ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2007.05.10]

『ドン・キホーテ』


 こちらは、ボリショイ劇場で活躍したウラジーミル・ワシーリエフが、 2001 年、ゴールスキー版に基づき、 東京バレエ団のために新たに演出・振り付けたもの。次々に繰り広げられる多彩なダンスや、スピーディーな物語展開、生き生きとした 人物描写に振付家のセンスが光っている。今回はゲストを招かず、団員だけでダブルキャストを組んだ。上野水香と高岸直樹のペアは既 にお馴染みなので、キトリ役は初めての小出領子とバジル役は5年ぶりという後藤晴雄のフレッシュ・コンビが主演した2日目を観た。
 小出といえば、『眠れる森の美女』でマニュエル・ルグリを相手にオーロラを踊り、『田園の出来事』ではシルヴィ・ ギエムと共演して臆さなかったことを思い出すが、キトリではまた違ったキャラクターが求められる。小出は茶目っ気もみせたが、意志が強く、 少々勝気な娘といった役作りだったが、どこかまだ硬さを残していた。後藤は優しく愛くるしい笑顔を振りまき、ひょうきんさも備えた活気あ ふれるバジルを全身で演じた。
 小出が一つ一つのパを端整にこなし、思い切りのよいジャンプやスピート感あふれる回転技をみせれば、 後藤はしなやかな足さばき、切れのよいジャンプで応じる。芝居のタイミングもぴったり合っており、後藤が小出を軽々と片手でリフトしたり、 軽い放り投げを入れたりすると、小出から喜びの笑みがこぼれた。プライベートなことに触れたくはないけれど、私生活でもパートナーとなった 二人ならではの息遣いに思えたのである。
 メルセデスの奈良春夏はメリハリをつけた安定感ある踊りをみせ、若いジプシーの娘の井脇幸江は柔らかな身体を 極限までしなわせて情感を絞り出した。エスパーダの木村和夫は万全な調子ではなかったのか、シャープさが今一つだった。なお、 結婚式のシーンでガマーシュの古川和則やロレンツォの平野玲が回転を競演し、サンチョ・パンサの高橋竜太が舞台を去る際にひょいと 回転技をみせるなど、主にマイムで訴える役にもダンスの場が設けられていたのは、ワシーリエフの配慮だろう。群舞の人々を含め、 それぞれが自分のパートを楽しんで演じていたようで、観ている側も楽しんだ。

(4月 15日、東京文化会館)