ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2005.03.10]

●勅使川原三郎の『風花』新国立劇場版

『風花』は昨年、フランスのリール・オペラ座の委嘱で創られ、新国立劇場の上演のためにさらに改訂された。
タイトルの「風花」とは、<晴天に風と共にちらちら降る雪>のことであり、「なにか常ならざる事、至上の瞬間を感じさせる言葉であり、イメージである」と勅使川原は言う。

勅使川原による美術と照明が見事である。いつものことだがやはり感心させられる。舞台の四方を、メタリックな細いコードを天から垂らして囲む。 客席からは光る紗幕越しに舞台を観ているような効果を生む。下手と上手の床には、舞台奥から手前に小さな間接照明を等間隔に並べる。 天には、ランダムの高さに数本の黒いコードが張られ、上から垂直にライトが当ると空中にクリーム色のステックが何本が浮かんでいるようにみえる。

観客は、メタリックに光るコードのすだれ越しに、ゆらめくように踊るダンサーを観る。両サイドのベッドサイドランプのような照明が部分的に点滅し、 全体にブルーや赤の照明をあてると独特の微妙に感覚的な色調が生まれる。華々しさはないが、綿密に美意識が張り巡らされた緊張感のある舞台空間である。
動きは上半身中心のあまりステップを使わないもので、ダンサー同士がコンタクトを交わすことは少ない。個々のダンサーの動きが有機的に連関して、 アルゴリズムでコントロールされた3Dの映像を眺めているように感じられる。ダンスの軌跡と色彩の転換が作品全体のリズムを構成していて、生命の生成と消滅のエネルギーの流れを感じさせる、そんな舞台であった。
(2月4日、新国立劇場中劇場)