ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2012.01.10]
From Nagoya -名古屋-

ブラック・ボックスを生かした5作品、モダンダンスの祭典

Emotional Danceシリーズvol.1 モダンダンス
エクステンションB公演

モダンダンスの原点を見つめなおすことを目的に企画された「モダンダンス エクステンション」の2回目の公演が開催された。現代舞踊協会の会員の中から5名の振付家が参加、愛知県芸術劇場小ホールのブラック・ボックス空間を上手く活用した個性的な作品が並んだ。

杉江良子の『ココニイタトイウコト』は、杉江自身によるソロ作品。帽子にポシェットという軽快な服装で登場した杉江は、ただ歩くことから始め、それらシンプルな動きを核としながらも、少しずつ鋭角的なあるいは派動的な動きへと発展させた。その上で、自らが床に滑り込んで写真を地面に置いたり、照明で空間を切り取ったり、抽象的な言葉を語ったりと、自身の存在の証を示すかのようなストーリーを舞台の随所に貼り付けていく。さらに「かごめ」や「ふるさと」など、山本直のセレクションによる唱歌が全体に強い印象を残している。ただこの言葉や音楽による意味の貼り付けが、作品を限定し過ぎた感じもする。杉江のシンプルな動きの展開が美しく感じられたゆえ、動きそのものの展開をもっと見てみたいと思った。

nagoya1201a02.jpg 『太陽に焦がれる 』(C)東海フォト

こかチちかこの『太陽に焦がれる』は実験的要素満載。暗転の中での叫び声から始まる冒頭、途切れ途切れの音の中で何度も繰り返される無機質な動き。濃赤の全身タイツに身を包んだダンサーたちの耳には懐中電灯が取り付けられ、それは時折り舞台照明の代わりを務めている。床に身を浸し、ずるずると引きずったまま移動したり、舞台上を激しく動き回ったりと多様な動きを盛り込んでいく。ひとつひとつのムーヴメントやアイデアはユニークであるが、いまひとつ突き詰められないまま羅列されてしまっている部分もある。すぐに展開させるのではなく、ひとつひとつのアイデアをトコトン追及してみたらよいのではないだろうか。

『芸術家よ、語るなかれ』は、中村仁美による振付。赤、黒、白、青、緑とカラフルな衣裳を身に纏った女性ダンサーたちがそれぞれ小粋なポーズで自己ピーアール。完全暗転が可能なブラック・ボックスを活かした照明で、舞台面に様々な幾何学模様を描き出し、明かりと身体の抽象的なコラボレーションを見せる。天井からの採光は、芸術家への啓示だったのだろうか。

夜久ゆかりは『Gold fish bowl 〜Strange fish〜』を上演。金魚鉢の中をイメージした作品だとのこと、ダンサーを眺めているうちに、確かに舞台上のダンサーたちが金魚に見えてくる。映像の使用や観客席からの登場など、舞台の使い方にも工夫が見られる。女性3名、男性2名のダンサーが、時々にグループを作り仲間はずれにしたり、また元に戻ったり、忙しく動き回るかと思えば、スローモーションで移動したりと、緩急のつけ方も手馴れている。ラストで舞台から落ちて死んでしまうダンサーたちが、金魚鉢から飛び出して死んでいく金魚たちに重なる。金魚のあっけない死が、意外にも我々人間の死と同じ命の重さだということを知らせてくれるような幕切れだった。

最後は、倉知可英の『き・ら・き・ら 〜沈黙の音〜』。CDを組み合わせたオブジェを携えたダンサーたちが粛々と入場してくると、照明を受けたそのオブジェは終始キラキラと舞台上で輝き続ける。このオブジェが象徴するように、ポール・サイモンの「沈黙の音」をモティーフにしたこの作品は、闇の中で照らし出される光を強く感じさせる作品だ。ダンサーは闇を強く意識させる全身黒の衣裳で登場。若手ダンサーたちが激しく動き回るかと思えば、熟女と思われる存在感ある女性たちがオブジェを掲げ、怪しげに通り過ぎる。黒魔術師のような風情で現れた倉知は、中央で赤のハイヒールを履き、黒の衣裳を肌蹴て艶かしく揺れ動く。人間の生悪を凝縮したかのような存在として、彼女はただそこに居る。熟女ダンサーたちが高めの台に昇り、まるで彫刻のように舞台背景になる様など、随所に倉知の個性光るエログロ的な演出がユニークだった。
Emotional Danceシリーズも、回を重ねることによって、着実にステップアップしているように感じた。次の第3回目では、どのような個性的な作品が出現するのか、創造者たちのさらなる果敢なチャレンジに期待したい。
(2011年12月12日 愛知県芸術劇場小ホール)

nagoya1201a01.jpg 『ココニイルトイウコト』(C)東海フォト nagoya1201a03.jpg 『芸術家よ語るなかれ』 (C)東海フォト
nagoya1201a04.jpg 『Gold fish bowl〜Strange fish〜 』(C)東海フォト nagoya1201a05.jpg 『き・ら・き・ら〜沈黙の音〜 』(C)東海フォト