ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2005.01.10]

●シルヴィ・ギエム、ラッセル・マリファント作品を踊る

 古典もモダンも鮮やかに踊り、停滞することを知らないバレリーナ、ギエムが企画するシリーズ〈シルヴィ・ギエム・オン・ステージ〉。 2004年は、カナダ出身の振付家ラッセル・マリファントの作品集だった。マリファントはサドラーズ・ウェルズ・ロイヤル・バレエ団に入団したが、1996年、自身のカンパニーを創設。 インドのヨガや中国の太極拳、ブラジルのカポエラなどを採り入れた作品で異彩を放っている。その創作に衝撃を受けたギエムは、彼を広く紹介したいと、ロンドンでも今回と同じ演目による公演を敢行している。

幕開けは、ロンドンでも共演したマイケル・ナンとウィリアム・トレヴィットによる『トーション』。上手と下手に分かれてスポットライトの中で動き始めた二人が、やがて絡み合い、 「ねじれ」というタイトルが示すように、胴や脚など互いの体の一部をよじり、ひねる動きを連らねていく。多くはヨガや柔道などの型を連想させたが、丁々発止のやりとりに攻撃性はなく、 かといって特別な情感も入り込まない。一分のすきもなく精緻に組みたてられた無機的な振りを、ひたすら具現化するダンサーの姿が印象的だった。

『TWO』


『ブロークン・フォール』
 続く『Two』は、マリファントがギエムのために大幅に手直ししたソロ作品。 2メートル四方の照明の中にギエムの体が彫像のように浮かび上がる。上体を深く曲げ、手や腕や三つ編みの髪を振り回し、緩急はあるものの、一瞬たりとも静止しない。 白く輝く腕や背の、何と筋肉質なことか! ギエムのすごい集中力、パワーは不思議な磁場を生み出した。動きが俊敏さを増すと、特殊照明の効果も合わさり、 手や腕が白い軌跡を描き、美しい残像を結ぶ。ギエムにしか到達できそうもない孤高の境地。実に濃密な12分だった。

『ブロークン・フォール』は、この三人のために創られた作品。ギエムは黒のショートパンツをはき、膝にサポーターをはめ、裸足だ。共演者の一人にリフトされ落とされるが、 すんでの所でもう一人の共演者に受け止められる。相手の背の上で脚を鉤型に曲げたり、横向きに回転したりする。少しのずれも許さぬ周到に計算された振りや、三者のスリリングな展開に息を飲む。 ダンサーは感情を排し、まるで伸縮自在のバネが体内に組み込まれているかのように厳密に動いた。マリファントの巧緻な構成に感心する一方で、動きの探究の先に何を求めているのかが気になった。
(11月30日、ゆうぽうと簡易保険ホール)