山本隆之改訂振付『白鳥の湖』を北野優香、水城卓哉、椿原せいか、青木崇中心に──バレエ協会関西支部バレエ芸術劇場
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ワールドレポート/大阪・名古屋
すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna
バレエ協会関西支部バレエ芸術劇場
『白鳥の湖』山本隆之:改訂振付
50回目という節目を迎えたバレエ協会関西支部主催のバレエ芸術劇場。演目は1974年に行われた第1回と同じ『白鳥の湖』。その時は、演出振付を友井唯起子、オデットを石川恵津子、オディールを宮本東代子、王子を法村牧緒が踊ったと聞く。今回は、関西出身で新国立劇場バレエ団のプリンシパルとして長年活躍してきた山本隆之の改訂振付で、オデットを北野優香、ジークフリート王子を水城卓哉、悪魔の娘オディールを椿原せいか、悪魔ロットバルトを青木崇と現在の実力派が揃った。
王子:水城卓哉
撮影:古都栄二(テス大阪)
オデット:北野優香、ジークフリート王子:水城卓哉
撮影:岡村昌夫(テス大阪)
山本の改訂振付は、2021年に吹田メイシアター主催で澤田友子がプロデュースした『白鳥の湖』の折に彼が振付けたものに準じたもの。これがとてもオリジナリティに溢れているのだ。というのは、山本は『白鳥の湖』を数えきれないほど踊ってきた中で、オディールが突然3幕で現れることに違和感を感じていたのだという。なので、この山本隆之版はプロローグから悪魔ロットバルトとともに湖を支配する存在として悪魔の娘オディールが登場する。その後もオディールは、全幕にわたって現れ、2幕の湖畔の場面では、白鳥たちを管理、ヴァリエーション(ブルノンヴィル版のオディールヴァリエーション)を踊る。一方、3幕の舞踏会のグラン・パ・ド・ドゥは、ロットバルトの魔法によってオディールがオデットそっくりに化けているという演出で、踊ったダンサーは、オデット役の北野。プティパ版で踊られた。とても興味深い構成だ。
オデット:北野優香、ジークフリート王子:水城卓哉
撮影:古都栄二(テス大阪)
オデットそっくりに化けた悪魔の娘オディール:北野優香(オデット役がこのグラン・パ・ド・ドゥを踊る)、ジークフリート王子:水城卓哉
撮影:古都栄二(テス大阪)
北野は、オデット役ではフランスメソッドを感じさせるたおやかさで叙情性溢れる踊り、3幕のグラン・パ・ド・ドゥでは王子を夢中にさせる美と優雅さで惹きつけ、今、伸び盛りであることを感じさせた。オディールの椿原も華やかさを持った強さで存在感たっぷり。王子の水城は、優しげ風情に様々な舞台で主役を重ねるなかで培われた威厳と風格が加わって、さすがの踊り。ロットバルトの青木も王子ができるダンサーであるとともに、こういった悪役も生き生きと惹きつけるのはとても頼もしい。
王妃には、ワガノワ・バレエ学校を卒業した青木の妻でもあるユリア・レペット、道化に末原雅広、そのほかのソリストたちも適材適所で一定のレベル以上のダンサーが揃った。コール・ド・バレエも丁寧で見応えのある舞台に仕上がっていた。
(2024年2月17日 フェスティバルホール)
オデットそっくりに化けた悪魔の娘オディール:北野優香(オデット役がこのグラン・パ・ド・ドゥを踊る)、ジークフリート王子:水城卓哉、悪魔ロットバルト:青木崇
撮影:岡村昌夫(テス大阪)
オデット:北野優香、ジークフリート王子:水城卓哉、悪魔の娘オディール:椿原せいか、悪魔ロットバルト:青木崇
撮影:岡村昌夫(テス大阪)
オデット:北野優香、ジークフリート王子:水城卓哉、悪魔の娘オディール:椿原せいか、悪魔ロットバルト:青木崇
撮影:古都栄二(テス大阪)
オデット:北野優香、ジークフリート王子:水城卓哉
撮影:古都栄二(テス大阪)
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