ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2009.12.10]
From Osaka -大阪-

法村珠里とワディム・ソロマハ主演『エスメラルダ』

法村牧緒:演出・振付『エスメラルダ』
法村友井バレエ団
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ヴィクトル・ユーゴーの『ノートルダム・ド・パリ』を元にしたバレエ『エスメラルダ』。この物語をバレエ化したものというと、ローラン・プティ作品を思い浮かべる人も多いかも知れないが、法村友井バレエ団が1989年から5回に渡って上演している版は、1950年にロシアでブルメイステルによって制作されたものを参考にしている。

幕開け、貧困にあえぐ民衆──そのなかに生まれたばかりの赤ちゃんを抱いて力尽き倒れてしまうグドゥラ(西尾睦生)。赤ちゃんだけが生きていると勘違いされてしまったのか、その赤ちゃん=エスメラルダはジプシーに連れ去られてしまう。目を覚まして狂乱するグドゥラ。西尾は、こういった深みを要する役で特に力を発揮するダンサー。今回もプロローグだけで、観客を強く舞台に引き込んだ。
そして、ともかくエスメラルダ役の法村珠里の輝くような“華”。ジプシーのなかにいても、この娘だけは特別な魅力を持っているのだということを舞台に出るだけで体現している。正直、私はこの暗く悲しい物語の主役がこんなにも明るいことに、最初少しとまどった。けれど、考えてみれば、ジプシーのなかでその生活を受け入れて輝いているのは、ちっともおかしなことではない。
 

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その後のシーン、恋心がお互い芽生えたフェビュス大尉の婚約式にジプシーとしてエスメラルダが……というところでは、他の演出の場合、フルール・デ・リー(高田万里)との婚約を目前にして曇った顔で……という場合が多い。だが、今回の法村牧緒の演出では、婚約のパーティが終わった後、ジプシーたちがやってくるという設定で、エスメラルダとフェビュスのパ・ド・ドゥには、再開できた喜びに満ちていた。今の法村珠里には、この方が確かに合っている気がする。
 

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他に、この舞台で特に印象深かったのは、司祭フロロ役の今村泰典の能面のような不気味さ。この役にしては若い彼だが、押さえた静かな演技にヘビや魚のような気持ち悪さが出ていて、この卑怯な役としてじわじわと迫ってくるものに仕上がっていて良かったと思う。

今、実際に貧困にあえぐ人が多いこの日本で、『エスメラルダ』は思い切った演出次第では、今回以上のインパクトを与える作品に仕上がる可能性があるストーリーかも知れない……そんな勝手な想像を膨らませつつ、帰途についた。
(2009年11月5日 大阪厚生年金会館大ホール)

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撮影:尾鼻 葵/尾鼻 文雄
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