ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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桜井 多佳子 text by Takako Sakurai 
[2007.09.10]
From Osaka -大阪-

K★BALLET STUDIO 22nd concert

 矢上香織、久留美、恵子の三姉妹が主宰するK★BALLET STUDIO=通称、ケイスタは、山本隆之(新国立劇場バレエ団)はじめ、福岡雄大(チューリッヒ・バレエ)、福田圭吾(新国立劇場バレエ団)ら、優秀なダンサーを輩出している。また三女、矢上恵子は振付家として国内外で活躍中だ。そんなケイスタのコンサートは、毎回、クラシック・バレエもコンテンポラリーも並べられた意欲的なプログラム。今回も、ボリュームたっぷりだった。
 Part1は、『白鳥の湖』からプロローグと第二幕。オデット姫の吉田千智は、手足が長く、身体のラインも美しい。純白のチュチュと白い頭飾り=クラシック・バレエの典型ともいえるオデット姫のコスチュームがとても似合う。動きも滑らかで、彼女の若さが、そのままオデット姫の清純さを示していた。
 王子役の福岡雄大は、プロとしてチューリッヒ・バレエで活躍してきたが、王子役は初めて。ただ立っているだけのポーズでも、足先まで力を抜かず、頭や腕の位置にも気を使っている様子だった。まずは自己流の表現や小細工なしに「型」から王子役を形成していくのは、やはりクラシック・バレエの本道だろう。その姿勢に好感が持てた。王子の友人でもある従者ベンノ役は、幼いときから福岡と一緒にレッスンを受けている福田圭吾。実生活でも友人であり、おそらくライバルであろう彼らのやり取りは、自然ながら、どこか緊迫感をはらんでいて興味深かった。白鳥たちには、ジュニア生も混ざっていたが、辻戸香世子らがしっかりまとめ、整然としたコール・ドをつくりあげていた。
 

 Part2は、バレエコンサート。ベビー科の生徒も出演しているが、プロのダンサーも登場するので目は離せない。『海と真珠』を踊った上田尚弘は、ジャンプが美しく、動きがとてもていねい。『海賊』第一幕の奴隷のパ・ド・ドゥを踊った福田圭吾はなんとも表情が豊か。黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥの金子紗也は、小気味良く「悪女」を演じていた。パ・ド・ドゥの楽しさを満喫させてくれたのは、黒瀬美紀と秋定信哉の『ハレキナーダ』。二人ともチャーミングで動きがとてもリズミカル。観客にも、踊る楽しさが伝わってきた。
 Part3の『ガチョーク組曲』は、ケイスタ・ダンサーのセンスの良さを感じさせた。『ある詩人の死』の山本隆之のさわやかさ、『プエルトリコのみやげ』の井上裕加里のドラマ性、秋定と恵谷彰の『バナナツリー』も自然に笑いを誘っていた。
 

 

 Part4は、矢上恵子の新作『Bourbier』。矢上作品は、攻撃的なほど動きが激しくスピーディで、緊張感が持続する。だが、最近、その傾向に変化が現れている。スピード感もエネルギーもそのままだが、どこか柔らかさや優しさが漂っているのだ。
 例によって明確なストーリーは示さず、タイトルの『Bourbier』も、意味は持つのだろうが、すぐに理解されることは望んでいないととって良いだろう。作品の解釈は見るものの自由に任されている。冒頭、シンプルなシャツとパンツ姿の山本隆之が客席を背にしている。そして福岡雄大と「関わりあう」。この「関わりあい」に、大きなアクションはない。でも、そこに確かなドラマを感じさせるのは、山本の技量である。そこからのダンスの展開は、若者=福岡雄大の成長の過程にも見えた。振付者、矢上自身も悪魔のような雰囲気で登場。自分の身体を知り尽くしたような動きには余裕があり、動きと動きの「間」のタイミングが絶妙でどんどん観客をひきつける素晴らしいダンスを見せた。ラストには山本は舞台後方の階段を昇っていき、福岡はそこに残る。先輩・山本は福岡に未来を託したということか。どちらにしろ、矢上の、山本や福岡への「思い」が伝わってきた。その「思い」とは、山本に対する信頼と尊敬、福岡の前途への祈りにも似た期待である。
 

 
(7月31日、吹田メイシアター)