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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2005.07.10]
From Nagoya -名古屋-

●第3回ラ・カシータ公演'Distance'

 ラ・カシータは今から3年前に、マキシマム・ダンス・カンパニの榊原弘子とKバレエに所属していた有佳子の姉妹を中心に名古屋出身のバレエダンサーたちによって結成されたダンスグループで、これまで年に1度、自主企画公演を行ってきた。今回で3度目となるラ・カシータ公演、今では多くのダンサーが海外や東京など、様々な場所を拠点に活動を行っているとあってか、今回のテーマは「距離」。

プログラムは、榊原弘子と清水健太の『シエラザード』からはじまって、最後まで8作品の様々な作品が並んだが、今回の演目は前回と比べて、創作作品が多くなっていたことが特徴的であった。

『シエラザード』は、ベテラン2人の踊りとあって、終始安定した踊りで、公演の幕開けを飾った。次の『ジゼル』は、古典の同タイトル作品とはまったく異なる現代版で、ジュリアード音楽院に留学中の寺山春美によって、現代の女性の精神が変貌していくさまが描かれた。公門加奈振付の『さかな』は、姉の公門美佳によって踊られたが、互いのよさを知り尽くした姉妹共同作品といえよう。まさに水を得た「さかな」といった美佳の動きが印象的。

休憩を挟んでの寺山の自作自演作品『Introduction・Invitation・Intoxication』は、下りたままの緞帳前の張り出しから始まるユニークな作品。舞台に駆けてくる黒のパンツスーツ姿の寺山、少しだけ上がる緞帳、彼女はその緞帳を潜り抜けたり戻ってきたりするが、その軌跡は、照明の加減で視界から消えたり、現れたりと、非常に巧妙に仕掛けられていた。ジュリアード音楽院で、フォーサイスやポール・テイラーの作品を踊る機会があるとあって、寺山は昨年より大きく成長した様子が窺えた。

次の『Hole』はコンテンポラリー・ダンスの伊藤多恵の振付。公門美佳は、『さかな』とはまったく質の異なる硬質な動きをいともたやすく踊り、ダンサーとしての質の高さをみせた。久保佳子と清水健太の『黒鳥』は今回唯一の古典作品となった。
ここからは、参加したダンサーたちのコラボレーションによる共同作品で、昨年、Kバレエカンパニーを引退した榊原有佳子も参加してのアンサンブルとなった。今回のテーマでもあった作品『Distance』では、共同制作の部分が、若干消化不良のまま残されていて、少々まとまりに欠けているという印象が拭いきれない。それに比べると最後の公門美佳振付による『Je Chante』は、アンコール向けの軽めの作品ではあるものの、一貫した手法の中で、技術的にも質の高い若く美しいダンサーたちを生かし創作されていて、心地よく見ることができた。

全体として共通しているのは、いずれも優れたダンサーたちが、そつなく作品を踊りこなしていることであるが、今回のような企画公演の場合には、それがかえって一夜の夕べを単調なものにしているように感じる。ひとつところにすべてのダンサーたちが集中して、エネルギッシュな舞台を創ること、それこそ、独立したダンサーたちならではの企画意図なのではないだろうか。バレエダンサーたちが企画から制作まで行う、こうした試みはどこでもほとんどなされていないだけに(コンテンポラリーはあたりまえなのですが)大変貴重なものであるが、踊ることに集中できない環境ではやはり問題点も生じてくる。とはいえ、優れたダンサーたちの踊りを間近で見ることができるという状況は、バレエの普及にとっても貴重な機会となったことだろう。日本のバレエの環境を改善していくために、自らが積極的に動きかけ、果敢に挑戦をしていく彼女たちには、大きな拍手を贈りたい。

なお、榊原弘子は、8月13日に愛知県芸術劇場大ホールで開催される、<あいちダンス・フェスティバル「ダンス・コスモス」>にて『サタネラ』と深川秀夫振付の『グラズーノフ・スウィート』を踊る予定である。
(6月24日、名古屋市名東文化小劇場)
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