ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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桜井 多佳子 text by Takako Sakurai 
[2004.10.10]
From Osaka -大阪-

望月則彦/演出・振付「トロイアの女たち」

 京都府立府民ホールアルティが主催する「京の舞踊作家シリーズ」。その第4弾として、望月則彦の新作「トロイアの女たち」が上演された。

 壮大なギリシャ悲劇をテーマにした「トロイアの女たち」(エウリピデス原作)の戯曲(サルトル版)をもとに演出。 ストーリーを追いながら、登場人物の心理描写もじっくりと見せていく。音楽は、チャイコフスキーなど様々な曲のコラージュ。 選曲と、その流れの良さに望月らしさを感じた。さらに、音楽にそっての場面展開、全体構成の隙のなさは、さすが経験豊富な演出・振付家である。

 オーディションで選ばれたというダンサーたちは、それぞれに熱演していた。世界一美しい妻であるヘレネを演じた中西孝子は、立ち居振る舞いに気を使い、気品と気丈さを見せていた。 アンドロマケ役の斎藤由佳も、その動作、視線にも身分の高さを漂わせ、息子とのやりとりではいつの世にも通じる母性を、しっとりと表した。 さらに息子を失う場面では、狂おしいほどの悲しみと怒りを表現した。いままでの斎藤とは全く違う表情。ダンサーとして一歩前進したように思える。 この2人の登場がギリシャ神話らしさを醸したといってもいいだろう。


 物語が複雑で、登場人物も多いので、説明調の場面が多くなってしまった感はある。たとえば、アンドレイ・クードリャ(タルテュビオス)の踊りを、もう少しじっくり見たかったという気もした。 振付に面白さを感じたのは女性群舞。ソロの踊りから、だんだん人数が増えていく、また同じ動作を少しずらしながら繰り返したり。 変化に富んだ動きが見事に音楽と合致していた。純粋にダンスとしても良く出来ているが、さらに、群舞から立ち昇るようなエネルギーには、 女たちの悲しみや怒りや強さなど、すべてが込められていて、それが時空を超えた叫びにも聞こえた。
(京都府立府民ホールアルティ。9月18,19日。19日を所見)