ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2005.07.10]
 今月はたいへん盛り沢山の内容。 ギリシャの「デルフィ芸術フェスティバル」、デンマーク王立バレエ団の「第3回ブルノンヴィル・フェスティバル」というふたつの海外公演レポートを同時に掲載。 さらに来日公演も、マラーホフのベルリン国立バレエ団を始め、ピナ・バウシュのヴッパタール舞踊団の『ネフェス』、マシュー・ボーンの『愛と幻想のシルフィード』、 さらに国内のダンス公演も充実して読み切れないほどのボリューム。Dance Cubeでしか読めない情報が満載です。

●ピナ・バウシュ、9回目の来日公演で『ネフェス』を上演

 ピナ・バウシュがトルコのイスタンブールに取材し、2003年に初演した国際共同制作作品『ネフェス』(呼気)が、9回目の来日公演として上演された。

三方を暗幕で囲み、舞台中央の奥に水をたたえた泉が設えられている。その周辺でダンサーたちは踊るのだが、泉の水はじわじわと満ちてきたり、知らず知らずのうちに干上がっていたりする。 のみならず、ザァーッと驟雨のように降ってきたりもする。
 

 腰にタオルを巻いた男たちがトルコの公共浴場に集い、石鹸水に浸した布を吹いて泡をたてたり、ロングドレスの女たちが長い髪を梳ったり、 泉の畔で蜂蜜を幸せそうに舐めていたり、前半はスケッチ風の挿絵といった感じの様々のシーンが見られる。 後半はインドやインドネシア、韓国のダンサーたちのオリエンタルなダンスが次々と踊られた。フィナーレは男性と女性に分かれ、舞台に腰を落した動きを中心とした全員のポロネーズである。

人類は誕生以来、常に泉の畔に集い、暮らし、文化文明を紡いできた。
水の都イスタンブールに触発されて創られたこのダンスは、呼吸する泉と共に踊られている。 そして、ピナ・バウシュのダンサーたちが演ずる明るい楽天的なシーンを見ていると、泉の水がどんどん満ちてくると地球温暖化の影響を感じ、 水がしだいに引いていくと砂漠化現象を思い浮かべ、天から降ってくると災害を案ずる。 そういう人間存在の背景の自然の営みへと、自ずと思いを馳せてしまう、そんな印象に包まれた舞台であった。
(6月14日、新宿文化センター)