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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2005.08.10]

●英国ロイヤル・バレエ団『シンデレラ』『マノン』

六年振りに来演した英国ロイヤル・バレエ団。 演目は、同団芸術監督を相次いで務めたフレデリック・アシュトンの『シンデレラ』とケネス・マクミランの『マノン』で、正にお家芸という伝統の舞台を誇示した。 同時に、ヒロインにシルヴィ・ギエムや吉田都、ダーシー・バッセルら大スターに加えて、同団期待の若手を起用したキャストを組み、ダンサーの層の厚さを裏付けもした。 新星の中でも特に注目されるロベルタ・マルケスとアリーナ・コジョカルが、それぞれシンデレラとマノンを踊った日を観た。

『シンデレラ』で、マルケスは伸びやかなテクニックで清楚なシンデレラを演じた。ほうきに体を預け、軽やかにステップを踏む姿は、見えない誰かを相手にしているようで、いじらしいが、芯は強い印象を与える。 舞踏会で王子と端麗に舞った後、粗末な服に戻ってその思い出に浸るソロには、しっとりと抒情を滲ませ、冒頭のソロとの違いを際立たせるなど、役作りも入念。もっと色々な役で見てみたいと思わせた。

イヴァン・プトロフは、いかにも育ちの良い王子といった感じで、シャープな回転や跳躍を品よくこなした。 J・ハウエルズとA・マリオットが女装で演じた義姉たちは、意地悪だが憎めないひょうきんさも備え、笑いを誘った。 ジャコモ・チリアーチの道化が見事な跳躍やピルエットを披露し、冬の精を踊ったサラ・ラムの完成度の高い繊細なソロが目を引いた。全体にテンポの速い舞台展開で楽しませた。

『シンデレラ』
(7月11日・東京文化会館)


『シンデレラ』

『マノン』

『マノン』

『マノン』で、コジョカルは凛とした美しさを放つファム・ファタールを演じて魅了した。 デ・グリューとのデュオも、出合いの場では徐々にためらいを解き、寝室の場では奔放に愛を燃え上がらせ、沼地では絶望に身を反らすなど、心の内を的確に伝えた。 宝石に心奪われて恋人を捨てても罪深さを感じさせず、娼家で男から男へとシフトされたまま受け渡される所でも気品を失わない。 しなやかな腕の動きや繊細なパ・ド・ブーレなど、一つ一つの動作が言葉になる。大先輩に引けを取らない堂々たる演技だった。 デ・グリューのヨハン・コボーは世渡りを知らない一途な青年を好演し、レスコーのヴァチェスラフ・サモドゥーロフは酔っぱらいのソロで笑わせた。 舞台中央では踊りを、端では運命を左右するドラマを同時に進行させるなど、マクミランの緻密な作舞に改めて感心した。群舞を含め、重厚な舞台を現出させたダンサーたちも素晴らしい。
(7月16日昼・東京文化会館)