は、派手な見せ場はないものの、慈愛にみちた温かさで舞台を包んだ。水の精たちの群舞も、透明感のある詩情をたたえて幻想的だった。なお、斎藤と木村 が長いベールを引きずりながら川面に昇る幕切れだが、あの宙吊りの演出を変えて欲しいと思ったのは、私だけだろうか。
なお、斎藤と木村が宙吊りにされ、長いベールを引きずって川面に昇る幕切れは、ロマンティック・バレエにふさわしいとは思うが、なぜか違和感を覚えてしまったのである。
(11月18日、東京文化会館)