ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2009.10.13]
From Osaka -大阪-

篠原聖一振付『ロミオとジュリエット』、矢上恵子振付『Futur』

主催:佐々木美智子バレエ団
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佐々木美智子バレエ団の今年の公演は、第1部が矢上恵子振付のコンテンポラリー『Futur』、第2部が篠原聖一演出振付の『ロミオとジュリエット』という構成。『Futur』、ドイツ語で “将来” という単語がタイトルとなっている。この作品は、現在既にプロとして活躍している福岡雄大や福田圭吾といったダンサーとともに、まさに “将来” のダンサーというべきジュニアたちも出演した小品だった。
そして『ロミオとジュリエット』。2006年に篠原聖一バレエリサイタル「Dance for Life」で上演され、その年の文化庁芸術祭大賞を受賞した『ロミオとジュリエット』に基本的な流れは準じているそうで、ジュリエットが下村由理恵、ロミオが佐々木大と主役も同じ。
 

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私は2006年の公演は残念ながら観ていないのだが、今回初めて観て印象に残った演出を2つ挙げたい。1つは市川透が踊った “運命” という役の存在。冒頭から登場し、天秤を前に「こちらに永遠の愛、こちらにおろかな死……」というセリフが流れて、これから始まることを予感させる。その後もさまざまなシーンに現れ、登場人物を静かに眺めていたり、シンクロして踊ったり。ロミオとジュリエットの表現に引き込まれるなかで、若干、運命が出すぎではないかと感じる部分もあったのだが、興味深い趣向だと思う。
2つ目は、マキューシオが死に、ロミオがティボルトを死に追いやってしまった後。普通は、キャピレット夫人(山本悦子)が号泣して幕というところ。だが、この舞台では上手でキャピレット家の悲しみが表され、下手ではロミオの父母であるモンタギュー夫人(矢上恵子)とモンタギュー公(岩本正治)の、マキューシオが死んでしまった悲しみとロミオが人を殺してしまったことに対するどうしようもなさが入り混じった複雑な嗚咽を表現したのだ。演じたキャストの存在感も大きく、どうしてこれまでこういった演出がなかったのだろう? と思うほど心に残った。
他に、黄凱が踊るパリスの隙のない気品にも眼を奪われた。パリスというと、どうしても影が薄くなりがちなジュリエットからの嫌われ役だが、彼のプリンス然としたその姿に、こんな婚約者がいてもやはりロミオに惹かれしまう恋の熱さを際だたせた。
そして何より、下村と佐々木のジュリエット&ロミオが、お互いの心が溶け合うような素晴らしい姿をみせてくれたこと──この舞台の一番の魅力はそれにつきるだろう。お互いを信頼しあって踊っていることが、しみじみと感じられた。 
(2009年8月22日 大阪厚生年金会館大ホール/撮影:岡村昌夫(テス大阪))

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