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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2005.01.10]
From Nagoya -名古屋-

●塚本洋子バレエ団 深川秀夫版『コッペリア』


国際的なバレエコンクールで、多数の入賞者を輩出してきている塚本洋子バレエ団が秋のバレエ公演を行った。 バレエ団の設立25周年を目前に控えた今年の演目は、深川秀夫版の『コッペリア』全幕。地元名古屋出身の深川秀夫は、越智インターナショナルバレエ時代の1965年に、 第2回ヴァルナ国際バレエコンクールで銅賞を受賞、80年に帰国してからは、フリーの舞踊家として、様々なバレエ団で振付を行い、数々の名作を生み出してきた。 今回の演目『コッペリア』は、こんな深川が最も得意とする楽しくコミカルな作品。 塚本洋子バレエ団の米沢唯が、この夏のヴァルナ国際バレエコンクール(ジュニア部門)で第1位を受賞しているが、そんな現在の同バレエ団にふさわしい演目であろう。

『コッペリア』は、全幕のバレエ作品には珍しく、コミカルで、演技も要求される作品だ。主役のスワニルダ役を演じたのは、塚本洋子バレエ団のプリマ・植村麻衣子。第1幕の冒頭で、フランツ役の大寺は、コッペリウス博士の屋敷にいる美少女コッペリアを気にしている様子を、また植村はそんな恋人に、はらはら、やきもきしているスワニルダになりきり、恋人どおしの駆け引きをコミカルに演じた。
植村も若くしてローザンヌ賞を受賞した実力派であるが、今回の舞台では従来のコケットリーに女らしさが加わり、深みのある表現で急激な成長をみせた。また相手役の大寺資二は、いまや深川作品になくてはならないダンサーとなっているが、深川の難しい振りをとても自然に演じ、振付家とダンサーの息のぴったりとあったところを見せていた。そしてこれら正統派の美男美女の主役2人に加え、深川自身がコッペリウス博士として登場。老人というよりも、粋でお洒落な深川のコッペリウスは、人間的な温かみを感じさせ、深みのある舞台にすることに成功していた。

深川版『コッペリア』では、ストーリーは全編を通して明確に表現されながらも、決して説明過多になりすぎることはなく、 物語は深川マジックともいえる動きの連鎖によって、作品の最後まで波にのって運ばれていくかのようだ。
ステップの多い、深川の振付を成功させることができるかどうかは、バレエ団のソリストたちの力にかかっているといってもよいだろう。 トップの後藤彩水をはじめ、米沢唯を含むバレエ団の次世代の若手ダンサー6名は、深川流の次から次に押し寄せる波のようなステップを、大変さを微塵も感じさせることなく、軽やかに楽しげに踊り続けた。
植村は、若くて弾けるような少女スワニルダと、コケティッシュで愛くるしい人形を演じ分け、全幕バレエ主演が初めてとは思えない出来栄えで、 頼もしい全幕デビューとなった。さらに多くの役柄に挑戦して、活躍の場を広げていって欲しいと思う。
(11月26日 愛知県芸術劇場大ホール所見)