SPACのアクターたち、音楽家の面々とともに──佐藤典子舞踊生活75周年記念事業ファイナル『歓喜に至れ!』

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

佐藤典子舞踊生活75周年記念事業ファイナル

『歓喜に至れ!』宮城聰:台本・演出、佐藤典子:企画・監修

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『歓喜に至れ!』
ベートーヴェン:大前光市、死神ジュリエッタ:福澤夢
© スタッフ・テス(株)根本浩太郎

ベートーヴェンの第九がリストによってピアノ曲として編曲されていることを知った佐藤典子が、「ベートーヴェンの〈第九〉を下敷きにして新しい舞台作品を作りたい......」と取り組んだ作品。静岡にゆかりある音楽家たちを巻き込み、SPAC静岡県立舞台芸術センター芸術総監督の宮城聰を台本・演出に迎え、SPACの俳優陣も出演しての舞台が実現した。

ダンスを中心にレポートしたい。前半、社交界で自信満々に振る舞う"若き日のベートーヴェン"を踊ったのは原田みのる。友人役の末原雅広、栗野竜一ともに、生き生きと幸せな姿を見せた。そして、耳が聴こえなくなっていく戸惑い、苦悩──原田は、その微妙な心情も自然に演じ、舞台に引きこんだ。そんななか、ジュリエッタ(京橋実来)との実らなかった恋の思い出の回想も。

後半の"苦悩するベートーヴェン"は大前光市。死神ジュリエッタ(福澤夢)に首つりのロープなど"死"をちらつかせられながら、もがく。福澤の不気味さも迫力があった。
だが、ベートーヴェンは"死"を選ばない。"自分の中で鳴る音"を聴き、作品に昇華させていく──そして、最後は歓喜。「苦しみをつき抜けて歓喜に到れ!」という言葉が力強く劇場に響く。本当にベートーヴェンは、なんと力強いのだろう。。。そんな苦悩から人類の歓喜へ到る様を大前は垣間見せてくれた。
(2023年12月3日 アクトシティ浜松 中ホール)

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ベートーヴェン:大前光市
© スタッフ・テス(株)根本浩太郎

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若き日のベートーヴェン:原田みのる、貴族:貴島豪、武石守正、鈴木真理子(SPAC)
© スタッフ・テス(株)根本浩太郎

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若き日のベートーヴェン:原田みのる、ジュリエッタ:京橋実来
© スタッフ・テス(株)根本浩太郎

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ベートーヴェン:大前光市、死神ジュリエッタ:福澤夢
© スタッフ・テス(株)根本浩太郎

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背景コロス:小瀬瑠美、坂中愛実、星井円香
© スタッフ・テス(株)根本浩太郎

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ベートーヴェン:大前光市、若き日のベートーヴェン:原田みのる、友人たち:末原雅広、栗野竜一
© スタッフ・テス(株)根本浩太郎

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ベートーヴェン:大前光市 © スタッフ・テス(株)根本浩太郎

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