ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2005.02.10]

●ルジマトフ、ザハロワとレニングラード国立バレエ

 恒例のレニングラード国立バレエ団の冬の公演では、スヴェトラーナ・ザハロワとイーゴリ・ゼレンスキーがゲスト出演した『白鳥の湖』を観た。
やはりザハロワは素晴らしい。登場しただけで白鳥の女王であることを身体で観客に納得させてしまう。長い手足が理想的なバランスを見せるからである。 コール・ドを従えゼレンスキーのジークフリートと踊った第2幕のラインは、比類なく美しい。黒鳥は、オデットに比べると少し表情の変化に乏しかった。ゼレ ンスキーとのコンビネーションもややぎこちなさを感じさせる部分が瞬時だが見うけられた。舞踊史上からみても優れたプロポーションをもつザハロワは、ぜひ ともアンナ・パヴロワの優雅さと万人に愛される人間性をマスターしてもらいたいものである。
改訂・演出のニコライ・ボヤールチコフの力だろうか、コール・ドの編成が柔く整っていたし、3幕構成も無駄のない立派なものであった。
(1月10日、東京国際フォーラム・ホールA)

『ド ン・キホーテ』はイリーナ・ペレンのキトリとファルフ・ルジマトフのバジル。クラシック・バレエとスペインの情緒を醸すダンスが次々と繰り広げられて、踊 りが溢れ出さんばかりの楽しさ。ルジマトフはスターの魅力を余すところなく発散し、ペレンはキレのいい踊りを見せる。観客もダンサーと一体となって盛り上 がる、エンターテインメントとしても芸術的にも優れて豊かな舞台である。
(1月12日、東京文化会館)

『ジゼル』はオクサーナ・シェスタコワのジゼル、ルジマトフのアルブレヒトで観た。シェスタコワは、第1幕では素朴で優しい村娘を柔らかい表現で踊り、愛 らしさを見事に際立たせていた。この幕の終盤の狂乱の場では、迫真の演技といよりも哀感を漂わせて観客にうったえ成功を収めた。第2幕でもはかな気な精霊 の踊りの中にアルブレヒトへの愛の強さを滲ませ、なかなか美しかった。
ルジマトフのアルブレヒトは、いつものように感情を抑制した演技によって逆に真情を露にするという手法にいっそう磨きをかけて、効果を高めていた。ドラ マティックな盛り上がりという点では多少弱かったかもしれないが、シェスタコワとルジマトフの演技の質がマッチしており、味わい深い舞台だった。
(1月14日、東京文化会館)

「ジゼル」

『眠りの森の美女』は、このバレエ団の他のクラシック・バレエのレパートリーと同様に、芸術監督のボヤルチコフが改訂演出にあたっている。彼は、1920 年代にマリインスキー劇場でシンフォニック・バレエを振付け、今日注目を集めるフィヨードロフ・ロプホフの改訂を念頭に置いて演出している。
特に、第2幕のリラの精がデジレ王子をオーロラ姫と出会わせるシーンが、丁寧に振付けられている。このシンフォニックなシーンは、『眠りの森の美女』の主人公の心の奥行をいっそう深く表し、観客を豊かな気持に導く優れた演出、というべきである。
オーロラ姫を踊ったシェスタコワは、ボヤルチコフの期待に応えて、16歳の王女の初々しさを鮮明に印象づけた。
(1月25日、オーチャ-ドホール)
「眠りの森の美女」