ボリス・エイフマンが21年ぶりに来日『ロダン〜魂を捧げた幻想』と『アンナ・カレーニナ』を上演する
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関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi
ボリス・エイフマン率いるエイフマン・バレエが21年ぶりに来日し、琵琶湖ホールと静岡市のグランシップ 中ホール・大地での公演を終え、東京公演に向けてロシア大使館で記者会見を開いた。東京公演では『ロダン〜魂を捧げた幻想』(7月18、19日)と『アンナ・カレーニナ』(20日、21日)が東京文化会館で上演される。
記者会見の登壇者は、ボリス・エイフマン芸術監督、オレグ・ガブィシェフ(ロダン役)リューボフィ・アンドレーエワ(カミーユ・クローデル役)リリア・リシュク(ローズ・ブーレ役)の3名だった。エイフマンは先行公演には同道せず、記者会見当日に成田に着き会場に駆けつけた。そのためか当初は少し疲労の色を感じさせたが、進行するにつれて持ち前の情熱が目覚めたのだろうか、エネルギッシュに熱弁を振るった。
ボリス・エイフマン© Hidemi Seto
リューボフィ・アンドレーエワ © Hidemi Seto
エイフマン・バレエは当時はレニングラード・バレエ・シアターだったが、1990年に初来日しその後2年毎に98年まで5回来日公演を行った。その間に『巨匠とマルガリータ』『白痴』『チャイコフスキー』『カラマーゾフ』『赤いジゼル』他多くの話題作を上演した。しかし、エイフマンが海外公演を行うようになった1990年当時のロシアは、未だペレストロイカが提唱された激動の時代だった・・・。そして21年ぶりの日本公演という時の流れと大きな変遷を、エイフマンは成田から記者会見会場に向かう車の中で感慨深く思った、とまず冒頭のあいさつで述べた。そして「日本に帰ってきたのは、当時とは全く異なった「ロシアの伝統的バレエと現代的心理バレエを融合した」作品を上演する新しいカンパニーと思ってい欲しい、と力説した。
エイフマン・バレエのソリストはダンサーであると同時に、みんな俳優(アクター)でもあるという。その一人、カミーユ・クローデル役を踊るリューボフィ・アンドレーワは「私は今回が初来日なので、最初は少し不安もあったが、私の役柄をたいへんよく理解していただけた。観客の皆様の心を動かすことができたと思います」。エイフマンとの出会いは「『赤いジゼル』を見て衝撃を受けたからだ」という。
ロダン役のオレグ・ガブィシェフは、「ノボシビルスク・バレエで『くるみ割り人形』などの古典バレエを踊っていたが、エイフマンのアーティストが完全燃焼している世界に思い切って飛び込んだ。『ロダン』は初演から踊っている。動きはすべて無意識でできるので、感情の表現に集中していっそう深めていきたい」。
ロダンの妻、ローズ・ブーレ役を踊るリリア・リシュクは「私が踊るのは犠牲の愛。ロダンはローズ・ブーレからもインスピレーションを受けているので見て欲しい。私はワガノワ・バレエ・アカデミー出身で、マリインスキー劇場で踊るのが夢だったが、エイフマンのカリスマ性に魅かれて入団した」と語った。
リリア・リシュク © Hidemi Seto
オレグ・ガブィシェフ © Hidemi Seto
今回は『ロダン〜魂を捧げた幻想』と『アンナ・カレーニナ』という2演目を上演する。『アンナ・カレーニナ』は全編チャイコフスキーの音楽を使用しているが、『ロダン〜魂を捧げた幻想』はラヴェル、サン=サーンス、マスネ、ドビュッシー、サティなどの曲で構成している。
形は異なるがどちらも俗にいう"三角関係"を描いたバレエである。ロダンは実在の芸術家で、実際、作品も多く残されている。カミーユ・クローデルとの凄絶な恋愛と芸術家としての創作に関わる確執が、強烈な感情とともに絡み合い、どんな造型を舞台の上に見せてくれるのか。また、『アンナ・カレーニナ』はいうまでもなくレフ・トルストイの同名の長編小説を原作とした架空の物語である。そしてロシアが近代化に向けて歩み始めた激越な時代の中で、典型的な女性像として描き出されている。アンナは高級官僚の夫カレーニンから、裕福な伯爵ヴロンスキーを愛するようになる。ここではロシア社会と愛に生き抜こうとした一人の女性の鮮烈な感情のドラマが展開されるだろう。
公式サイト
https://www.japanarts.co.jp/eifman2019/
公演情報
https://www.chacott-jp.com/news/stage/information/detail011216.html
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