さまざまなタイプのバレエ作品から見どころをピックアップ、法村圭緒の作品紹介付き「バレエをもっと知ろう」
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ワールドレポート/大阪・名古屋
すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna
法村友井バレエ団
「バレエをもっと知ろう」法村圭緒、ほか:振付

撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)
ラストの『眠れる森の美女』第3幕のオーロラ姫は、今年4月の東京新聞主催第83回全国舞踊コンクール・バレエ第一部で1位を獲得した佐野光里が踊るなど、若手ダンサー達の活躍も目立った舞台。
法村友井バレエ団は、毎年6月ごろに尼崎市総合文化センターとの共催で、あましんアルカイックホール大ホールで公演を行って来ていたが、このホールは、今年4月1日から耐震化等工事のため休館している(ただ、昨秋に競争入札の公告が行われたが、参加表明者より辞退届が提出され、参加資格を有する事業者がいなくなったため、総合評価一般競争入札は中止。今後の見通しはまだ立っていない様子だ)。そのため、今回は、隣のあましんアルカイックホール・オクトでの開催となった。大ホールより小さな会場となるが、ダンサーの息使いが感じられる大きさ、こちらだからこその魅力が感じられる公演となった。
いわゆるコンサート形式の公演だが、単に作品を並べたというだけではない。プログラム冊子では、それぞれの演目にテーマの漢字一文字が添えられ、公演中には、演目の前に影アナの形で、法村圭緒によるユーモアを交えつつ "バレエをもっと知る" ために有益な内容での語りが入った。テーマの漢字一文字とともに、各演目を振り返りたい。

『タリスマン』よりグラン・パ・ド・ドゥ
女神の娘ニリチ:神木遥、風の神ヴァイユ:西岡憲吾
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)
まず最初の演目は、"神"と添えられて『フローラの目覚め』。近年、コンクールでヴァリエーションが踊られることが増えているが、それぞれのヴァリエーションだけでなく、4人でのアダージオやコーダとともに上演された。春の女神フローラを野舞翔、月の女神ダイアナを高橋由芽、暁の女神オーロラを馬野瑞季、青春の女神へーべを大前結希歩と若手たちが、それぞれの持ち味をよく活かしながら観せてくれた。
続いては、"衆"という字が添えられた『パリの炎』よりグラン・パ・ド・ドゥ。春木友里沙の闊達でおしゃまな魅力も持ったジャンヌ、池田健人の好青年らしい雰囲気に高テクニック満載のフィリップで小気味よい踊りを楽しませてくれた。"星"という字が添えられた『タリスマン』よりグラン・パ・ド・ドゥは、女神の娘ニリチを神木遥、風の神ヴァイユを西岡憲吾。薄いサーモンピンクの衣装がよく似合う神木の繊細な魅力、ダイナミックな男らしさを感じさせた西岡でレベルの高い出来。

『フローラの目覚め』
春の女神フローラ:野舞翔、月の女神ダイアナ:高橋由芽、暁の女神オーロラ:馬野瑞季、青春の女神へーべ:大前結希歩
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

『パリの炎』よりグラン・パ・ド・ドゥ
ジャンヌ:春木友里沙、フィリップ:池田健人
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)
"憎"という字が添えられたのは、『バヤデルカ』第1幕よりガムザッティの部屋。バラモン教の巫女ニキヤ(中内綾美)が、領主の娘ガムザッティ(法村珠里)の部屋を訪れ、「ソロルを私に」と迫るシーン。全幕バレエを何度も経験しているベテランダンサーだからこその奥深い表現、微妙な心情をそれぞれ観せてくれ、惹きつけられた。こんな演目を、抜き出した1シーンでもこれだけ伝わる演技で観せられるのはバレエ団の底力という気がする。
"愛"が添えられたのは『ジゼル』よりパ・ド・ドゥ。究極の純愛、ジゼルを踊った荻野あゆ子は、キトリなどの明るい役柄も似合うダンサーだが、どんな役をしても癖がなく、とても自然に見えることに好感が持てる。スーッと、自然にその役のなかにいる感じ。アルブレヒトの中野吉章も恵まれたスタイルに数多くの舞台経験に裏打ちされた深い心情表現が良い。パ・ド・ドゥで終わるのではなく、全幕のラスト、ジゼルが墓に戻り、アルブレヒトがひとり佇むところまで上演されたのも、とても良かった。

『バヤデルカ』第1幕より ガムザッティの部屋
ニキヤ:中内綾美、ガムザッティ:法村珠里
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

『ジゼル』よりグラン・パ・ド・ドゥ
ジゼル:荻野あゆ子、アルブレヒト:中野吉章
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)
休憩を挟んで後半は、"宴"という字が添えられて『眠れる森の美女』第3幕。満面の笑顔でキュートに観せてくれた大前結希歩と藪内暁大の長靴をはいた猫と白い猫、表情変化が楽しい春木友里沙と池田健人の赤ずきんと狼。フロリナ王女と青い鳥は、スタイル良く華があり優しげな椿原せいかと、爽やかで踊る楽しさが広がる大西慎哉。6人の子ども達が元気いっぱいに楽しませてくれた親指小僧を経て、オーロラ姫とデジーレ王子のグラン・パ・ド・ドゥだ。オーロラ姫は、冒頭で紹介した佐野光里、デジーレ王子は今井大輔。佐野はきちんとした基礎の上に、優しげで知的な品を感じさせるバレリーナ。今井の堂々とした踊りと安心感のあるサポートの中、主役として満足できる踊りを観せてくれた。
(2026年7月4日 あましんアルカイックホール・オクト)

『眠れる森の美女』第3幕
白い猫:大前結希歩、藪内暁大
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

『眠れる森の美女』第3幕
赤ずきん:春木友里沙、池田健人
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

『眠れる森の美女』第3幕
フロリナ王女:椿原せいか、大西慎哉
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)
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