ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2004.10.10]

●新国立劇場DANCE EXHIBITION 2004、岩淵多喜子振付の『Distance』

 新国立劇場のDANCE EXHIBITION はAプロを観た。オーストラリアに自身のコンテンポラリー・ダンス・カンパニーを持つ、リー・ウォーレンの『Divininig』から開幕した。

スクリャービンの音楽を使った小品だが、まず、照明のプランからダンスを創り始めた、という。光と闇を意識した作品である。舞台の闇の中にさまざまの光 のスポットをあて、動きと交錯させる演出。音楽と動きは常に一定の距離を保っていて、それが振付家の意図した効果をあげている。自伝的作品というが、自身 が受けたダンスという芸術の啓示を描いた作品と思われる。

内田香は『冷めないうちに召し上がれ』を上演した。インナーウエアで歯を磨き、爪を切り、ネイルの手入れなど日常的な姿を見せていた女性8名が、終始、 ロングスカートとハイヒールで踊る。靴を脱いで戯れ、ティータイムになるとテーブルを使い、さらにディナーではドレスをあらため、赤いテーブルクロスを掛 けた踊りとなる。フェミニンな感覚を種々意匠を凝らした形象で見せる舞台だった。
(9月15日、新国立劇場)

岩淵多喜子のダンス・シアター・ルーデンスが『Distance』を上演した。岩淵はクラシック・バレエを習った後ラバンセンターに学び、新国立劇場や 各国のフェスティバルなどで作品を発表している。私は多くの作品を観ているわけではないが、最近は少なくなったと思われる、テーマに対して非常に誠実に取 り組む姿勢が気に入って注目している舞踊家の一人である。

『Distance』 には、二点を結ぶ最善の方法は直線とは限らない、というサブタイトルというか但し書きが付けられている。ダンサーを舞台に立たせれば、それだけで種々の距 離の問題が生じる。どの位置に立たせるか、振付家の目線。観客の目線、神の目線、もう一人ダンサーを舞台に上げれば、それらの問題はさらに複雑になってい くだろう。
女性3人と男性2人のダンサーによる、解説に書かれている物理的距離から心理的距離、記憶、予則、現実、理想‥‥などのdistanceというテーマから派生する様々の問題を「等親大の視線からアプローチ」した作品であった。
愛し合っているカップルが、「愛している」という言葉を掛けながらさまざまな身体的表現----最初のころは身体を叩き合う程度だったがだんだんとエス カレートしていき、最後はあらぬ部位にまで手が伸びる----が、なかなかおもしろかった。まさに男女の距離は、シンプルなようでさまざまな要素が混在し ていて、伸縮自在にコントロールすることは不可能というべきかも。

『Distance』

ふだんボーッとしている私は、ダンスを観ていろいろとdistanceについて考えたから、その意味でまことに有意義であった。また、ニュートンの法則の次に距離をとり上げた点も観客に納得がいく選択である。
ダンサーがそれぞれ共同振付者としてクレジットされていて、表現が練り上げられた過程が垣間見られるような気がして楽しい公演であった。
(9月4日、横浜赤レンガ倉庫1番館)