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「死が訪れる前のこだま」を基にウィーランのダンス、チャイルズの振付、ラングの音楽が表した舞台、"The Day"

ワールドレポート/パリ

三光 洋 Text by Hiroshi Sanko

Espace Cardin エスパス・カルダン劇場

"The Day" Lucinda CHILDS 『ザ・デイ』ルシンダ・チャイルズ:振付

左奥のやや高い位置にチェロを手にしてマヤ・バイザーが座り、右手の空間を中心にウェンディ・ウィーランが踊る。後半の第二部になると、この位置関係が反対になった。
ダンサー一人にチェリスト一人だけが舞台に登場するこの作品は第1部『ザ・デイ(あの日)」、第2部「ワールド・トゥ・カム(来るべき世界)」の二部から構成されている。題名の「ザ・デイ(あの日)」は、イスラム派によりアメリカが襲われた2001年9月11日を指す。作曲を担当したデイヴィッド・ラングはニューヨーカーで、当日、幼い子供たちといっしょにツインタワーに飛行機が突っ込み、建物が崩壊するのを目撃していた。

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© Nils Schlebusch

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© Nils Schlebusch

第1部では死が訪れる前のこだま(反響)として日常生活の集積による人生が描かれている。ラングはGoogleに「I remember the day, that I...」(私が・・・・あの日を覚えている)と打ち込み、その解答から約三百の文を選択し、アルファベット順に並べた。「私は職場を去った」「ウイルスに罹った」「その日にすべてが私には明らかになった」といった。私たちの日常生活を反映している文はマヤ・バイザーとウェンディ・ウィーランによってあらかじめ録音され、6秒ごとに舞台に流れた。ラングの音楽には旋律は一つしかなく、それがさまざまな調で繰り返さるとともに、事前に録音されたチェロの音とも重ね合わせられた。第1部終了後、一呼吸置いてはじまる第2部には台詞はなく、ダンサーの動きそのものもより抽象的だった。

1985年にニューヨーク・シティ・バレエ団に入団して30年間踊った元プリンシパルで、NYCB退団後も独自のダンスを踊り続けているウェンディ・ウィーランが振付を依頼した相手はルシンダ・チャイルズだった。チャイルズは1976年にアヴィニョン演劇祭で初演されたフィリップ・グラス作曲、ロバート・ウイルソン演出の『浜辺のアインシュタイン』(2012年4月の記事をご覧ください。https://www.chacott-jp.com/news/worldreport/paris/detail004602.html)において振付を担当し、自ら踊っている。ミニマルと呼ばれる音楽は単純なモチーフが延々と繰り返されるのが特徴だが、この形式に慣れたチャイルズはラングの楽譜をていねいに聴き込んだ。

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ウェンディ・ウィーランはすでに52歳(1967年生)だが、年齢を全く感じさせない、実にしなやかなゆったりした動きを見せた。時に両手で操るひもを使うかと思うと、棒を手にした。ウィーランの身体からは柔らかなエネルギーが音と一体となって舞台に広がっていった。
前半は白、後半は黒という衣装もセンスが良く、爆発音をはじめとする効果音や黒白ビデオの映写も効果的で、音と身体の対話する一時間はあっという間に過ぎ去った。
振付、衣装、照明、ダンス、音楽演奏をいずれも女性が手掛けた舞台からは、優雅な装いと動きの背後に死者への鎮魂がそれとなく感じられた。
(2020年1月24日 エスパス・カルダン劇場)

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© Nils Schlebusch

『The Day』
振付 ルシンダ・チャイルズ
音楽・台詞 デイヴィッド・ラング
装置 サラ・ブラウン
音響デザイン デイヴ・クック
プロジェクション ジョシュア・ヒッガソン
照明 ナターシャ・カッツ
衣装 カレン・ヤング
ダンサー ウェンディ・ウィーラン
チェロ マヤ・バイザー

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