ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2007.08.10]
From Nagoya -名古屋-

アフターイマージュ サードピンチ『俺はお前の流暢なスペイン語に興味は無い』
&FJJS(フリージャンピングジャムセッション)『騙されて貰います』

 2003年に結成されたばかりの若手コンテンポラリー・ダンス・カンパニーのアフターイマージュが、愛知県芸術劇場小ホールにて3回目となる本公演を行った。10名弱のメンバーの平均年齢が23歳、しかも最近都会で流行中の男性だけのカンパニーである。
 彼らの作品は、主にカッコ良く踊ってみせる(ことを目指した)パートと、生の身体のリアリティを、ゆるっとした質感でユニークに見せていくコミカルな場面を交互につないでいく形で構成されている。スピーディーな展開のうちに、次々に現れる特異な身体をもった男たちに、会場からは時おり笑いが漏れる。笑いのセンスもいい。1シーンが極めて短く展開が速いこと、粋なダンスと面白い身体の配分、ポップスからロック、テクノと、バラエティに富んだ選曲、ムーヴィングや色などで照明効果や小道具を多用するところなど、同じ男性だけのカンパニーのコンドルズへの羨望の眼差しを感じさせる場面も少なくない。

  実は2002年、愛知芸術文化センター10周年記念イベントで、近藤良平に名古屋の若手男性のための振付を依頼したことがある。この公演に際してコンドルズの弟分として「ずんどるこ30」というグループをつくることになった。そのとき、参加した10代の男性のひとりがアフターイマージュを主宰することになった服部哲郎だ。この公演でコンテンポラリー・ダンスに開眼した服部は、その後すぐに自分のカンパニーを結成することになる。
自らの人生を変えてしまうくらい大きな衝撃にあった場合、その衝撃の加害者、この場合に近藤良平は、服部にとっては憧れの対象になるはずだ。ダンスに限らず、何かを学ぶにはまずは「真似」することからはじまる、といっても過言ではない。「まなぶ」は「まねる」からきているのだ。しかしやがては、そこから自分だけのこだわりや存在価値を見つけなければならない。習うことはとても重要だが、そこに留まっていては、アーティストとは呼べないのだ。次は、強い身体を作りながらも、もっともっとオリジナリティを意識すること。それぞれに強く突き動かされるものがあるのだから、その正体を見破ればいいだけだ。
作品全体を通して発せられる若い男性ゆえのほとばしるエネルギーの放出は、一見無茶苦茶とも受けとれるが、汗と共にはじけ散るパワーは、清々しく潔ぎよかった。振付の服部と演出のトリエユウスケ、そして彼らの磁力に惹きつけられて集まってきている様々なスタッフたちによる温かいサポート心を感じたからだろうか。舞台創造はコラボレーションである。互いを理解し合おうという彼らの共同作業のチームワークのよさが、空間創りに活きていたのだと思う。
 


さらに、最終公演の後、フリージャンピングジャムセッションが行われた。会場にきたすべての方にダンスを体験してもらう観客参加型の即興ダンスセッションである。ゲストには、愛知県出身の伊藤キムを迎えたほか、さらに関西の森裕子などのダンサーも飛び入り参加して、それぞれの参加者が、フラットな空間で自由にダンスを楽しんだ。
また、伊藤と森の即興デュオなど、インプロならではの嬉しいハプニングにも遭遇。プロのダンサー2人によるインプロヴィゼーションは、互いの感覚を瞬時に読み取り、さらにそこに自らの身体で反応して素早くコミュニケートするという、このセッションの意図を的確に体現した濃密なダンスだった。それまで踊っていた参加者たちの誰一人、彼らの空間には入れない。そこには誰も侵すことのできない極めて特別な空間が出現してしまったのだ。
ダンサーだけではなく、照明や音楽もその都度、即興でコラボレーションしていたという。スペシャルな空間で、ダンスそのものを楽しみ、知らない他者とのコミュニケーションを体験した参加者たち。ダンス中毒にかかった彼らが、ダンスを丸ごと味わうために、再びこの会場に戻ってきてくれるのを楽しみに待ちたい。

(愛知県芸術劇場小ホール、2007年7月20、21日)