ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2005.11.10]
From Osaka -大阪-

●客席と一体感のある演出、貞松浜田バレエ団「創作リサイタル17」

 今年行われたコンクールで入賞した2つの創作ソロ作品、『あなたの声を聞かせてください』(出演:竹中優花、振付:加藤きよこ、音楽:G・ヴェルディ)と『Trans > mission』(出演:武藤天華、振付:森優貴、音楽:レディオヘッド)で幕が上がった公演。続いて3つの作品が上演され、それぞれタイプの違った魅力で、踊り自体のレベルも高くとても楽しめた。

 まず貞松正一郎振付の『セイラーズ・セイリング』。これは阪神大震災直後の創作リサイタルに向けて創られた作品の再演。港街神戸らしく、男女共に色とりどりの水兵さんのセーラー服を着て、小学校の運動会などで馴染みのある音楽を多用した明るく楽しい踊り。最後には手旗信号で“ガンバローコウベ”という言葉が繰り返され、観ていると「神戸ってすっごく良い所なんだよ!」というメッセージが強く伝わって来て、とにかく元気が出た。

 次は、これも団員の芦内雄二郎振付『AMOROSSO アモロッソ~ここにいないあなたへ~』。死んでしまった大切な人に捧げる作品。薄いピンクのロングドレスの女(堀部富子)と、黄色いワンピースの女(谷本さやか)を中心に取り巻く男たち、それぞれの思いを現すダンサーたちによって踊られた。教会音楽の中でラスト、光に包まれる谷本が、惜しまれながら死んでしまった存在の象徴なのだろう。哀しみの中に救いを持たせる優しい終わり方だった。全体的にしっとりとおだやかさが流れていて良かったのだが、欲を言えば、もう少し構成を整理する余地があるかも知れない。


 そして最後の演目は、イスラエルダンスを代表するカンパニー、バットシェバ舞踊団のオハッド・ナハリン振付による『DANCE』。振付指導はバットシェバで活躍する稲尾芳文。2部が終わっての休憩から戻ると、黒のパンツスーツ姿の瀬島五月が、幕前で大道芸のように踊っている。パラパラと席に戻って来た客たちは「えっ?もう始まってるの? でも客席の明かりは消えていないし?」と思いながら席に着く。瀬島は、笑いをとったり、時にはとぼけた動きを繰り返して、確実に観客の関心を自分に集中させてゆく。それは、きっと路上でやっても確実に人が周りを囲むだろう達者な芸で、彼女は1ケ月前にオーロラ姫を美しく踊っていたが、その彼女とは正反対のようにコミカル。両方確かに“DANCE”であって、彼女はともにこなせる素晴らしいダンサーだといえるのだろう。

 そうしている内に、女性ダンサーが増えて行き、一緒に踊り始め、一気に音楽が高くなって幕が開いた。15人の同じ服装の女性ダンサーたちによる儀式を感じさせる“DANCE”は、ものすごい迫力。ぐいぐい引きつけられているところに、また客電がつき、ダンサーたちが客席に降りて、ひとりづつ見知らぬ観客を誘い、パートナーとして舞台にあげて共に踊りだした。この時、一切の言葉は発せられていない、ジェスチャーと踊りだけにリードされて、一緒に踊り出す観客たち。たどたどしく踊る人、思いっきりノッテ楽しげな人・・・自然に客席から起こる手拍子。客たちが席に帰される時も、お辞儀をして舞台を降りるなどノリのよい人が多い。「関東で上演したら、これだけノリがよいだろうか?」という思いが頭をよぎった。急に引っ張り出されて、乗れる人が多いのも、客席から自然に手拍子が起こるのも関西人の特質かも知れない、一度関東で実験出来たら面白いだろう。

 舞台終了後、客席のあちこちから「楽しかった!」という声が多々聞こえてきた。終了後の帰り道で、こんなに客たちの気持ちが高揚している公演は珍しいように感じた。
(10月14日、神戸文化中ホール)
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