ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2007.04.10]
From Osaka -大阪-

大学の舞踊の可能性について考えた---神戸女学院大学舞踊専攻公演

 ’06年春に神戸女学院大学音楽学部音楽学科に新設された舞踊専攻。現在、第1期生16名が1年間の課程をほぼ終えるところ。そんな学生たちの第1回公演が行われた。


第一回公演リハーサルより
 舞踊専攻担当教授は、振付家として注目を浴びている島崎徹、彼による公演の前後と間に行われるお話は、ありがちな堅いモノとは全く違い、楽しく人を引き込むおしゃべり、それでいて経緯や思いを客席にきちんと伝えていた。ちなみに出演は学生(女子大なのでもちろん女性ばかり)16名、プラス島崎の東京の男性生徒も2名加わり良い役割を担っていた。
 2つの演目が上演され、最初は『Class at 2:00pm』と題された、彼女たちが週に3回続けてきたモダン・ダンス技法の授業を見せるもの。マーサ・グラハムのテクニックをベースに村越直子が組み立てたもので、この日上演の構成・振付・演出も村越。作曲はSarah Shugarmanで、伴奏も彼女がカナダから駆けつけ、日本でモダンの伴奏に取り組む大野清史とともに生演奏を行った(ちなみに、日本にはクラシックの伴奏者も少ないが、モダンに対応できる伴奏者は皆無のようだという)。

 楽器と共に、Sarahは歌っていたのだが、女性の声が彼女たちの踊りにとても自然に合っていた。東洋に関心が深かったグラハムは呼吸を重視していた、それを1年間学んできた学生達は、自分の内と向き合いエクササイズを見せてくれた訳だが、意思をきちんともった視線が、客席の私たちを射るようにまっすぐ届き、清々しい思いで観た。
 2つ目の演目は『Here we are!』、島崎徹の構成・振付・演出だ。彼自身のトークによるとこれは「神戸女学院舞踊専攻、ただいま参上!」という心意気のものだという。タートルネックのシャツに袴といったいでたちのダンサーたち、それぞれにそれぞれの表情があり、繋がりがあるのを感じさせる作品で、前に進む力が伝わってくる。見終わった後にはパワーをもらった気がした。




第一回公演リハーサルより

 全体を通して、島崎の言葉と彼女たちの踊りからあらためて強く思ったことがある。ある意味当然のことなのだけれど、プロの舞踊家になるとかならないということよりも、一番大切なのは<何を表現したいのか?>。実は、私たちはこれを忘れがちなのかも知れないーー人間は霞を食っては生きていけないから、好きなことを職業にできる人は幸せだ。しかし、職業にしたゆえに、表現しにくくなることも多々あるだろう。文学部に行く学生が全員、文学者や小説家になるのではないのと同じように、この学生達が全員、舞踊家になることはないのだろう。けれど、この学生たちは“表現すること”の素晴らしさ、尊さを確かに学んでいる、それは必ず彼女たちの人生を豊かなものにするだろう。
(2月14日~18日、神戸女学院大学ミリアム館
*18日のPM2:00の部を鑑賞 写真はリハーサル時のもの)