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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2015.12.10]
From Osaka -大阪-

「智恵子抄」に触発された『Tubular Bells』と昭和の香り溢れる『うたかたのオペラ』

斎藤DANCE工房
サイトウマコトの世界『Tubular Bells』『うたかたのオペラ』サイトウマコト:演出・振付

「サイトウマコトの世界」vol.4は、『Tubular Bells』と『うたかたのオペラ』2本の上演。まず最初に上演された『Tubular Bells』。「Tubular Bell」、というのは楽器の名称なのだそうで、NHKのど自慢などで、歌い終わったあとに採点結果を伝えるのに使われているあのベルのことらしい。サイトウは、この名前のマイクオールドフィールドのアルバム「Tubular Bells 2」からの音楽を使ってこの作品を振付けた。

osaka1512d_3846.jpg 『うたかたのオペラ』撮影:山下一夫

初演は今年9月の環バレエ団公演で、今回が2回目。この音楽を支離滅裂と感じたサイトウが、ピュアな言葉を発する高村光太郎の妻「智恵子抄」の智恵子と重ね合わせ創り上げた。光太郎役はベテランダンサー森恵寿、そして智恵子を踊ったのは智恵子と同郷、通った高校が同じという北原真紀。意志を持った目をした群舞のなかで、北原だけが焦点が合わない目──そして幸せそうな表情。ラストは、さまざまな楽器の名前がアナウンスされ、女性たちが洗面器の水を髪につけてダイナミックに舞台上に飛ばしまき散らす、水浸しの床。この世の中でピュアな人が幸せになるには、こういう形しかないのかも、もしかして、と、そんな思いが頭をよぎった。
『うたかたのオペラ』は、故加藤和彦のアルバム「L'OPERA FRAGILE うたかたのオペラ」を使って。歌詞のある昭和の香りたっぷりの曲が多々入ったアルバムだ。その音楽に乗って踊られる、作品全体に流れるアンニュイでレトロ、何とも言えない脱力感が良い。明るすぎない、格好良すぎない、そんな雰囲気が良い。そして、主役と言えそうな「或る女」を踊った長尾奈美の昭和な空気を体じゅうにまとった存在感にもひきこまれた。
また、どちらの作品も群舞の隅々まで、ある一定レベル以上の、踊れる、表現できるダンサーたちだったことで、見応えのある公演に仕上がっていた。
(2015年10月29日夜 神戸アートビレッジセンター)

osaka1512d_0277.jpg 『Tubular Bells』撮影:山下一夫 osaka1512d_0370.jpg 『Tubular Bells』撮影:山下一夫
osaka1512d_0667.jpg 『Tubular Bells』撮影:山下一夫 osaka1512d_3329.jpg 『Tubular Bells』撮影:山下一夫
osaka1512d_0969.jpg 『うたかたのオペラ』撮影:山下一夫 osaka1512d_2543.jpg 『うたかたのオペラ』撮影:山下一夫
osaka1512d_2399.jpg 『うたかたのオペラ』撮影:山下一夫