映画『パリ・オペラ座ダンスの饗宴』が3月20日より公開される予定

ワールドレポート/東京

関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi

パリ・オペラ座バレエ団の舞台がスクリーンによみがえる!映画『パリ・オペラ座ダンスの饗宴』、バランシン『夏の夜の夢』、『ミルピエ/ロビンズ/バランシン』が、順次、各地の映画館で上映されることになったのは既報の通り(https://www.chacott-jp.com/news/worldreport/tokyo/detail016152.html)。今回、3月20日の公開に合わせて1回だけ『パリ・オペラ座ダンスの饗宴』の試写が行われたので、その内容をご紹介しよう。

『パリ・オペラ座ダンスの饗宴』は、「デフィレ」『エチュード』『くるみ割り人形』ハイライトという3演目が収録されている。まず、オペラ座バレエ団のバレエの伝統をダンサーたちが気品あるセレモニーによって表す「デフィレ」から始まる。パリ・オペラ座バレエ学校の生徒100人とオペラ座のダンサー154人が一堂に会し、整然とした形状を持って舞台上を行進してその誇りを表す。パリ・オペラ座バレエ団らしく、華やかでありながら荘厳な雰囲気が漂った。

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「デフィレ」© Paris Opera Ballet

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『エチュード』© Paris Opera Ballet

『エチュード』はハロルド・ランダー振付、音楽はカール・チェルニー、クヌドーゲ・リサーゲル。クラシック・バレエのテクニックにより、ギリシャ文化以来ヨーロッパを中心に継承され、音楽とともに発達してきた身体が表す美を、さまざまな形とその組み合わせによって見せるもの。ドロテ・ジルベール、カール・パケット、ジョシュア・オファルトという三人のエトワールがプリンシパル役を踊り、実力の高さを示した。ジルベールを中心に、パケットとオファルトが配されて構成され、もちろんアンサンブルの美しさもあってこそではあるが、やはり、三人のエトワールの技巧が光り、とりわけジルベールがバランスの難しい難技を軽くこなし、観客を魅了していた。こうした舞台だから音楽と動きがぴったり過ぎると言っては言い過ぎかもしれないが、バランシンからフォーサイスまで見ている今日の観客からみれば、やや物足りなさがなくもなかったが、そこはさすがにパリ・オペラ座ダンサーらしく、フランス流のエレガンスでこころを癒すかのような舞台だった。

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『エチュード』© Paris Opera Ballet

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『エチュード』© Paris Opera Ballet

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『くるみ割り人形』© Paris Opera Ballet

ルドルフ・ヌレエフ版『くるみ割り人形』のハイライトも興味深かった。現役時代には、舞台の袖に控える時から、獲物を狙う猛獣のように目標を定め、出番とともに猛烈に飛び出し、圧倒的なエネルギーを沸騰させ踊ることから、"黒豹"とあだ名されたルドルフ・ヌレエフ。その彼の振付らしく、とにかく、舞台に活力をみなぎらせること、そこに注力したヴァージョンだった。宮廷風に気取ったところは全くなく、どこかロシアの地方都市の裕福な一家のクリスマスといったような雰囲気が感じられた。
第一幕では子供たちが激しく動き暴れまわり、親たちは制止するのに手を焼く。群舞は、仲間たちと輪になって踊る民俗舞踊のラインとクラシック・バレエの動きを組み合わせたかのようにも見えた。ちょっと雑多な感じもあるが、渦を巻くようにエネルギーが溢れ出ていた。第二幕のディヴェルティスマンも自在な発想で捻って見せており、見所が多くいたるところに踊る楽しさが詰め込まれている。
チャイコフスキーの『くるみ割り人形』は比類ない美しいメロディの名曲で、子供たちのその時にしか持つことのできない無限に広がる空想と共振する。すると振付家たちも自身の子供時代がよみがえってくるのだろうか。ルドルフ・ヌレエフも自身の幼い頃のクリスマスに思いを馳せて、この『くるみ割り人形』を振付けたのかもしれない。

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『くるみ割り人形』© Paris Opera Ballet

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『くるみ割り人形』© Paris Opera Ballet

公開情報 https://www.culture-ville.jp/parisoperaballetcinema

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