清らかで丁寧な神木遥のジゼルと細やかに深みを持って心情が伝わる法村圭緒のアルブレヒト──法村友井バレエ団『ジゼル』

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

法村友井バレエ団「Ballet Collection」

『ジゼル』法村圭緒:振付

毎年この時期に法村圭緒が企画、配役、振付を担い、若手の育成の意図も持って開催する法村友井バレエ団「Ballet Collection」。7回目となった今回の『ジゼル』、アルブレヒトを予定されていた今井大輔の負傷により、振付を担う法村圭緒自身がアルブレヒトを踊ることになった。そして、これがとても良かった。

法村圭緒は、もうベテランの域に達しているが、全幕バレエの主役として動きに衰えなどは見えず、心情表現が以前以上に深まっているように見える。登場からラストまで、1つひとつの動き、表情、小さな仕草に至るまで、その時、その時のアルブレヒトとして意味があり、自然に観ているものの心に入ってくる。加えて、立ち姿だけでも、貴族らしい自信に溢れて毅然とした様、気品が漂う。2幕、ジゼルの墓の前でハッキリと十字を切る姿にはゾクッとしたし、そこからどんどん高まって行く気持ちが、その後、激しくなる踊りのなかで切なく強く、どうしようもない思いとともに迫ってきた。なかなかこんなに完成度の高いアルブレヒトをみることはない。

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ジゼル:神木遥、アルブレヒト:法村圭緒
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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バチルド:法村珠里、ジゼル:神木遥
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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ペザントのパ・ド・ドゥ
佐野光里、池田健人 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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ジゼル:神木遥 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

また、ジゼルの神木遥も適役。内向的なものを感じさせる繊細なダンサー、その持ち味がジゼルという役に活きた。慎ましやかで清純な魅力は1幕の幕開けから感じられ、2幕になって一段と凄みを増していき目が離せなくなった。華奢で美しい身体のラインで、今にも消えてしまいそうな儚さを感じさせながら、愛する人を守る内面の強さを表現。彼女は、今後、この役をもう一度、2度と踊ると、さらに深めて行くのではないだろうかと、そんな気がする。

そんなジゼルの慎ましやかな魅力と良いコントラストだった大輪の薔薇のように華やかな法村珠里のバチルド、嬉しさが劇場中に広がるような佐野光里と池田健人のペザントのパ・ド・ドゥ。人が良さそうに見える大西慎哉のヒラリオンや場を支配する強さを表現しようとした荻野あゆ子のミルタも印象に残った。そして、もちろん、このバレエ団のコール・ド・バレエは基礎がきっちりと入っていて観ていて心地よい。観て良かったと心から思える公演だった。
(2024年1月28日 大阪市中央公会堂大集会室)

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ミルタ:荻野あゆ子 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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ジゼル:神木遥、アルブレヒト:法村圭緒 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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アルブレヒト:法村圭緒 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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ジゼル:神木遥、アルブレヒト:法村圭緒
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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ジゼル:神木遥、アルブレヒト:法村圭緒 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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