ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2006.11.10]

サンクトペテルブルク・アカデミー・バレエの『ロダン』ほか

 サンクトペテルブルク・アカデミー・バレエは、1966年にピヨートル・グゼフが設立したが、その後、レオニード・ヤコブソンが芸術監督を務めて発展した。
ヤコブソンは、キーロフ・バレエで若くから振付を始め、ワイノーネンとともにシェスタコーヴィッチの『黄金時代』、後にハチャトリアンの曲を使った最初 のバレエ『スパルタクス』を振付けた。その他にも、ロシア・アヴァンギャルドの旗手だったマヤコフスキーの詩に基づいた『南京虫』も振付ているが、これは マラーホフが踊ったことでも知られる。
サンクトペテルブルク・アカデミー・バレエは、そうしたヤコブソンの伝統を継承しつつ、革新的な舞台を創るという実験精神を受け継いでいるカンパニーで、現在はユーリー・ペトゥホフが芸術監督を務めている。


”ロダン”より

”ロダン”より

”ロダン”より

 来日公演では、「ロシア・バレエの美しき系譜」と名付けたガラ・コンサートが上演された。
ガラ・コンサートの第1部は、ヤコブソンが振付けた『ロダン』。「ロダンの彫刻によるバレエ・ミニアチュール」というサブタイトルが付けられている。
この『ロダン』は、ヤコブソンがエルミタージュ美術館に展示されているオーギュスト・ロダンの彫刻に魅せられて創ったバレエ。1958年に振付られたド ビュッシーの音楽による「永遠の春」「接吻」「永遠の偶像」、63年のプロコフィエフの音楽による「絶望」「エクスタシー」、71年のアルバン・ベルクの 音楽による「ミノタウロスとニンフ」があり、ロダン3部作と言われる。
女性ダンサーも男性ダンサーも白い総タイツを基本にして踊る。ほとんどのシーンが舞台の暗い闇の中にスポットが当たり、白いタイツのカップルが愛のさま ざまな姿を描く。全体にクラシカルな節度ある美しさを追究していて、ケレン味なく踊られていた。若いダンサーの柔軟な動きが、ロダンの捉えた愛の姿に時間 と空間を与え、その永遠性を感得させた。

第 2部は「名作バレエの傑作集」で『ドン・キホーテ』のグラン・パ・ド・ドゥ、『瀕死の白鳥』などお馴染みの作品がつぎつぎと踊られた。そのなかで『パ・ ド・カトル』は、ジュール・ぺローのタリオーニらが踊った舞台の石版画が、踊り出すという設定でヤコブソンが振付けたもの。4枚の花びらがひらいて空を舞 い、再びもとの花に収まるという、なかなか優雅な舞台だった。音楽はヴィンチェンツィオ・ベッリーニ。チャイコフスキーの『イタリア奇想曲』に芸術監督の ペトゥホフが振付けた同名のバレエも印象に残った。6組のカップルを様々に組み換えたり、女性のパ・ド・シス、男性のパ・ド・トロワ、カップルのパ・ド・ ドゥなど思い切ったフォーメーションを見せ、イタリア風のステップをふんだんに使った踊り。カプリッチョの色彩豊かで、自由快活な気分が横溢した、爽快な 舞台だった。際立ったスターが踊ったわけではないが、好感の持てる公演だった。
(10月19日、新宿文化センター)

”白鳥の湖”より


”白鳥の湖”より

”白鳥の湖”より