「堀内元 BALLET FUTURE 2024」でバレエとブルースの融合を目指す『セントルイス・ブルース』を発表する堀内元にきく「ジャズのリズムにバレエのステップは結構ハマる」

ワールドレポート/東京

香月 圭 text by Kei Kazuki

5月31日、東京・めぐろパーシモンホール 大ホールにて「堀内元 BALLET FUTURE 2024~バレエ『セントルイス・ブルース』by セントルイス・バレエ&フレンズ~」が開催される。ニューヨーク・シティ・バレエやブロードウェイでの華々しい活躍を経て、アメリカ中西部のセントルイス・バレエの芸術監督として24年目を迎えた堀内元が、往年のジャズの名曲「セントルイス・ブルース」をテーマにバレエ作品を新たに創作した。この新作は今年2月にセントルイス・バレエで世界初演され、観客からも好評をもって迎えられたという。5月末の日本公演では、剣幸が特別出演するほか、セントルイス・バレエのメンバーに加えてオーディションで選ばれた日本人ダンサーも舞台に登場する。この公演について、Dance Cube Web Magazine編集長の関口紘一とともに堀内元に話をきいた。セントルイス・バレエの今後の展望や、ジョージ・バランシンから薫陶を受けたニューヨーク・シティ・バレエ時代のエピソードも伺うことができた。

関口 堀内さんはバランシンのもとでニューヨーク・シティ・バレエにて活躍され、ダンサーとして世界中で踊って来られました。その後はセントルイス・バレエの芸術監督としてアメリカで活動しながら、吉田都さんとのコラボレーションなど日本でも公演を続けられてきましたね。昨秋、「堀内元 セントルイス・バレエ プロフェッショナル・トレーニング・プログラム・イン・東京」を実施されましたが、いかがでしたか。

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堀内元

堀内 自分の今の活動の拠点はセントルイスですが、バレエを志す日本の人たちにも自分の経験を伝えていきたいと思いはずっとありました。夏にセミナーを開催して教えるということを20年近く行ってきましたが、クラスだけ教えるよりも、私のバレエ団と一緒に舞台を経験していただくのがいいのではないかと思い、オーディションから始めたわけです。今回は1名だけですが、セントルイスに渡り、『眠れる森の美女』の全幕にも出演してもらいます(2024年4月に上演終了)。公演に参加する前に2週間ほど団員と一緒に練習するので、そういった体験が面白いのではないかなと思います。
セントルイス・バレエのトレーニング・プログラムは今年で4年目ですが、今年は14名ぐらいで来年は30名近くとなります。東京でもさらに広げられたらと思っています。
日本のバレエ教育は素晴らしく、コンクールもたくさんあり、目先の目標があるのはいいことだと思います。しかし、行き着くところはプロとして舞台で活躍できるという姿であるべきです。セントルイスで行っている『眠れる森の美女』などの古典作品やバランシン作品などのバレエ公演に参加して、生の演奏に合わせてお客様の前で舞台に踊ってみると、何かを感じ取ってくれるのではないかと思い、このような企画を始めました。

関口 日本では、習い事としてバレエを始めた子どもたちは発表会を経験していきますね。バレエをもっと本気でやってみたいと、コンクールを目指してプロへの道を模索していく子どもたちも増えています。アメリカでは舞台を支えるシステムはどのようになっていますか。

堀内 アメリカでは、我々を支えるサポーターの方たちがたくさんいらっしゃいます。公演の2 週間前には、支援してくださる方々が毎日のようにスタジオにリハーサルを見学にいらっしゃいます。このように支援者の方に現場を見ていただくことはすごく大切だと思います。彼らの中には「私はこの公演に1000ドル(約15万円)寄付します」という方や、年間を通して1万ドルぐらい払っていただく方もいらっしゃいます。バレエはお客様にチケットを払っていただいて公演を行うだけでは成立せず、企業や政府、州や市などの助成金と支援してくださる方々のご厚意でやっと成り立つものです。それを肌で感じ取っていただくのも、また違う経験になるのではないかと思っています。
私もニューヨーク・シティ・バレエ(NYCB)に在籍中、公演前に、劇場の一室で支援してくださる方々と一緒に食事をして、作品の内容のことを我々ダンサーが説明し、その後、皆さんに公演を見ていただいたり、リハーサルの合間にバックステージの方に来ていただいて、我々がウォームアップしているところを見学していただいたりしました。それで、こういう方たちに寄付していただくことで、バレエ公演が成り立っているんだなということが勉強になりました。そして現在、芸術監督やプロデューサーとしての立場になったときに、その経験が役に立っています。
バレエを育てていくためには、作品創作の現場のことだけを考えるのではなく、どういう方々がサポートしてくださっているか、お客様のためにどういう作品ができるか、といった観点を皆さんに伝えていかないと、真のプロフェッショナルといわれるバレエ団を作ることは、なかなか難しいのではないかと思います。

関口 今回、「セントルイス・ブルース」という曲を取り上げたのはなぜでしょうか。

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堀内 私が長年に渡り大変お世話になっている音楽評論家・安倍寧先生のご提案から始まりました。そのお話を受けまして私も、我々が今住んでいるセントルイスで生まれたヒット曲に合わせてバレエを作れば、お客様にも何かを感じ取っていただけるのではないかなと思いました。歌詞に「セントルイス・ブルース」という言葉が入っているのですが、これは本当に自分たちの曲なんだと、お客様が誇らしく感じていらっしゃるのが伝わってきて、舞台との一体感があり、客席で見ていても感動しました。彼らの祖父母なら誰もが知っているような時代の曲ですが、踊っているダンサーたちは、そのような歴史ある曲に関わることができたという喜びと、これを後世に伝えていくという誇りを感じていたようです。
『セントルイス・ブルース』は、セントルイスを題材にしたバレエで、そしてブルースとバレエの融合を目指した作品をお届けできればと思っております。この作品で国内のダンサーたちにも踊っていただきますので、日本とアメリカが融合した作品になればいいなと思います。

関口 今回の東京公演では、剣幸さんに歌っていただき、日本のミュージシャンの方々が演奏されますね。

堀内 ええ。剣さんには英語のオリジナルの歌詞に加えて、日本語でも歌っていただきます。そうすることによって、日本のお客様には歌詞の内容への理解が深まりますし、この曲が世に出たときに皆の心をどう揺さぶったのかという感情もお伝えできるのではないかと思います。

関口 剣幸さんとは初共演ですか。

堀内 剣さんとは同じ事務所なのですが、今回初めて舞台での共演がかなって嬉しいです。演劇プロデューサーだった故皆川一が、1990年新宿のシアター・アプルで「東京・ニューヨーク姉妹都市提携30周年記念公演 Dance Vol.1 GEN HORIUCHI & KYRA NICHOLS in "BALLET CAPSULE" with 10 dancers of the New York City Ballet」という公演をプロデュースしました。キーラ・ニコルズ、リンゼイ・フィッシャー、ウェンディ・ウェランなどニューヨーク・シティ・バレエのメンバーを12名ほど連れて来て、バランシンの『アポロ』『アレグロ・ブリランテ』『ダイヤモンド・パ・ド・ドゥ』とピーター・マーティンスの『レ・ジョンティロム』を上演したのです。その頃、剣幸さんは宝塚を退団したばかりでしたが、その当時から幾度もお目にかかっており、彼女の舞台も数多く拝見していました。

関口 クラシック・バレエとジャズの「クロスオーバーシリーズ」を堀内さんは手掛けてこられましたが、クラシックのダンサーがジャズを踊ることについて、どのような印象をお持ちですか。

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堀内元とセントルイス・バレエのダンサーたち© Kelly Pratt Photography

堀内 バレエのステップは、クラシック音楽で踊るので、アップテンポでどんどん進むようなイメージがありますが、ワルツの「ワン・ツー・スリー、ワン・ツー・スリー」というリズムで踊るダウンビートの振付もたくさんあります。ジャズの「ダンダン、ダダダン、ダダダダン、ダダダン」というリズムにバレエのステップが結構合うんですよ。僕自身もジャズにバレエを振り付けるのが好きで、今回の作曲家のToyaさん(徳家"Toya"敦)と創作を始めるときから「ジャズの曲だからといってジャズ的な動きはしないで、なるべくクラシック・バレエのステップを残していこう」と話していました。

香月 堀内さんは『キャッツ』などミュージカルの方にも進出されましたが、エンタテインメントの世界では、クラシック・バレエの基礎は役に立ったのでしょうか。

堀内 はい。どのジャンルを踊るにしても、クラシック・バレエがすべての基礎になっています。クラシック・バレエをしっかり勉強した人たちは、ブロードウェイでも活躍できますね。アメリカでは、皆バレエを習った上でジャズダンスやタップも習うという流れです。他にはコンテンポラリー、そしてリリカルといったジャンルもあります。セントルイスの私のバレエ学校には、生徒が400名いますが、12、13歳ぐらいまではバレエだけではなく、ジャズダンスやタップを同時進行で教えていきます。その後、バレエを真剣にやりたい子は少しずつバレエの方に比重が大きくなっていきます。ジャズダンスはアメリカで生まれたということもあって、続ける子が多いですね。アメリカのダンサーには、バレエもジャズダンスもしっかり踊り分ける柔軟性があります。今回の『セントルイス・ブルース』でも、皆、何の違和感もなくどんどんチャレンジしてくれたのはすごく良かったですね。東京公演では日本人キャストも入るので、彼らもうまく溶け込んでくれるといいなと願っています。

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セントルイス・バレエ外観

関口 堀内さんの公演を拝見していると、クラシックとジャズが絶妙にミックスされた音楽にダンサーたちが楽しそうに乗って、ジャズはバレエと親戚だったのではないかと思うぐらい、一体感が生まれるんですよね。

堀内 ありがとうございます。ジョージ・バランシンがガーシュウィンの音楽に振り付けた『フー・ケアーズ?』など、ジャズの曲に振り付けた作品はたくさんありますし、もちろん、ジェローム・ロビンズも然り、です。彼らの下でそれらの作品を踊ってきた自分からすると、ジャズの音楽に対しても全然物怖じなく、バレエの振りをどんどん付けていってしまいます。

関口 なるほど。ロビンズの振付も、動き自体を取ってみると特別なものはないのですが、音楽がダンサーの体に染み付いているように感じるようなことがありますね。

堀内 ニューヨーク・シティ・バレエに入ったその日から最初に叩き込まれるのは「とにかくメロディーは聞くな。カウントで踊れ」ということです。ドビュッシーの流れるような曲では「ワーン・エンド・ツー・エンド・スリー...」、ガーシュウィンでは「ワン・ツー・スリッ・フォー、ワン・エン(ド)・ツー・エン・スリー・エン・フォー...」、とメロディーを歌いながらリズムに合わせたカウントをとって覚えていきます。だから、ニューヨーク・シティ・バレエのダンサーたちは、どんなジャンルの音楽でも、カウントに合わせて踊っていくので、うまく対応できるのではないかなと思うんですよね。

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『セントルイス・ブルース』

関口 そういう教育なんですね! 今回の公演で上演されるバレエ作品は、堀内元さんが振り付けた『セントルイス・ブルース』のほかに、バランシンの『Valse Fantaisie』、ブライアン・イノス振付作品『In Reel Time』ですが、これらの二作品についてご紹介ください。

堀内 私達は「BALLET FUTURE」と題した公演を既に日本で2回開催しましたが、やはり自分のルーツはバランシンにあるので、それを自分のバレエ団であるセントルイス・バレエのレパートリーにもたくさん取り入れています。来日公演でも、バランシンの作品が必要だと思い、少人数でも成り立つ作品として、2010年の「堀内元 バレエ USA」、2015 年と2018年の「吉田都×堀内元 Ballet for the Future」で上演した『Valse Fantaisie』を選びました。この作品は竹内菜那子さん、上村崇人さん(セントルイス・バレエ ゲストアーティスト)といった日本国内で活躍するダンサーたちとセントルイス・バレエのダンサーとのコラボレーションという形にしました。
ブライアン・イノスの『In Reel Time』は、現在のアメリカのコンテンポラリー・バレエを代表する作品だと思います。ブライアンは元々ハバード・ストリート・ダンス・シカゴ(Hubbard Street Dance Chicago)というコンテンポラリーのダンス・カンパニーで踊っていました。セントルイス・バレエにも既に3作品、作ってもらっていて、カンパニーのダンサーたちも彼の作品を踊るのに慣れています。本作は去年創ってもらった彼の最新作で、2月にも再演しました。今、我々が踊っているコンテンポラリーのスタイルっていうものを日本の皆様にお見せできるのではないかと思い、この作品を選びました。今回はセントルイス・バレエのダンサーたちで本作を踊ります。

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『セントルイス・ブルース』

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『In Reel Time』(ブライアン・イノス振付)

関口 セントルイス・バレエの公演は活況を呈していらっしゃるそうですが、カンパニーとしては、今後どのような展開を考えておられますか。

堀内 24年前セントルイスに赴いた当初は、バランシンの作品を中心にやっていこうと思っていました。もちろん今もその方針で運営しているのですが、それと並行して、やはりクラシックの全幕作品も伝えていきたいという思いもあったので、年間5シリーズのうち、2シリーズは古典物を上演しています。昨年10月に『ジゼル』、そして今年の4月末には『眠れる森の美女』と続きます。古典作品と並んで、バランシンや自分の作品も加えてレパートリーを作ってきました。そのおかげで観客が伸びてきたと思います。もし、バランシン作品だけだったら、ここまでバレエ団が大きく伸びたかどうか、大いに疑問視するところです。「今年も『眠れる森の美女』を上演します」と告知すると、チケットの売り上げも大きいですね。去年の『白鳥の湖』も4回公演がありましたが、毎回ほぼ満席でした。
古典作品もすごく大切ですが、私自身が大いに共鳴するバランシンや、来年上演するジェローム・ロビンズの作品も大事にしています。ここ1、2年はジャズとの融合というテーマでしたが、来シーズンは1年間を通してミュージカルとバレエの融合というテーマで、ミュージカルに関わった振付家の作品を特集することになりました。10月はバランシンの『セレナーデ』と『ウェスタン・シンフォニー』とクリストファー・ウィールドンの代表作『アフター・ザ・レイン』のトリプルビルです。12月はもちろん、クラシックの『くるみ割り人形』を上演し、2月はミュージカルも手がけている、ニューヨーク・シティ・バレエの常任振付家、ジャスティン・ペックのデビュー作『In Creases』をセントルイスで初演します。そして、バランシン作品の主役を努めたジャック・ダンボワーズの息子のクリストファー・ダンボワーズ(振付家。ニューヨーク・シティ・バレエの元プリンシパル)がコール・ポーターとアーヴィング・バーリンによるミュージカル・ナンバーに振り付けた作品を生バンドの演奏付きで上演するという計画もあります。
2025年の4月は「Feels Like Broadway」(気分はブロードウェイ)と題して、ミュージカル・テイストのバレエの三部作のプログラムを上演します。『ウエスト・サイド・ストーリー』の元になったといわれるロビンズの『インタープレイ』という作品のセントルイス初演と、2002年にニューヨーク・シティ・バレエに振り付けたクリストファー・ウィールドンのバレエ『Carousel〈A Dance〉』(回転木馬)、それからバランシンがガーシュウィンの曲に振り付けた『フー・ケアーズ?』です。私自身、ミュージカルもずっと踊ってきたので、他のジャンルとコラボレーションしていくのが一番自分らしいかな、という気がします。再来年ぐらいに再び古典の全幕物をやるなど、今後もいろいろチャレンジできたらと思っています。

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セントルイス・バレエ『眠れる森の美女』

関口 ミュージカルはアメリカの文化の中核と言っても過言ではなく、ミュージカルに題材を取ったバレエは、心が躍るように感じて楽しいですね。

堀内 ミュージカルは、お客さんの目線で作る作品が多いと思います。この題材を取り上げればきっとお客さんが見に来てくれるのではないかと、常にニーズを考えて作っている。やはりバレエもそうあるべきだと思います。振付家の方々は、自分が気に入った曲で自分の思想を表現するために作品を作り、それを見たいと思うお客さんを呼び寄せます。そのやり方は評価されるべき部分もあるとは思いますが、結局はお客さんがいらっしゃってこそ、芸術は成り立つわけですから。私自身はお客様のニーズも考えて作品を作りたいと思っています。作品作りだけではなく、プログラムの組み方などにも目配りをしていきたいと思っています。

関口 クリストファー・ウィールドンは、いろんなジャンル、メキシコをテーマにした『赤い薔薇ソースの伝説』や『不思議の国のアリス』みたいな思い切った作品など、幅広い題材で自由に作っていますね。

堀内 そうですね。彼もローザンヌ国際バレエコンクールでローザンヌ賞を受賞して、お互いに同様な経験を積んできた仲間なので、僕たちはそれなりに仲がいいです。彼は演出家・振付家の方にどんどん向かって行きましたが。マイケル・ジャクソンを描いたミュージカル『MJ』の演出・振付でも注目されています。
ジャスティン・ペックもニューヨーク・シティ・バレエだけではなく、我々のような中規模のバレエ団や地方の小さいバレエ団にも自分の作品をレパートリーに持ってもらいたいという思いがすごく強い方です。僕のところにも連絡が来て「元、僕の作品をやってくれないか」と頼まれることがあります。こちらの方がお願いする立場ですから「ぜひやらせてください」とお返事しています。現在のニューヨーク・シティ・バレエを担う振付家の作品をこれからも積極的に上演していきたいと思っています。

香月 ニューヨーク・シティ・バレエでバランシンに実際に指導を受けて、どのようなことが印象に残っていますか。

堀内 小学生の頃から「ジョージ・バランシン、ジェローム・ロビンズはすごい!」と父(堀内完)からずっと言われて育ったので、ニューヨークに留学して、まさに雲の上の人たちの目の前に自分がいるということが不思議で、こんなところにいていいのだろうかという感じはありました。
ジョージ・バランシンが初めて僕にソロを創ってくれたのは、『ペルセフォネ』(音楽:ストラヴィンスキー、1982年)という作品で、マーキュリーという使者の役でした。その頃は、すでにバランシンの体調があまり良くなかったので、毎度のリハーサルでも椅子に腰掛けていました。傍らにアシスタントのジョン・タラスを置いて、こういうふうに動いてくれと指示を出し、ジョンが私と一緒に動いてお手本を見せてくれました。相手役が、ヴェラ・ゾリーナという方で、ニューヨーク・シティ・バレエでも踊り、映画の都ハリウッドでも活躍したバランシンの3番目の奥様でした。彼の元奥様と自分が一緒に踊ること自体、信じられなかったです。そのときの一番おかしかった出来事は、彼女との絡みのシーンのリハーサルで一緒に踊っていたときのことです。何かうまくいかなかったりすると、彼女は「ふん、なんで私がこんな少年と踊らなくちゃいけないの!」という感じだったのだと思います。バレエ団では皆、バランシンのことを「ミスターB」「ミスター・バランシン」と呼んでいましたが、ヴェラさんだけは、"George, George, come over here!"(ジョージ、こっちに来なさい!)とバランシンのことを名前で呼び捨てにしていましたね(笑)。そういった些細なことが印象に残っています。名匠の指導を受けられて本当に良かったと思います。

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ジョージ・バランシン振付『PERSÉPHONE(ペルセフォネ)』堀内元、ヴェラ・ゾリーナ(1982年)©Martha Swope

香月 セントルイス・バレエのエグゼクティブ&アーティスティック・ディレクターのお仕事の傍ら、舞台にもご出演されていらっしゃいますが、どのように自己管理なさっていますか。

堀内 アメリカに渡って44年になりますが、午前中は自分のトレーニングとしてバレエのレッスンをするということを決めています。どれほど重要な案件があろうとも、私のミーティングは1時以降にしてもらっています。カンパニークラスを教えていますが、それも土曜日の午後です。

香月 最後に、公演を楽しみにしているお客様へメッセージをお願いします。

堀内 セントルイス・バレエの様々なレパートリーをオープンに楽しんでいただけたらと思います。セントルイス・バレエのダンサーたちは、これから伸び代が期待できる若い世代です。ニューヨーク・シティ・バレエ仕込みのカウントで踊ることを彼らに教え込みましたので、音楽を体現するようなダンサーたちの抜群のリズム感を皆さんに感じ取っていただけたら幸いです。

堀内元 BALLET FUTURE 2024
~バレエ『セントルイス・ブルース』by セントルイス・バレエ&フレンズ~

2024年5月31日(金)18:30開演
めぐろパーシモンホール 大ホール

プログラム
第1部 <バレエ>
『Valse Fantaisie』
振付:ジョージ・バランシン
作曲:ミハイル・グリンカ(「幻想的ワルツ」)
出演:竹内 菜那子/上村 崇人
Abby Hannuksela/Lauren Kot/寺澤 梨花/Gwen Vandenhoek

『In Reel Time』

振付:ブライアン・イノス
作曲:フィリップ・ダニエル他
出演:Lori Wilson/Abby Hannuksela/Lauren Kot/Olivia Cornelius/
Zoe Middleton/Gwen Vandenhoek/Michael Burke/Ethan Maszer

第2部
『Toya & Friends On Stage』
徳家"Toya"敦(Piano,Keybord)/南 明男(Guitar)/佐藤 邦治(Drums)
金森 佳朗(Bass)/山崎 ユリエ(Alto Sax)

<バレエ×ジャズ/ブルース>

バレエ『セントルイス・ブルース』(日本初演)
振付:堀内 元
作曲・編曲・音楽監督:徳家"Toya"敦
演奏:Toya & Friends
「セントルイス・ブルース」詞・曲:W.C.Handy
歌唱:剣 幸
出演:
Zoe Middleton /Charles Cronenwett
Olivia Cornelius/堀内 元
Lori Wilson/Michael Burke
Lauren Kot/Ethan Maszer
Abby Hannuksela/Gwen Vandenhoek/上村 崇人/小山 憲
綾瀬華穂/池田穂乃香/岡野春菜/佐々木梨音
塩田みなみ/菅原梅衣/堀川七菜/松宮里々子

公式Web https://www.balletfuture.com/

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