ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2005.08.10]

●東京シティ・バレエ団『ジゼル』

東京シティ・バレエ団が、人気の演目の中からロマンティック・バレエの名作『ジゼル』(演出・振付:金井利久)を、この主役に初挑戦する若手をベテランと組ませて上演した。 初日のジゼルとアルブレヒトは安達悦子と新進の小林洋壱、二日目は新星、志賀育恵と黄凱というキャスティング。その初日に出掛けたが、地震で交通網が大幅に乱れたため、開演は50分遅らされた。 それでも間に合わなかった人が大分いたようで、寂しい客席を豊かなオーケストラ(福田一雄指揮東京シティ・フィル)の響きが満たして、幕が開いた。

小林は溌剌と立ち振る舞い、伸びやかな跳躍でジゼルへの思いを表す。安達との息遣いも合っていた。 直情的なヒラリオン(佐藤雄基)を、変にむきにならずにかわすなど、村の青年に変装しても、育ちの良さを漂わした。 安達は、良く踊りこんでいる役だけに、安定したテクニックと余裕の演技。柔らかな足先のステップや軽やかなジャンプで恋の喜びを伝え、また恋人の裏切りを知ったショック、くやしさ、悲しさを細やかに表現した。
 

二人の踊りは第二幕で一層深まった。 ウィリになった安達が、墓にひざまずくアルブレヒトの方へ、身を差し伸べるようにして揺り動かした腕や手先の繊細だったこと。 この世ならぬ、ふわっとした跳躍や、しなやかな上体の動きが、浄化された愛を思わせた。小林も、安達と宙を舞うようなユニゾンを見せ、足さばきも決まっていた。 初役とは思えない出来映えだった。ウィリたちの群舞も均整が取れており、幻想的な白いバレエを具現した。 また第一幕でペザント・パ・ド・ドゥを踊った若林美和と鈴木幸二郎も好演。鈴木のジャンプ少々重く見えたのは、緊張のためだろう。 なお、開演後に辿り着いた観客も多かったようで、終演後、ダンサーたちは観客に謝意を表そうと、舞台衣装のまま会場の入り口で見送った。 この日の舞台は、ダンサーにとっても観客にとっても、特別な公演として長く記憶されるに違いない。
(7月23日、ティアラこうとう・大ホール)