ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu  
[2008.12.10]
From Nagoya -名古屋-

猪崎弥生舞踊公演『荒地』

 舞踊家・猪崎弥生による舞踊公演が久しぶりに開催された。猪崎は、2006年まで中京女子大学で教鞭をとり、同大学ダンス部の全日本大学ダンスフェスティバルでの数々の受賞作品の指導をはじめ、世界バレエ&モダンダンスコンクールでファイナリストとなった石川雅実を筆頭に、愛知県で多くのダンサーの育成に貢献してきた。しかし勤務先の変更により、しばらく活動を休止、気持ちもあらたにこの度の公演となった。
「荒地」は同名のT.S.エリオットの詩から着想を得た作品で、「ひとりの女のよみがえりの物語」。これまでも「笑う女」など、女性をテーマに創作を行うことの多かった猪崎らしく、今回は旧知のダンサーたちとともに文字通り、「蘇り(よみがえり)」をテーマに選んでの再出発となった。

撮影:杉原一馬

 全体は群舞で始まり、群舞で終わるプロローグからエピローグまで7つの場面から構成されている。いずれも様々な過去・現在・未来の女たちが主人公だ。プロローグに続く第2場「四月は残酷な月」では、ゲストのさとうみどりが導きの女を、猪崎モダンダンスグループの初期メンバーの団野美由紀が予言の女を演じた。エリオットの詩の一部を何度も何度も繰り返す団野。大人の女による緩やかな時間が流れる。
 第3場では、カンパニーのコアメンバーより4名の「囁きの女」と呼ばれるダンサーたちが、流麗な踊りを見せた。楽器をもって登場した落合敏行による音楽と彼女達の踊りのわずかなズレ、その間合いが作品にアクセントを生み出す。落合の音楽が作品全体を方向付けるのに成功している。
 そしてクライマックスの第4場「薄明の季節」では、ゲストの清水フミヒトと主役の・石川雅実によるソロとデュオが披露された。清水は坦々と、しかし力強く持続的な踊りで女との出会いを果たす。久しぶりに猪崎の作品に戻ってきた石川の踊りには、精神的な深みと女性としての陰影を感じた。ここ数年の成長が表現の幅を広げたのだろう。持ち味の伸びやかな動きに加え、収縮などの内向的な動きに表現のリアリティを感じることができた。ラストは、いまや団野や石川が指導している若手のダンサーたちが多数参加して、迫力ある群舞で幕を閉じた。

撮影:杉原一馬