ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2006.04.10]

珍しいキノコ舞踊団『また、家まで歩いてく。』

「珍 しいキノコ舞踊団」は、日常を切り取ったようなステージ展開でダンス界に新風を吹き込んでいる女性だけによるユニークなグループ。『また、家まで歩いて く。』は、昨年、彩の国さいたま芸術劇場で上演して好評を得た『家まで歩いてく。』の改訂版である。構成・振付・演出は、舞踊団の代表を務める伊藤千枝。 前回は、平土間の舞台をすり鉢状の客席が三方から見下ろすように囲む形だったが、今回は舞台と客席が向き合う通常の形。天井からは羽根を羽ばたかせて飛ぶ 鳥の群が吊るされ、両サイドの壁には植物の茂みを暗示するようなセットが付けられ、また、鳥のさえずりが冒頭と最後のほうに流されるなど、自然に包まれた 環境が強調されていた。だが、基本的なコンセプトは同じである。

仕切りを兼ねた衝立の向きが変わると、ソファーや棚などが現われ、戸外から瞬時に室内の光景に転換するのも同じ。小さな丘がくるりと回ると、雪室のかまく らのように、中にダンサーが座っていたりもする。カジュアルな服装の七人のダンサーたちは、ゆっくりと動き始め、床をころげ、互いに絡み合い、ソファーで くつろいでビールを飲んだり、マットレスに寝そべったり、イスに座って本を読んだりと、いろいろな日常のシーンが同時に提示された。また、幼稚園でのスイ カ割り大会や兄弟喧嘩、厳しかった父の思い出を語るダンサーもいた。「こんな思い出、あなたにもあるでしょう」とでもいうふうに。英語の語りや歌も流され たが、「I have nothing at all」という言葉の繰り返しが耳に残った。

ダンサーたちは、自己を解放し、互いの呼吸を聞き合いながら踊っているように見え、そのせいか全般にゆったり感を増したようで、今回は時間の流れもゆるやかに感じられた。
(3月24日、スパイラルホール)


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