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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2012.05.10]
From Nagoya -名古屋-

大作『ラ・バヤデール』に挑戦し、幻想的な物語世界を実現した宮西圭子バレエ団

振付:宮西圭子『ラ・バヤデール』
宮西圭子バレエ団

東海地域には数多くのバレエ団や教室があり、他の地域に比較するとバレエを習ったり、公演を観たことのある人がかなり多い地域なのではないかと思う。それはバレエ団の歴史や規模からすぐに名前の浮かんでくる大手バレエ団だけではなく、大・中・小・様々なバレエ団やスクールがそれぞれに工夫を凝らした自主公演を行っていることと関係があるのかもしれない。そしてこれらバレエ団の特色を生かして開催されているあまたの作品に足を運んでいると、時おり期待以上の魅力的な舞台やダンサーに出会うことがある。宮西圭子バレエ団もそうしたバレエ団のひとつだ。
宮西圭子バレエ団の今年の定期公演の演目は『ラ・バヤデール』、マリウス・プティパ振付、レオン・ミンクスの音楽で、1877年にサンクトペテルブルグのボリショイ劇場で初演された。インドの舞姫を意味するこの物語は、古代インドの舞姫ニキヤと戦士ソロルの悲恋を描いた、絢爛豪華なグランドバレエ。典型的な古典バレエの形式に、民族的なエキゾティズムの要素が加わり、見どころも満載である。

nagoya1205a2282.jpg 撮影/岡村昌夫

さて今回、『ジゼル』のタイトルロールが当たり役となった板垣優美子がニキヤを、ゲストの青木崇(大阪バレエカンパニー)がソロルを演じた。身分違いの恋、恋人の裏切り、後悔、そして死という『ジゼル』とよく似た物語構造をもつこの作品でも、板垣は期待に違わぬ表現力で、最後まで緊張感を途切れさせることがなかった。青木はさり気ないサポートと理知的かつ安定感のある踊りで凛々しき勇士のソロルを、またゲストの男性陣たちは、大僧正(徳山博士)、マグダヴェア(窪田弘樹)、ブロンズ像(中弥智博)など、重要な役どころを気迫溢れる踊りで演じて、見ごたえのある舞台を作り上げた。
中盤、ソロルを挟んで対立するニキヤとガムザッティ、美しい女性同士が、我を忘れてひとりの男性を取り合う欲望と嫉妬に塗れた場面。小柄で優しい雰囲気の板垣、石栗麻美の両者の駆け引きは友だち同士の痴話げんかのように感じられてしまって少々残念。2人にはもっと強く弾けきる大胆さと覚悟が欲しいところ。
一方、毒蛇に噛まれるが、解毒剤を拒否し、失意の中でニキヤが息絶える第2幕、板垣は言葉を使わず感情を伝えるというバレエならではの表現方法に正面から取り組み好演。踊りと芝居が渾然一体となった迫真の演技を見せ、身体の内側から肢体をつたって零れ落ちるニキヤの感情の雫は、物語の悲劇性を象徴しているようで強く胸に迫ってきた。
『ラ・バヤデール』の最大の見どころは、影の王国と呼ばれるコール・ド・バレエにある。舞台後方のスロープから、真っ白なチュチュに身を包んだダンサーたちが足を後方に高く上げるアラベスクというポーズで降りてくる。その統一感のある美しさは格別だ。訓練されたたくさんのダンサーを擁していなければ不可能なこのシーン、宮西バレエ団のダンサーたちは、揃えることに気がいき過ぎているところがあったものの、その甲斐あってか、彼の世の幻想的な風景を作り出すことに成功していた。
また終盤、ガムザッティ役の石栗がバランスを崩し、失敗が続いてしまうというアクシデントに見舞われはしたが、総じて難しいこの演目に一丸となって取り組んでいたと思う。
(2012年4月7日 中京女子文化市民会館オーロラホール)

nagoya1205a1875.jpg 撮影/岡村昌夫 nagoya1205a1892.jpg 撮影/岡村昌夫
nagoya1205a1901.jpg 撮影/正路隆文 nagoya1205a2522.jpg 撮影/正路隆文
nagoya1205a2293.jpg 撮影/岡村昌夫 nagoya1205a8104.jpg 撮影/岡村昌夫