ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2008.08.11]
From Nagoya -名古屋-

バレエスタジオ・エム・ドゥ 10周年記念公演

 松原扶佐子と水谷訓子によるオープンスタジオのエム・ドゥが開設されて10年。この度、10周年を記念した公演が開催された。

 全体は3部構成で、第1部の『レ・シルフィード』ではロマンティック・バレエの優雅さを継承しつつ、一幕バレエの大人のエレガントさを、また第2部の松原振付の『フローラル・ファンタジー』では、モーツアルトの音楽で、大人の可愛らしさを表現。そして第3部では、ホセ・リモン・カンパニーやハンブルグ・バレエ、デンマーク王立バレエなどで活躍した多彩な経歴をもつスティーブン・ピアをゲスト振付家に迎え、スタジオのダンサーたちによるオリジナル作品を創作した。

 第2部の『フローラル・ファンタジー』は、花園での色鮮やかな風景が舞台。ひとりの男性(大寺資二)を挟んだ女性2人のやり取りや、華麗な蝶々たち、ベビーカーを押した若い母親、上品な貴婦人や読書をする人々などなど、庭園に出入りする人々が繰り広げる様々な情景がお洒落に描かれている。先日来日したばかりのパリ・オペラ座の『ル・パルク』(アンジェラン・プレルジョカージュ振付)や、日本を代表する振付家・佐多達枝の名作『庭園』など、公園をモティーフにした作品は多いが、自然と人間が共生する空間、そこでの情景は、振付家に大きなインスピレーションを与えるということなのだろう。

 第3部は、スティーブン・ピアのパートナーでもある折原美樹の振付による『STAGE』から始まった。エム・ドゥを主宰する水谷訓子による静謐なソロだ。スクリーンの中で座っているマーサ・グラハム舞踊団プリンシパルの折原。その横でベテラン水谷が淡々と抑制のきいた動きを積み重ねていく。10周年を迎え、ますます挑戦的であろうとする、短いながらも新たな旅立ちへの意欲を感じる秀作だ。

 第3部のラスト『NAMELESS GARDEN』。ここでも庭がテーマとなっている。
 スティーブン・ピアは、庭を天界と地界、そして人の力が融和したスピリチュラルな空間としてとらえているという。下手前の階段から、ゆっくりと歩いて舞台に上ってくるスティーブン・ピアはすらりと背が高く、舞台の立ち姿はさすがに多くの著名カンパニーでプリンシパルを演じたダンサーの風格だ。16人の女性たちが舞台狭しとスパイラル状に広がり、高低のある様々な造形美を見せる。そこからシェーンベルグやメレディス・モンクなどの現代曲に合わせて様々なモダン・ダンステクニックに裏付けられた振付群が次々と並んでいく。メレディス・モンクの声に導かれるように縦横無尽に走りまわったかと思うと、アンサンブルがカノンを繰り広げる。
 空間を揺るがすような伸びやかで空気の振幅を感じさせる踊りは、どこか東洋の精神性を感じさせるものだ。すでに伝統になりつつあるモダンダンスのスピリットと、それを今に伝えるピアの振付。『NAMELESS GARDEN』 は、10周年を迎えたオープンスタジオの精神を体現するに相応しい作品となった。
(名古屋市芸術創造センター、2008年7月5日)

バレエスタジオ・エム・ドゥ 10周年記念公演
名古屋市芸術創造センター 2008年7月5日
振付:スティーブン・ピア『NAMELESS GARDEN』
   折原美樹『STAGE』
   松原扶佐子『フローラル・ファンタジー』
   フォーキン『レ・シルフィード』