細川麻実子と山㟁直人によるARU.が、デザインクリエイティブセンター神戸KIITOで『聞こえない波』を上演

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

ARU.

『聞こえない波』細川麻実子:振付、山㟁直人:音楽統括

大正期から昭和のはじめ、神戸港から海外に向けて輸出された生糸。その検査のために昭和2年(1927年)に建てられた神戸市立生糸検査所。ここが現在、デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)となり、デザイン、芸術の拠点となっている。その950㎡もの広大なホールで行われた公演。文化庁の統括団体による文化芸術需要回復地域活性化事業(アートキャラバン2)の助成を受けて行われたものだ。ダンサー・振付家の細川麻実子と打楽器奏者の山㟁直人、そのもとに集った7人のダンサーと、ギター、チェロ、笙、トロンボーン、十七絃箏5人の奏者、14人の出演者による公演。

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『聞こえない波』撮影:大木啓至

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『聞こえない波』撮影:大木啓至

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『聞こえない波』撮影:大木啓至

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『聞こえない波』撮影:大木啓至

開演すると、ほぼ真っ暗、無音の中、様々な方向に歩くダンサーたち。暗いけれど、かすかに見え、目が慣れてくると普通に見える。知的でシャープ、存在感を感じさせる細川を筆頭に、ダンサーはそれぞれの持ち味が違い、様々な"人"がいる、ということが興味深く思えてくる。だがもちろん、全員が、微かなことでも感じ取るような細やかな感性を持って研ぎ澄まされた身体で動いていることを実感する。
全員でひとかたまりになって、タイトル通り"波"のように動いたり、いくつかのグループになったり......誰かの動きや、周りの空気感に弾かれるように自然に反応していると思える自然な流れが感じられる。
はじめ無音だったところから、徐々にさまざまな楽器での即興のように感じられる音へと移行していいき、後半、音楽が高まっていくと、動きも大きく、激しくなって行く。音とダンス、動き、また音どうし、動きどうしが、何かきっかけを差し出し合い、受け取り合いながら、それこそ生糸を紡ぐように紡いでいる──そんな気がした。そしてこれは、確実に、空気感を感じられる同じ"場"にいいなければ得られない感覚。そういう意味で、映像等では味わえない、人が集うからこそのもの。
一度観ただけでは、きっと私は部分しか感じ取れていないのだろうな、そんな風に思わせる作品。もしも次に観たら、また違ったところが見えてくるかもしれない。
(2024年1月19日 デザインクリエイティブセンター神戸KIITO )

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『聞こえない波』撮影:大木啓至

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『聞こえない波』撮影:大木啓至

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『聞こえない波』撮影:大木啓至

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『聞こえない波』撮影:大木啓至

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