ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2007.02.10]
愛知県で開催されたちょっとタイプの似ている2つの企画公演をご紹介したい。
ひとつは、NPO法人JCDNが企画し、今年で7回目となった「踊りにいくぜ!」。そしてもうひとつは、文化庁の助成により海外でダンスの研修を行った舞踊家による報告を兼ねた発表公演「芸術家在外研修成果報告公演」である。
いずれも、「現代的」なダンスであること、そして、選ばれ、磨かれた舞踊家であるという共通点がある。
From Nagoya -名古屋-

踊りに行くぜ!vol.7公演

7回目となった「踊りに行くぜ!」の出演者は5組で、他の地域での上演を経た再演の作品もあり、いずれも興味深かった。

 最初に登場したいとうみえは、長久手で開催された選考会から選出された地元出身の若手ダンサーだ。『set me free』というタイトルの作品では、派手な動きや表現こそないが、まっすぐに身体に向き合い、丁寧に動きを紡ぎだしている。ダンスと自己とのスタンスの取り方が心地よい。今まさに自らの身体の衝動を探っている過程という印象は受けるが、このままあせらずに身体に耳を傾けていって欲しい。


「set me free」

「set me free」

 続く、玉内集子も自作自演のソロ作品『背中のつぼみ胸が咲いたII』。玉内は、現代舞踊の深谷正子門下で、関東のビデオより選出された。特有の存在感あり、空間を変容させていく強いエネルギーを秘めた身体感覚を身につけている。しかし彼女の身体は、音楽や言葉、美術などの「もの」と身体の関係がはっきりと認識できるような近い距離で見ることによって、くっきりと立ち上がってくるものなのではないかという印象を受けた。残念ながら今回のような広い会場ではそれが見えてこなかった。


「背中のつぼみ胸が咲いた II」

「背中のつぼみ胸が咲いた II」

 ほうほう堂×チェルフィッチュは、ほうほう堂という二人の小柄な女性とチェルフィッチュという劇団の岡田利規のコラボレーション作品だ。ほうほう堂は、155cmの目線からみる日常的な世界をさりげなく描き、現代の若者の心を掴んでいる。この作品でも、幼げに見える二人の女の子が日常的な動きで、何気ない会話を楽しんでいるようだ。日本のコンテンポラリー・ダンスの特徴のひとつである、ポップでキュートな日常ダンスが最後まで展開された。


「ズレスポンス」

「ズレスポンス」

 身体表現サークルはふんどしスタイルの男性二人組み、タイトルは『範ちゃんへ』。体操のような単純な運動と身体を張った動きのパワーが絶妙。静かにスタートした動きは、まるでドミノ倒しやシーソーのように、次の運動へとつながり、メビウスの輪のように増幅されていく。単純な動作を必死で繰り返す姿がさらに笑いを誘う。難しいことは何もなく、ただただ身体の可能性や滑稽さを提示していて潔い。


「範ちゃんへ」

「範ちゃんへ」

 康本雅子『ナ花ハ調 』は、康本の身体の美しさとはかなさ、そして強さも弱さも露呈した秀作だ。康本は、美しい顔立ちや抜群のプロポーション、身体能力を兼ね備えていながらも、あたかもそれらを否定するかのごとく、故意に奇妙な「もの」や「こと」を差し挟む。この作品では、それはエアドールであり、コップであり、チープな雰囲気の漂う映像であり、そしてその花を食べる康本自身だ。日常的なしぐさやもの、ごく普通の世界から、あっという間に異次元の世界に観客を惹きこんでしまうことができる不思議な力をもっているダンサーに、この地域の観客は釘付けになってしまっていたように思えた。


「ナ花ハ調」

「ナ花ハ調」

(2006年12月16日 長久手文化の家/風のホール)