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桜井 多佳子 text by Takako Sakurai 
[2014.10.10]

エネルギッシュな矢上恵子作品群と華やかなクラシックバレエ、K★チェンバーカンパニー

K★チェンバーバレエカンパニー「クラシックバレエとコンテンポラリーダンスの夕べvol.7」
『[アラジン』より宝石の踊り 矢上久留美振付、
『Prius』『Butterfly』『Bourbier』『Cheminer』矢上恵子:振付 、『Toi Toi』矢上恵子振付 他

矢上香織・久留美・恵子が主宰するK★バレエスタジオは、山本隆之、福岡雄大、福田圭吾、福田紘也という新国立劇場バレエ団ダンサーを輩出していることでも有名。

osaka1410f_09.jpg 「ダイアナとアクティオン」撮影/古都英二(テス大阪)

第一部で上演された『アラジン』は、その新国立劇場バレエ団のレパートリーとして知られるが、上演されたのは内容・振付ともに全く異なる矢上久留美のオリジナル。教え子が立つ新国立劇場の舞台に久留美は何度も足を運んでいることもあり音楽は聞きこまれているのだろう。その音楽は良く活かされ、自由な発想で振付けられている。華やかな盛り上がりを見せた。それに先立ち披露されたグラン・パ・ド・ドゥは3曲。『ダイアナとアクティオン』は吉田千智と福岡雄大が群舞とともに踊った。「アクティオン」は、国内外のコンクールで結果を出してきた福岡の言わば「十八番」。コンクール時の「攻め」の姿勢そのままに超絶技巧を盛り込みながら、同時に新国立劇場のプリンシパルとしての重厚さも感じさせた。『サタネラ』は井後麻友美と福田紘也、『エスメラルダ』は工藤雅女&福田圭吾が、それぞれ演じた。
第二部は矢上恵子の作品集。まずは国際バレエコンクールで話題になった3作品。『Prius』 は2000年、ヴァルナで金田洋子と今井智也が初演。今回は工藤雅女と福田紘也がスピーディで斬新な振付を的確にこなしていた。『Butterfly』は2006年のジャクソンで福田圭吾が決選で踊り、シムキンらコンクール参加のダンサーたちの中でも人気となった作品。そのタイトル通り、途中から羽を広げるように踊る。今回の恵谷彰は、正確なジャンプとステップで振付の面白さを伝えた。とともに、チャーミングな恵谷の個性も生きた。『Bourbier』は福岡雄大が2008年ヴァルナの決選で踊り3位入賞、同時に矢上もこの作品で振付賞を受賞している。ヴァルナの野外劇場の満員の観客は大きな拍手とブラボーの声で感動を伝え、ラストの動き=両手で包んだ球を天に捧げるような=を真似る観客も続出していた。ヨーロッパのカンパニー・ディレクターから矢上作品をレパートリーにしたいという申し出もあり、「矢上恵子」の名をさらに国際的にした作品だ。今回はこの作品の後半部分を山本隆之が踊った。オペラ『カヴァレリア・ルスティカーナ』の間奏曲にのせ、一人の男性の苦悩、そして心の浄化を、福岡とはまた異なるアプローチで表現していた。

osaka1410f_07.jpg 「エスメラルダ」撮影/文元克香(テス大阪) osaka1410f_08.jpg 「サタネラ」撮影/文元克香(テス大阪)
osaka1410f_01.jpg 「Butterfly」撮影/古都英二(テス大阪) osaka1410f_03.jpg 「Prius」撮影/文元克香(テス大阪)
osaka1410f_06.jpg 「アラジン」より宝石の踊り 撮影/古都英二(テス大阪)

『Cheminer』は2006年に霧島で初演。矢上が教え子でもある辻戸香世子や黒瀬美紀ら女性のカンパニーメンバー6人とともに踊り絶賛され、各地で何度か再演している。群舞の振付は抜群に格好良く、どこかに可愛らしさも含ませている。そこに矢上の彼女らへの強い信頼と深い愛情を感じた。今回は中心の矢上恵子のパートを福田圭吾が踊った。
第三部は、やはり矢上恵子振付の『Toi Toi』。冒頭の「Resonance」はもともと矢上恵子と福岡雄大が初演したデュオ。すでにプロとして第一線で活躍する教え子と性差を超えて拮抗するダンスは強く激しい。今回の石川真理子も堂々の演技だった。続く群舞は二人を加え30余名。背景にはパネルが数枚。ダンサーはその間を飛び交い、その上から飛び降りる。構成は変化に富んでいて、輪唱と重唱が見事に組み合わされていくように、ダンサーの動きは波になり、また共振しあう。混沌とした動きがいつの間にか整然となるなど、パズルがはまっていくような爽快さもある。タイトルの「Toi Toi」は、成功を祈るおまじないの言葉。それは同時に応援のニュアンスも持つ。そのエネルギーは観客の胸をストレートに打った。舞台と客席が熱気に包まれたなかでの何度目かのカーテンコールのあと、ステージには、今年舞踊生活50年となる矢上恵子の記録写真が映像となって流された。恵子本人には知らされていなかったサプライズ。さらに客席が盛り上がったのは言うまでもない。
(2014年8月17日 吹田市文化会館メイシアター)

osaka1410f_02.jpg 「Cheminer」撮影/文元克香 osaka1410f_04.jpg 「Toi Toi」撮影/古都英二(テス大阪)
osaka1410f_05.jpg 「Toi Toi」撮影/古都英二(テス大阪)