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飯島望未(ヒューストン・バレエ/プリンシパルダンサー)=インタビュー

ワールドレポート/東京

インタビュー=関口紘一

恵まれたスタイルと美しい容姿を活かしてモデルやシャネルのアンバサダーとしても活躍し、バレエの普及に努めている飯島望未。アメリカとヨーロッパのバレエ団で踊ったキャリアがあり、今日的なバレリーナとして注目を集めている。新型コロナ感染拡大以前ではあったが、これからの「のぞみ」を聞いた。

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© Chacott

----飯島さんはフォーサイスがお好きだと伺いました。フォーサイス作品とはどこで出会われたのですか。

飯島 最初は18歳くらいの時にヒューストン・バレエで『精密の不安定なスリル』を踊らせていただいて、初めて出会いました。その後に、『イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド』のシルヴィ・ギエムが踊ったパートを踊らせていただきました。私は一度、チューリッヒ・バレエに行きましたが、そこでもフォーサイス作品をいくつか習いましたし、映像化された舞台もよく観ていました。

----シルヴィ・ギエムが『イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド』を踊った時は、すごい衝撃を受けました。これで20世紀のバレリーナのイメージが変わった、と思いました。飯島さんのように若いダンサーの方はいかがですか。

飯島 最近はフォーサイスに似た振付家の方も出てきましたので、すごく新しいという感じはなくなりましたが、やはり、踊るのはたいへん難しいです。身体のコーディネーションがクラシック・バレエとは全然違いますし、フィジカル的、体力的にも厳しいです。『イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド』は特にたいへんなので吐き気をもよおすくらいになりながら踊っていました。フォーサイスはスタイルが確立されているだけに、好き勝手には踊れません。観ていると自由自在に踊っているようにも見えますが、全くそうではなく、難しかったです。解釈も難しいですし。フォーサイスのスタイルに慣れるまでには、とても時間がかかりました。

----フォーサイスが直接指導されたのですか。

飯島 そうです。オーディションはキャサリン・ベネットという財団の方が行い、主役に選んでくださり、その後、フォーサイスがワークショップなどをして、直接指導してくださいました。踊るのは厳しかったですが、念願がかない踊ることができたので、とても素晴らしい体験でした。でもアメリカではこの二つの作品以外はあまり上演されることがないようです。

----2016年にチューリッヒ・バレエにファーストソリストとして移籍されていますが、どうしてですか。

飯島 コンテンポラリー・ダンスが好きでしたので、もっと踊りたいと思い、ちょっと冒険しようという気持ちでした。また、ヒューストン・バレエで恵まれた環境にいて、もっと新しい自分を発見したいと思い、ヨーロッパのカンパニーに挑戦したのです。チューリッヒ・バレエが、マルコ・ゲッケなどのコアな作品も上演していましたので、思い切って移りました。

----ヒューストン・バレエにいてヨーロッパのバレエ団の情報はどんどん入ってくるのですか。

飯島 ヒューストンでは毎年、「ダンス・サラダ」というヨーロッパのダンサーたちが集まって開催するガラ公演があります。そこでマルコ・ゲッケなどのヨーロッパの振付家の作品を見る機会がありました。「凄いな」と思い、そこからヨーロッパのコンテンポラリー・ダンスに興味を持ち、挑戦してみようかな、と思いました。

----コンテンポラリー・ダンスは振付家と直接向き合って作っていくことが多いので、ダンサーにとってもいい経験になりますね。
ヒューストン・バレエの芸術監督はスタントン・ウエルチでしたか。

飯島 私がヒューストン・バレエに入団した時からウエルチ監督でした。おそらく、ヒューストン・バレエの監督になられて、20年近くになるのではないでしょうか。

----ウエルチ監督は、昨年、飯島さんがオーチャード・バレエ・ガラでバルコニーのシーンを踊られた『ロミオとジュリエット』を振付けていますね。
ヒューストン・バレエのレパートリーはどのような感じですか。

飯島 ウエルチ監督の作品が多いです。古典バレエが中心ですが、ケネス・マクミラン作品も上演します。次は『マイヤリング』が予定されています。また、ビントレーの『アラジン』も上演予定です。ヒューストン・バレエでは『ラ・バヤデール』『白鳥の湖』『シンデレラ』もウエルチ・ヴァージョンで上演されています。『シンデレラ』は少し変わっていて、主人公がトムボーイ(お転婆娘の意/同名の映画も)みたいにショートカットでボーイッシュに描かれています。そして王子とは結ばれないで、王子の友人と結婚します。ちょっと「シンデレラ・ストーリー」ではないみたいですけれど、面白いいい作品です。四季の精がシンデレラを送り出すシーンは、ゴーストが現れます。シンデレラのお母さんがお墓から出てきて、シンデレラを綺麗にして舞踏会に送り出す、そういうストーリーになっています。音楽はプロコフィエフで曲調に合わせて少しコメディ風になっています。

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© Chacott

----ウエルチは『マダム・バタフライ』も振付けていますね。

飯島 はい、ずいぶん以前に振付けていて、とても評価が高く、アメリカではいろいろなカンパニーで上演されています。

----ヒューストン・バレエは近年、オーストラリアでも公演しましたね。

飯島 ええ、2016年に『ロミオとジュリエット』を上演しました。私は2015年に辞めて2017年にヒューストンに戻ったので、その時は踊っていません。ウエルチ作品はオーストラリア・バレエのレパートリーに入っていて、この間『シルヴィア』を上演して近藤亜香さんも踊っていました。

----そうでしたね、日本人にもわりと縁のある振付家ですね。

飯島 ウエルチ監督は日本人が好きみたいです。カンパニーには加治屋百合子さんをはじめ若手を含め日本人が7人います。
ウエルチ監督は新作もよく作っていますし、キリアンとかエックマンなどのコンテンポラリー作品もトリプルビルで上演します。ヒューストン・バレエはレパートリーがいいと言われています。他のアメリカのカンパニーに比べてもダイバーシティな感じです。

----ヒューストン・バレエに行かれたのは、どういうご縁でしたか。

飯島 ユース・アメリカ・グランプリ(YAGP)で、スカラシップをいただいたのがきっかけです。YAGPは"みせる"側面も強く、ローザンヌ国際バレエコンクールとはスタイルというか色は違いますね。

----アメリカのバレエはフィジカルな面を強調していると思いますが、日本からいらした時は気になりませんでしたか。

飯島 ヒューストン・バレエはテクニックの強い人が多くて、私も弱い方ではなかったのですが、圧倒されるようなこともありました。ただヒューストンは監督が演技できる人が好きなので、アーティスティックな面もとても要求されます。ですからバレエ団が、マクミラン作品などを上演すると評価してくださる人も多いです。

----飯島さんはヒューストン・バレエではほとんどのウエルチ作品を踊られていると思いますが、そうした活動とは別に、何かやってみたい公演とかはありませんか。

飯島 将来的には、日本のバレエに貢献していきたいな、と思っていますので何かできることがあればやってみたいです。まず、自分でどういうことができるか、よく考えなければならないですね。
ヒューストンは石油が出るので裕福な方も多く、アートにも長けていて、バレエ団にもスポンサーがたくさんついていて、とても恵まれています。ヒューストン・バレエのような素晴らしい環境で踊らせていただいているので、もっといろいろな人にもご覧いただきたいですし、いつか何か試みたいと思います。

----日本のバレエ界はヨーロッパの方を向いていることが多く、ウエルチ監督作品はもちろんアメリカのいい作品が日本にはあまり紹介されません。ニューヨーク・シティ・バレエ(NYCB)やアメリカン・バレエ・シアターの来日公演も少なくなりました。ダンサーなどからニューヨークに新しくいい振付家がたくさんいると聞きますが、アメリカのバレエの情報がなかなか日本に入ってきません。今では唯一、飯島さんも出演されている堀内元さんの公演がアメリカのバレエの窓口と言ってもいいと思います。飯島さんは、堀内元さんの作品は何を踊られましたか。

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© Hidemi Seto

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© Hidemi Seto

飯島 2015年に『ラ・ヴィ』という作品を踊りました。吉田都さんとご一緒でした。また、その時の公演では、バランシン作品も踊りました。

----ダンサーとしての堀内さんをどのように見ていますか。

飯島 ずーっと変わらずパワフルでいらっしゃいます。私がご一緒した時は既に50歳位でいらしたと思いますが、ピルエットは誰よりも多く回っていました。ストイックでもあります。そして何より、バレエダンサーである前にすごく人間力のある方だな、と思います。間近で見させてもらうととても勉強になります。また、堀内元さんの作品は、NYCBで培われた音楽性がとても豊かで、振付も流れる感じで、踊っていてもとても楽しいです。特に、実際に舞台で踊るとリハーサルの数倍の楽しさがあります。日本のお客さまにもご覧いただき、バレエの楽しみや見方なども変わっていただければと思います。

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© Hidemi Seto

----飯島さんはシャネルのアンバサダーも務めていらっしゃいますね。主にどういうことをなさるのですか。

飯島 私は主にコスメやスキンケアのプロダクトのアンバサダーとして、商品のプロモーションのために撮影をしたり、様々なイベントの協力をしています。

----シャネルはバレエ・リュスにもゆかりが深かったですからね。

飯島 そうですね、今もパリ・オペラ座バレエの衣装を作っています。私がシャネルに関わっているのも、もっとバレエを世界中で広めていきたいという考えからでもあります。

----飯島さんはイラストも描かれてプロ級の腕前だとお聞きました。バレエ以外のこと、あるいは振付とかに興味をお持ちですか。

飯島 イラストは趣味でやっています。振付はいつか挑戦してみたいなとは思っています。

----趣味のお話が出たので、お休みの時などは何をされていますか。

飯島 お休みの時は、読書をしたり、DVDを観たり、違うジャンルの方とお会いしたりと、割と芸のこやしではないですけれど、そのようになることをしていることが多いでしょうか。読書は、川端康成や安部公房なども読みます。

----川端康成はクラシック・バレエに関心を持っていて、映画化された『舞姫』は彼の小説ですね。そのほかにもバレエ・ダンサーを育てようとサポートをしていました。

飯島 バレエとの所縁も深い作家ですね。その時代に素敵ですね。

----ヒューストン・バレエではダンサーが振付を発表することはありますか。

飯島 あります。コレオグラフィック・ワークショップと言って、やりたいという人が何人か集まって作品を作ってパフォーマンスします。確か2年に1回くらいありますけれど、私はまだ手をあげていません。

----ぜひ、挑戦してください。このあとはヒューストン・バレエでは何を踊る予定ですか。

飯島 『眠れる森の美女』でオーロラのデビューです。頑張ります。それから『ロミオとジュリエット』も踊る予定です。

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(2020年1月11日インタビュー)

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