ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2012.09.10]
From Nagoya -名古屋-

モダンダンスの存在をもう一度、見つめ直そうという試み

モダンダンスエクステンション
現代舞踊協会中部支部 Dance Emotionalシリーズvol.2

2011年8月に現代舞踊協会中部支部の新企画として登場した「モダンダンスエクステンション」が、昨年に引き続いて開催されることになった。今年度は、愛知県芸術劇場小ホールと千種文化小劇場が創作の舞台。モダンダンスの存在を今一度考察し、原点を見直すという意欲的な企画である。

nagoya1209b01.jpg 『デュエット』撮影/東海フォト

第一回目となるAプログラムでは、こかチちかこ作品『デュエット』、夜久ゆかり作品『Split』、西川菜穂子作品『again』、福田晴美作品『夜想曲』、野々村明子作品『抱擁』、石川雅実作品『モノクロの月-堕ちゆくカラダ-』の6作品が発表された。
こかチちかこ『デュエット』では、映像で現実と幻想の境界域を演出したり、白の衣装の上に記憶の一場面を映写したりと、映像が単なる舞台美術の域を超えて、内容そのものに直結しより必然性を感じさせてるものになっていた。機器の発達や利便性により安易な映像使用が散見される昨今、映像使用の好例といえるだろう。
夜久ゆかり『Split』は、群集心理と個人とのアンビバレンツなジレンマをテーマにしている。身振りやポーズの連続で個性を象徴したかと思えば、5名のダンサーの組み合わせを変えることで、気持ちの変化や揺れを想起させる。瞬発力のあるコンタクトやリフトを次々に組み合わせることができるのも夜久の身体言語を理解し始めたダンサーたちの技量のなせる業だろう。不器用な身体における積み重ねの重要性を痛感した。
静岡から参加した西川菜穂子の作品は『again』。体のラインの美しさや音楽に同調して躍動するダンスそのものの心地よさをシンプルに感じる作品だった。それもまた均整のとれたダンサーたちの普段のトレーニングの賜物だろう。特に第44回埼玉全国舞踊コンクール2011 モダンジュニア部で第1位受賞後、ベジャール創設のバレエ学校ルードラに留学中の川合十夢の存在感はジュニアレベルではない。また現代舞踊を学んだ若手の中からバレエ学校に留学するほど、ダンスのジャンルの壁は低くなっているのだ。
前回に引き続いて参加した福田晴美は今回も音楽家とのコラボレーションに挑んだ。特に声で出演したDaniel Europeの存在感は圧巻。ただ作品の中ではかなり突出し過ぎた感もあり、身体表現そのものの影が薄まってしまっていたのが残念であった。とはいえ、新しいことに挑戦する彼女たちの心意気は奨励したい。

nagoya1209b05.jpg 『抱擁』撮影/東海フォト

野々村明子は東海地域を牽引してきた前衛舞踊家として、今も常にアバンギャルドを追い求めているかにみえる。滑稽な格好の登場人物によって同時進行するいくつも世界。彼女たちはピーピーと笛を鳴らしたり、奇声をあげたりと右往左往。誰かを探し歩いているのか、ちょっと気が触れたかにも見える。『抱擁』はそんな野々村の奇天烈な世界観が作品のテーマにぴったりと合致、より一層輝いてみえた。
石川雅実は、『モノクロの月-堕ちゆくカラダ-』で、4名のダンサーを振り付けた。石川譲りのダンサーによるアンサンブルは統一感がとれていて塊としてのインパクトを発揮。しかし見所は石川自身のソロダンス。刃物のように鋭く、かつ柔軟な動きは益々磨きがかかり、そこにさらにしっとりとした大人の風情がそわなっている。ソロとアンサンブルとの構成がやや平凡にも感じられたが、これはこれからの課題だろう。
昨年からの本企画でひとつの創作にじっくりと取り組む時間と空間を得たことで、ひとりひとりの創作態度が明らかに変化している。ブラックボックスの劇場空間を生かした演出/振付に挑もうという意図の感じられる見ごたえある作品が並び、この企画の継続が確実に実を結び始めていると感じた公演であった。
(2012年8月23日、愛知県芸術劇場小ホール)

nagoya1209b02.jpg 『Split』撮影/東海フォト nagoya1209b03.jpg 『again』撮影/東海フォト
nagoya1209b04.jpg 『夜想曲』撮影/東海フォト nagoya1209b06.jpg 『モノクロの月-堕ちゆくカラダ-』撮影/東海フォト