ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2012.09.10]
From Osaka -大阪-

ダンサーの粒が揃った『ジゼル』と怖かった『白雪姫』

K★バレエスタジオ
演出・振付:矢上久留美『ジゼル』、矢上恵子『「Snow White」dechado~鑑』

今回のK★チェンバーカンパニーの公演の演目は『ジゼル』全幕と矢上恵子振付の新作『「Snow White」dechado〜鑑』。

osaka1209c01.jpg 撮影:-OFFICE URANUS-

このカンパニーの公演でのクラシック作品は、数十分程度の作品やグラン・パ・ド・ドゥなどがいくつか上演されるという場合が多く、全幕の上演は意外に珍しい。だが、新国立劇場バレエで活躍するダンサーを数々輩出するなど、実力あるダンサーが多く育っているので、レベルの高い全幕を創り上げる力があることは予想でき、やはりその予想は外れず、見応えのある舞台となった。
そこで、ジゼル役を踊ったのは吉田千智、アルブレヒトは福岡雄大。吉田は手脚の長い恵まれたスタイルにチャーミングな雰囲気を併せもつ魅力的なバレリーナ、特に1幕で恋にトキめく姿が本当に可愛らしく、恥じらいも自然。狂乱の場では美しく無邪気なゆえの痛々しさを感じさせた。また、福岡は優しげでノーブル、テクニックの高さもさすがで、ラスト近くのアントルシャはアルブレヒトそのものになりきった心情の中で踊られているように見えて強く惹きこまれた。クールランド公爵には山本隆之、バチルドにはヨーロッパで活躍してきた十河志織と先輩格の良いダンサー達が美しく華を添え、ペザントでは鮮やかな脚裁きの恵谷彰と吉田莉奈がバレエの基礎に忠実な気持ちの良い踊りを観せてくれた。また、パ・ド・シスの6人も高いバレエ技術を持っていたし、ミルタの石川真理子は威厳を備え、鋭さも見せての大きな踊り。2幕のウィリーたちははじめベールをかぶったまま踊りはじめ、ミルタの周りで輪になるなど荘厳な雰囲気から。隅々まで一定のレベル以上のダンサーが揃っていて良かった。
そして、今回、予想以上に素晴らしいと感じたのがヒラリオンを踊った福田圭吾。まだ若い彼だが、ギラギラと輝く眼での荒々しい迫力、場面や心情によって細かく変わる表情、もちろん踊りもしっかりとしている。彼が演技派のダンサーであることをあらためて感じ、これからのさらなる成長が益々楽しみになった。

osaka1209c02.jpg 撮影:-OFFICE URANUS- osaka1209c03.jpg 撮影:-OFFICE URANUS-
osaka1209c04.jpg 撮影:-OFFICE URANUS- osaka1209c05.jpg 撮影:-OFFICE URANUS-

後半は、矢上恵子振付の『「Snow White」dechado〜鑑』。「Snow White」=「白雪姫」だが、あの絵本の「白雪姫」のめでたしめでたし……と終わるものとはちょっと違う。白雪姫の石川真理子を取り囲む七人の小人は、梶原将仁、秋定信哉、北村俊介、恵谷彰、福岡雄大、福田圭吾、福田紘也と、大きな男たち、登場した瞬間、客席の私も「怖い!」と思った。それはその通りで、白雪姫は彼らに犯されてしまう。その後、王子(キャスト表では“父”となっており、白雪姫自身の父とも重なる存在、山本隆之が踊った。また継母も単に“母”とされており、辻戸香世子が踊った)に助けられた後、彼女は“母”に復習し、また恐ろしい存在──継母のような女になっていく──。
見終わってゾッとする迫力。作品自体に不気味さがたっぷりだったが、それを存在感たっぷりに踊りきった石川もまた凄いと思う。もちろん、他のキャスト達や鑑の群舞の迫力も素晴らしかった。とても怖いけれど、人間というものの深い負の部分に切り込み、創り上げた力作、ぜひまた観たい作品だ。
(2012年8月14日 吹田メイシアター)

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osaka1209c08.jpg 撮影:-OFFICE URANUS- osaka1209c09.jpg 撮影:-OFFICE URANUS-