ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2008.12.10]
From Osaka -大阪-

大阪のレトロな建築空間でのDANCEの試み"大阪BABA"

 先月号で、唐津絵理さんのレポートがあった大阪BABAの最終公演「ソロ・セッション・プログラム」。出来たばかりの京阪「なにわ橋駅」構内にオープンした「アートエリアB1」でのパフォーマンスの模様だった。実は、この最終公演の前に大阪BABAシリーズとして、大阪市内にある大正末期から昭和初期に造られた建築空間のなかでのダンスという催しが3つ行われていた。報告が遅くなり、前後してしまったが、今回はそちらをレポートしたい。

 リーフレットによると、大正末期から昭和初期の大阪は、人も集まり産業も華開いた賑わい溢れる時だったそう。その頃造られたビルは、今、古びつつもそれがまたかえってアンティーク調の良い雰囲気を醸し出していることが多い。そんな “場” の魅力を最大限に活かしてのプログラム。
 
 一つ目は、10月4日、5日に行われた〈ジェコ・シオンポ プログラム〉。会場は、西長堀駅すぐの細野ビルヂング。建築会社細野組の本社ビルとして昭和11年に竣工されたもので、石材請負業も行っていた同社、上質の石材がふんだんに使われている。
 そこで踊ったのは、インドネシアのパプア州出身で、アメリカでヒップホップを学んだジェコ・シオンポとそのパートナー、アジェン・スーライマン、そして、大阪から全国に活動のはばを広げるヒップホップ・ダンサー、osamu。
 会場に入ると、壁に埋め込まれた年代物の棚等の家具類、扉に書かれた “社長室” の文字も旧字で時代を感じさせ、なんとなく懐かしい。ダンスはインドネシア風と思える音楽も使いながら、コミカルな部分が多々。アジェンとの息のあったダンスは身体能力とセンスが感じられた。続いての、osamuのダンスはチャーミングな笑顔で鮮やかな動き。最後のでは、DJのムーディの北村も交えて。このあたりになると、クラブのようにドリンクでも片手に楽しみたくなった。

 2つ目は、10月8日に行われた〈ピチェ・クランチェン プログラム〉。会場は谷町4丁目近くの山本能楽堂。こちらは昭和2年に建設され、その後戦災で消失したが、昭和25年に再建、今も能楽堂として日々使われているところだ。
 ピチェはタイの古典仮面舞踊劇「コーン」を引き継ぎながら、コンテンポラリー・ダンスに触れ活動してるダンサー&振付家。自らが伝統芸能の世界から、コンテンポラリー・ダンスへと眼を向けたこととも関係するだろう、日本の能になみなみならぬ興味を抱いているようだった。
 上演されたのは、はじめにピチェによる『Reconsider(再考)』、過去のものを現代に生かすにはーーというテーマの作品。黒の上下でスローモーションに見える制御された動きは何らかのメソッドで鍛えられたダンサーであることを私に強く感じさせる。正直、私にはどこまでがタイの伝統的な動きを取り入れたもので、どこからがコンテンポラリーの領域なのか分からなかったのだが、不思議なほど、能楽堂の背景の松にマッチするダンスだった。
 その後には、『隅田川』を、山本章弘の仕舞でみせ、同じテーマでピチェが。ピチェが創作した『隅田川』ーー黒い石を息子に見立て、息子が死んだことを知り一人泣く母を、肩をふるわせ静かに表現する姿は観るものの心を静かに打った。
 最後には、ピチェと山本、DANCE COXエグゼクティブ・ディレクター大谷燠とのトーク。タイと日本の古典舞踊のテクニックに酷似する部分があるということ、約束事のある古典舞踊というものへの想いーー客席で私もさまざまな想いを頭に巡らせつつ聞いた。

 そして3つ目は、10月10日、11日にフジハラビルで行われた〈one-Dance〉の2公演。天満橋1丁目にある大正12年建築のこのビル、大正ロマンと叫びたくなるような雰囲気たっぷり、階段を含め、ビル全体がギャラリーという感じだ。
 ここでの1st partは、野田まどかの『生のっ!』。4階の会場まで、階段を上っていくと、途中のそこここに「好きな言葉を思い浮かべてください」「この半紙を一枚とって、あなたが野田まどかだと思う人に渡してください」といったメッセージが。4階に着くと、白が基調のベランダのある開放的なの空間。床には、いろいろな歌詞が書かれた半紙が散らばっている。白い半紙もあって、書かれたものでも、自分が書いたものでも歌って欲しいものがあれば、野田まどかに手渡すといいらしい。パフォーマンス1時間前から解放されていたこの部屋、開演少し前から野田が渡された歌詞を歌い始める。15時、ベランダから差し込む光がとても心地よい。そんな時間に始まったパフォーマンスは、自然光を生かしつつ、自然に近いライトをあてて。じっと、客席を見つめる姿が照らされる、予想できない激しい動きに光る汗が照らされるーーーとても、効果的な照明だと思うが、それでいてとても自然── 暗幕で仕切らない空間での照明の使い方が興味深い。ナチュラルで心地よいパフォーマンスだった。
 続いての2st partは、地下1階。山田知美の『駄駄』だ。こちらは一転、地下が似合う。黒いワンピースの山田が、長い髪を振り乱し、白目にもなり、ゆれる。ものすごい勢いで頭を振り続け、顔はすっかり髪に隠されたかと思うと、そこからふと表情が見える。ライトも手伝いとてもコワイかと思うと、笑った顔が可愛く思えたり・・・。彼女は、自分を究極までさらけ出しているーーーそれは凄いことで、誰にでも出来ることではない。そのインパクトは尋常ではないーーーとにかく、それは確かだった。
(2008年10月5日 細野ビルヂング、10月8日 山本能楽堂、10月11日 フジハラビル)