ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2013.12.10]
From Osaka -大阪-

エルフィンストンと中西貴子によるメモリアル公演『ジゼル』&バレエコンサート

中西照恵バレエスタジオ
『ジゼル』ジャン・コラリ、ジュール・ペロー:原振付、中西照恵:再振付、他

関西のさまざまな舞台で活躍しているダンサー、中西貴子の35周年メモリアルとして行われた舞台を観た。
第1部はバレエ・コンサートで、彼女と縁のある関西の実力派ダンサーたちが次々と見応えのある踊りを披露した。最初は、先輩格の原美香と河島真之による『シンデレラ物語』、深川秀夫の振付によるこの作品は、オーロラ色の大きなベールが女の子の夢そのものという感じ。ベテランの原が、今もとても可愛らしい夢のある踊りをするのを観ていると35周年の中西貴子も、まだまだこれからさらなる活躍がとつくづく思う。
続いては、トモコダンスアートカンパニーのディレクター・今中友子の作品で『阿國・舞う』より『ややこ踊り』。和服でのダンス、振付にメリハリがあり、身体能力も高いダンサーたちで楽しめた。英語のアナウンスで始まったのは中西照恵振付による『美女と野獣』、斎藤由佳と楊在恒がドラマティックに。『ドン・キホーテ』よりグラン・パ・ド・ドゥは、この踊りが十八番のように似合う瀬島五月と武藤天華、華があって、高テクニック、堂々とした踊りは理屈抜きに楽しめる。そして、コンサートの最後は、ベテランダンサーたちも出演しての『新たなる道』。ショパンの曲に深川秀夫が振付けた、社会の情勢のなかで運命を受け入れざるを得ない女性たちの哀しみと強さを描いた作品。憂いと凜とした強さを表現できるのは経験を重ねたダンサーたちだからこそだろう。

osaka1312d_0866.jpg 撮影:金原優美(テス大阪)

そしていよいよ『ジゼル』。ジゼル役はもちろん、中西貴子。アルブレヒトはアンドリュー・エルフィンストンだ。2人ともスラッとした長身で、身体のラインが美しい。幕開けに驚いたのは、ホームレスのような男性(松原博司)が舞台にいたこと。悪寒がするように震えている。ジゼルの幕開けでこんな演出を観るのは初めて、中西照恵のオリジナルだ。彼はしばらくすると姿を消すが、2幕のはじめにも墓守りとして登場する。ジゼルの運命を暗示させるような不気味な存在。そして、バレエを美しいだけでは終わらせない演出。他にも諸処、オリジナリティーを持って演出・振付が組み立てられていた。
ヒラリオンは河島真之、バチルド姫は瀬島五月で、どちらも役になりきった演技が良い。ウィルフレッドも武藤天華と豪華なキャスティング。ペザントのパ・ド・ドゥは川畑麻弓と吉田旭で、ニコニコと幸せな笑顔でのびやかに。ジゼルのヴァリエーションは、柔らかく丁寧、なめらかで良かった。そして、狂乱の場も踊る人の繊細な人柄が現れるような、何かが醸し出されるジゼルだった。まだ、全幕でのジゼルが初めてなら、重ねて踊る機会があれば深みを増していくだろう。
そして2幕。まず、ミルタ(石川直実)の堂々として伸びやかな大きな踊りが目を引いた。迫力があって存在感たっぷり、良いダンサーだと思う。そしてジゼルはアルブレヒトとともに長身のラインにうっとりとさせてくれたとともに、想いを丁寧に紡いだような心のこもったピュアな踊り。人生経験をある程度積み重ねたからこそのジゼルと言えるだろう。これからさらなる高み、さらなる深みを目指して踊り続けて行ってほしいと思う。
(2013年11月4日 びわ湖ホール大ホール)

osaka1312d_1203.jpg 撮影:古都栄二(テス大阪) osaka1312d_1499.jpg 撮影:古都栄二(テス大阪)
osaka1312d_1435.jpg 撮影:金原優美(テス大阪) osaka1312d_1790.jpg 撮影:古都栄二(テス大阪) osaka1312d_1862.jpg 撮影:金原優美(テス大阪)