京都の舞踊団体が力を合わせて共同創造した作品が多数──全京都洋舞協議会「オータム・ダンス・フェスティバル in 京都」

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

全京都洋舞協議会「オータム・ダンス・フェスティバル in 京都」

『いのち謳う いのちの艶』水野永子:振付、『Dancing Jazz』新国由香:振付、『ファウスト』よりワルプルギスの夜 薄井憲二:振付、『パキータ』原美香:振付ほか

全京都洋舞協議会の「オータム・ダンス・フェスティバル in 京都」。以前は、所属するそれぞれの団体が順に作品を披露していくという形が基本だったが、今回は、なんと半数近くが団体の垣根を越えて共演したり、共同制作を行った作品ということ。複数の作品に出演ダンサーもおり、刺激を受け合いながら取り組んだことがうかがえる舞台となった。

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『いのち謳う いのちの艶』
水野永子、山中ひさの いけばな:本多栄甫〈東山未生流〉)
撮影:田中 聡(テス大阪)

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『ファウスト』よりワルプルギスの夜
撮影:田中 聡(テス大阪)

幕開けは、水野永子振付『いのち謳う いのちの艶』。禅書の○△□は「命」という漢字を成すパーツということで、○△□のフレームに東山未生流の本多栄甫がいけるいけばなとダンスのコラボレーション。水の章を水野自身が、火の章を山中ひさのが、最後の大地の章を水野と山中がともに踊った。ショーダンスの魅力、新国由香振付『Dancing Jazz』に続いては、故・薄井憲二の原振付を活かして、有馬えり子、横江舞、文美華が改訂振り付けした『ファウスト』よりワルプルギスの夜。満月の下、フレッシュな若さを感じさせるダンサー男女25人が、クラシックのテクニックを駆使して踊った。軽さを感じる動き、初々しい表情の魅力などが楽しめた。
『パキータ』は、原美香の振付で、田野ひかりと吉田旭を主役に。ソリストもそれなりのレベルダンサーが揃い、古典バレエの魅力を味わわせてくれた。山中ひさのが振付けて7人の女性が踊った透明感のあるコンテンポラリー『重なる羽音』に続いては、石原完二振付の3作品。その最後には石原自身が踊った『沈黙の叫び』。仮面を着けた石原が、やっと仮面を捨てさっても、また、あらたな仮面が大量に現れ、着けてしまう......自らの内側を見つめるきっかけを与えてくれる作品。

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『パキータ』田野ひかり、吉田旭、ほか
撮影:田中 聡(テス大阪)

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『重なる羽音』撮影:田中 聡(テス大阪)

ショパンの曲に水野永子が振付けた『Danser Sur Chopan』は、ショパンの曲のメドレーに振付けた、稽古場のダンサー立ち居を穏やかに描いたようなバレエへの愛を感じる作品。モーリス・ラヴェルの曲に石原の振付で、新国由香が大人の魅力で踊った『blues 愛・想・美』、その新国がピアソラの曲に振付けて、3人の女性が踊った『リベルタンゴ』を経て、ラストは中西照恵の振付で、『ライモンダ』からの曲を組み合わせて女性ばかりで踊った『ハート オブ ハンガリー Suite』。群舞の部分、少人数の部分、ソロなどを組み合わせながら、ハンガリアンダンスの魅力、クラシック・バレエの魅力を詰め込んで。特に中心を踊った中西孝子の存在感たっぷりな大人の風格を感じさせる踊りが印象的。そして、女性だけでこんなに見応えのある構成にできるということも興味深かった。
来年は65周年を迎える全京都洋舞協議会。記念の企画の準備が進められているようで、それも楽しみだ。
(2023年11月19日、ロームシアター京都サウスホール)

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『沈黙の叫び』石原完二
撮影:テス大阪

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『blues 愛・想・美』新国由香
撮影:田中 聡(テス大阪)

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『リベルタンゴ』大塚春菜、岩根和、吉川美緒
撮影:田中 聡(テス大阪)

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『ハート オブ ハンガリー Suite』中央:中西孝子
撮影:田中 聡(テス大阪)

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