ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2007.11.12]
From Osaka -大阪-

想いに入り込み、想いが溢れる、貞松浜田バレエ『白鳥の湖』

瀬島五月、
アンドリュー・エルフィンストン

 オデットの気持ちの変化が、はっきりとこちらに届く---そんな『白鳥の湖』だった。そのオデットを踊ったのは瀬島五月、演目によって、驚くほど違った魅力を見せてくれるダンサーだ。以前、イスラエルのオハッド・ナハリンの『DANCE』上演の際の幕間に即興で踊る姿を観た時には、コミカルでマイペースな緩急自在に見える独特の魅力、物語性の強い作品では、その役柄が乗りうつったかのようなリアルな表現。今回のオデットも、物語が伝わってくるものだった。
 2幕の情感溢れる酔うような表情、”想い”の中に入り込み、全身から”想い”が溢れ出す、アーティステックな魅力にゾクッとした。また、4幕では、凛として死を決意する意思がはっきりと伝わってきた。
 オディールは廣岡奈美、イキイキとして鮮やかなテクニックが気持ちよい。フェッテ・アントゥールナンも、堤俊作指揮の音楽と高揚感の中で息を合わせるようにものすごく速いテンポでこなして盛り上げていた。王子はアンドリュー・エルフィンストン、王子という特別な存在としての気品も見え、素直で無邪気な可愛らしさも自然、彼も見る度によくなってゆく。
 この貞松浜田版の演出の特徴、まず、全幕通してピエロは出ないこと、そして、4幕で後悔した王子が白鳥の群れに謝り、そこから始まる絶望感のなかでのパ・ド・ドゥは、私たちが普段、『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』のアダージオとして聞いている曲。この場面でこの曲を聞くと不思議なほど切なくて、哀しさのなかのピュアな愛が伝わって良い。
 脇も良い踊りが多々、1幕のパ・ド・トロワは、主役経験も豊富な上村未香、正木志保、貞松正一郎の3人。3幕ではパ・ド・カトルを山口益加、竹中優香、弓場亮太、武藤天華がきらびやかに華やかに、ナポリの安原梨乃、金子俊介は可愛らしい笑顔が印象的、スペインは、武用宜子が存在感たっぷりに、松原博司、弓場亮太、武藤天華、玉那覇雄介の4人の男性を率いて、オディールとマントを使って入れ替わり格好いいマジックのよう。
 コール・ド・バレエも含めてレベルが高く見応えのある舞台だった。

 

瀬島五月瀬島五月、アンドリュー・エルフィンストン
廣岡奈美、アンドリュー・エルフィンストン


 

(9月22日、アルカイックホール)