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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2013.06.10]
From Osaka -大阪-

第26回こうべ全国洋舞コンクール、各部門第1位のダンサーへのインタービュー

モダン&創作部門、クラシックバレエ、各部門1位受賞者
こうべ全国洋舞コンクール実行委員会

第26回こうべ全国洋舞コンクールは、モダン&創作部門、クラシックバレエ部門のそれぞれコンクール決戦の結果を直後に速報でお届けした。今回は各部門1位と創作優秀賞受賞者へのインタビューをお届けする。

・女性ジュニア2部1位
『くるみ割り人形』より金平糖のヴァリエーション
若林侑希(13歳・れい美花Dance Studio・兵庫県)
踊り始めのフワッとしたアラベスクがとても素敵だった若林侑希。母は元・タカラジェンヌの朝風ゆき。彼女の侑希という名前は母の芸名からというわけだ。「では、将来の夢はタカラジェンヌ?」と聞いてみると「宝塚歌劇は観るのは好きだけれど、それよりもバレリーナになりたい!」ということ。「お姫様系の踊りが好き、そのなかでも金平糖は雰囲気がすごく好き。将来はお客様に感動していただけるようなバレリーナになりたいです」。

osaka1306a01.jpg 『くるみ割り人形』より金平糖のヴァリエーション 若林侑希 撮影:古都栄二

・女性ジュニア1部1位
『アルレキナーダ』よりヴァリエーション
佐々木麻菜(18歳・エス バレエ スタヂオ・北海道)
とても個性的な振付の『アルレキナーダ』よりヴァリエーションだった。スカートをちょっと持ち上げたり、オーバーなほどの表情。だが、奇抜でありながら、長い手脚の美しさを活かしたバレエの技術がきちんとしていることが分かる踊り。コミカルな楽しさが伝わった。「はじめに基本の振付をしてもらって、そこから私に合うように先生である母(佐々木小百合)がアレンジしてくれました。このヴァリエーションは1曲のなかに物語があって、繋いでいけるのが好き」。
ボリショイ・バレエ・アカデミーに留学していたが、レッスンが身体に合わないことを実感して1年弱で帰国。その後、さまざまなコンクールに出場、「神戸は初めて出場しました。レベルが高いと聞いていたので挑戦しようと思って」。今後は、海外も視野に入れてバレリーナとしての就職先を探したいということ。

osaka1306a06.jpg 『アルレキナーダ』よりヴァリエーション 佐々木麻菜 撮影:田中聡(テス大阪)

・女性シニア1位
『エスメラルダ』よりヴァリエーション
中村友子(20歳・塚本洋子テアトル・ド・バレエ・愛知県)
眼で射抜くような、とても強い印象のエスメラルダだった。「このヴァリエーションは強い部分の後、スローな部分があったり、いろんなところがあるのが好き。発表会でグラン・パ・ド・ドゥを踊らせていただいて以来、もう2年踊っています。他には、黒鳥やキトリが好き。お姫様は一度も踊ったことないんです」と笑う。
「ずっとバレエをやっていきたい。3月に東京の昭和音楽大学の短大を卒業して、ちょうど明日からK バレエ カンパニーの準団員なんです。最後のコンクールだから特にがんばろうと思って」。まずは、準団員から団員になることが目標。

osaka1306a02.jpg 『エスメラルダ』よりヴァリエーション 中村友子 撮影:古都栄二(テス大阪)

・男性ジュニア2部1位
『ドン・キホーテ』よりバジルのヴァリエーション
北口雅人(13歳・北口抄子バレエスタジオ・兵庫県)
ジュニア2部という年齢のなかで、とてもテクニカルな振付。「このヴァリエーションは大好き。バジルは床屋の息子だけど、床屋の息子ではないと思われるくらい“凄い”と思われる迫力で踊らないといけないと思う。ロレンツォなどみんなに認めさせるための踊りだと思う」。3歳から母の元でバレエを学び、今回も母が指導。3歳の時に母に「バレエをやる?」と聞かれて、バレエが何か分からなかったけれど、自分で「やる!」と言ったのはハッキリ覚えているという。「バレエは話さずに表現しないといけない、踊ることで話す・・・というのが好き。身体を動かして踊ること自体が好き。将来は世界に通用するようなダンサーになりたい」。

osaka1306a03.jpg 『ドン・キホーテ』よりバジルのヴァリエーション 北口雅人 撮影:田中聡

・男性ジュニア1部1位
『バヤデルカ』よりヴァリエーション
西川啓輔(17歳・蔵本誠子バレエスクール)
「予選は全然ダメで、決選では振りを変えたんです」と彼。それが功を奏したわけだ。美しいバッチュが印象に残るソロルだった。「このヴァリエーションは迫力もあるし、ていねいに踊らないといけないところもある。とても好きです」。6歳の頃、姉の習っていたバレエスクールで誘われて始めたものの、気乗りはしていなかった。それが、中学生になり初めて生の舞台を観て「男性バレエダンサーは、やっぱりかっこいい」と実感してから、どんどん好きになって、高校は途中から通信制に切り替えてバレエ第一の生活に。今年の大阪プリ・コンクールのスカラシップで、9月からロシア・ワガノワ・バレエ・アカデミーへの留学が決まった。「一番行きたいと思っていた学校だから、留学できるのがすごく嬉しい。キチンとバレエのポジションなどを学んできたい」と話す。

osaka1306a04.jpg 『バヤデルカ』よりヴァリエーション 西川啓輔 撮影:金原優美(テス大阪)

・男性シニア1位
『ドン・キホーテ』よりバジルのヴァリエーション
井澤駿(20歳・バレエスタジオDUO)
スマートに決まるバジル!──そんな印象の踊りだった。本当はアルブレヒトのような演技に入り込める役が好きだと遠慮がちな口調で話す彼。バジルは悪戦苦闘しながらの挑戦だったそう。でも、そのバジルで見事に1位を射止めた。
「こうべはレベルが高いと聞いていたので、自分を試してみたいと思って出場しました」と話す。群馬の実家から、青山学院大学に進学するため上京。高校生の時、一時、バレエを続けていくのか悩んだ時期があり、経営学部を選んだ。現在は、大学に通いながら、東京バレエ団で活躍した田中洋子が主宰するバレエスタジオDUOでレッスンを重ねている。
「大学に入って、洋子先生に指導していただくようになって、まわりの方々に支えられて、本気でバレエをやろうと思うようになりました。大学を卒業したら、どこかのバレエ団に入りたい」ということ。今、3回生、海外のカンパニーも視野に入れつつ、レッスンを重ねる。どこかのカンパニーで活躍する彼の姿が、きっともうすぐ観られるだろう。

osaka1306a05.jpg 『ドン・キホーテ』よりバジルのヴァリエーション 井澤駿 撮影:古都栄二(テス大阪)

・モダンダンス部門ジュニア2部1位
『片隅のお人形』
宮口真緒(前多敬子・田中勉バレエ教室)
残像が目に残るようなジャンプが印象的、そして本当に可愛らしいお人形のそものという印象の踊りだった。“持ち主に忘れられて片隅におかれている人形” をモティーフにしたダンス。「さみしいお人形の雰囲気を出すのが難しかったけれど、がんばって練習しました。足を上げて3回転するところが成功したのは嬉しかった!」。
「これからジュニア1部に上がるので、お姉さんらしくきれいに踊れるようになりたい。将来は素敵なダンサーになりたいです」。

osaka1306a07.jpg 『片隅のお人形』宮口真緒 撮影:田中聡(テス大阪)

・モダンダンス部門ジュニア1部1位
『声なきコエ』
須﨑汐理(金井桃枝舞踊研究所)
“声が出ない”──伝えられないもどかしさを描いた作品。ダンスに本気で取り組むなかで悩みを抱えていた彼女のために金井桃枝がオリジナルで振付けた作品を踊った。しなりを持った動き、大きく後ろに反る形が印象に残った。伝わる“何か”を感じたのは、彼女自身の経験のなかでの葛藤や想いが踊りの中でにじみ出ていたからなのだろう。
「クラシック・バレエは基礎として大切だと思うけれど、モダンが好き。今のところ、自分は先生にはなれないタイプかなと思うので、長く踊って行けるダンサーになりたい」。そのためにレッスンを積み重ねる日々だ。

osaka1306a08.jpg 『声なきコエ』須崎汐理 撮影:田中聡(テス大阪)

・モダンダンス部門シニア1位
『twice born─鈴─』
津田ゆず香(井上恵美子モダンバレエスタジオ)
ぬかるんだ道を這い上がるような、力強いシコを踏むような動きから始まる踊り。“twice born”というのは、直訳すれば、“二度生まれる”だが、つまりは人は挫折しても、もう一度また這い上がる──その前向きな姿を踊った。自分自身にとって辛かった時からの “twice born”、それに大きな震災から這い上がる日本という国の “twice born”も重ねた。
この作品はこれで踊り納め、今年のクリスマスから文化庁の在外研修でニューヨークに留学する。「富山から東京に出たときに大きな衝撃があったけれど、NYに行って、もう1ステップ上がるように、自分にないものをたくさん見つけたいと思います」。その後の作品が楽しみだ。

osaka1306a09.jpg 『twice born─鈴─』津田ゆず香撮影:田中聡(テス大阪) 

・創作部門優秀賞
『緋い芙蓉の蜜をスウ』
富士奈津子(金井桃枝舞踊研究所)
出演:富士奈津子、新保恵
女性2人の妖しげな空気が感じられる作品。抜群に美しいスタイルの新保恵は“花”、その蜜を、富士奈津子が踊る性別年齢不詳の存在が吸う。師弟、姉妹弟子──そんな関係で、小さな時から共に長い時間を過ごしてきた2人だからこそ、出来た作品という印象。
「私が蜜を吸って、ぐったりしても、また蜜を蓄えてね。そうしたら、また私が吸うから・・・という踊り。また、ある意味では彼女が言えないで抱え込んでいる邪魔なもの、抱え込むことで苦しいんでいるものを吸ってあげることもできるのかもしれない」と富士奈津子。そんな特別の関係を表したダンスだ。
その踊りのなかには「私以外には吸わせてはダメよ」という暗黙の了解が・・・濃密な関係。こういうのがモダンダンスの本道なのかもしれないと、ふと、思った。クラシック・バレエではなく、かと言って、この今の時代を映し出しているという時事的な意味でのコンテンポラリー・ダンスでもなく、いつの時代にも人の心に訴えるものを持つ作品。ぜひ、これからも力作を期待したい。

osaka1306a10.jpg 『緋い芙蓉の蜜をスウ』富士奈津子 撮影:田中聡(テス大阪)

(2013年4月27日〜5月6日 神戸文化ホール)
*詳細順位は、下記、神戸新聞HPを参照
http://www.kobe-np.co.jp/info/youbu/2013/main.shtml