神戸文化ホール開館50周年記念事業アンサンブル・ゾネ『緑のテーブル2017』

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

アンサンブル・ゾネ

『緑のテーブル2017』岡登志子:振付

この岡登志子振付の『緑のテーブル2017』は初演を含め、上演の度に観ている作品。初演された2017年、今は亡き大野慶人が風役として、冒頭、自ら子供の頃に経験した戦争を振り返って反戦を語った時は、実は、私はどこか遠い過去に過ぎ去ったことのように聞いていたように思い出す。だが、今回は違った。冒頭、風役の貞松融が「芸術に国境はありません。世界が芸術によって平和になることを願っています。決して戦争をしてはなりません(聞いた言葉のメモから。若干言葉に違いがあるかも知れません)」と力強く語った時、現在の世界情勢のなかで、とても身近なこととして心に強く響いた。

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『緑のテーブル2017』政治家たち
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『緑のテーブル2017』風:貞松融、中村恩恵
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そこから始まったこの公演、シリアスな題材でありながら、岡独特のユーモアをともなって場面が進む。貞松とともに風役として、全体の母でもあるかのように、踊りで包み込んだ中村恩恵、死神は垣尾優で、飄々ととらえどころのない風情は独特だ。関西のガラの悪いおっちゃんそのものように利得者を演じたのは糸瀬公二。サラリーマンスーツに身を包んだ気の弱そうなメガネの兵士は堤悠輔。会社の命令、上司の命令に逆らえずに日々働くこんな企業戦士が、いざ、戦争となったら、真っ先に兵士として借り出されるのかな......。堤の、ちょっと情けない風情の演技、酒場にたむろする女たちの色気に上機嫌で踊り出す姿はコミカルで秀逸だった。また、その女たちの中に、一人、美しい男性、武藤天華が混ざっていたのも見逃せない。
岡自身は難民役。透明感を持って、不安げながらどこかにきちんと芯があるような──人間は、どんなことがあっても望みがまったくなくなるわけではない、たおやかな踊りでそう思わせた。

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『緑のテーブル2017』風:中村恩恵
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『緑のテーブル2017』兵士:堤悠輔
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ラスト、中央の広いテーブルが美術の廣中薫の緑の絵で埋められ、"緑のテーブル"になっていく。以前、客席と同じ高さ、または見下ろす形で踊られた会場では、緑の絵が見え、また、終演後にもそれを観ることが出来たのだが、今回は中ホールの舞台ということで、舞台より低い位置の客席からはテーブルの上がほぼ見えなかったのが少し残念。
そして、これまでと大きく違ったのは、神戸文化ホールの開館50周年企画として、賛助出演や一般出演として神戸ゆかりの文化芸術関係の方々や様々なタイプの老若男女50人が最後に "祈りの踊り連" として出演したこと。多くの方々の平和への祈りとともに幕を閉じた。
(2023年10月21日 神戸文化ホール中ホール)

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『緑のテーブル2017』難民:岡登志子
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『緑のテーブル2017』死神:垣尾優、利得者:糸瀬公二
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『緑のテーブル2017』酒場にたむろする女たち
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『緑のテーブル2017』一般参加者とともにのラストシーン
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