石井潤作品から石原完二の『trois amours~3つの愛の物語』、小野絢子&奥村康祐を迎えて『ラ・シルフィード』──全京都洋舞協議会65周年記念公演

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

全京都洋舞協議会65周年記念公演

『バッロ・ディヴェルテンテ』石井潤:振付、『trois amours~3つの愛の物語』石原完二:振付 ほか

台風で数日前から東海道新幹線が止まる中、関東からの出演者や指導者も駆けつけての公演。昼夜2公演で、私は昼公演を観た。最初に上演されたのは石井潤振付『バッロ・ディヴェルテンテ』。
伸び盛りのジュニア達の瑞々しい魅力を引き出す作品。未熟な部分も、真摯に取り組む少女達の踊りで初々しさとして好感が持てる。ダンサーの成長課程をよく知るからこその石井の振付だと痛感。中心的な役割を担ったのは神谷駿斗で、技術をともなったユーモアのある役どころで目を引いた(夜公演では、これにかわって、やはり石井潤振付の『シャンソネッタ・テデスカ』が上演された)。

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『バッロ・ディヴェルテンテ』
撮影:古都栄二(テス大阪)

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『バッロ・ディヴェルテンテ』
神谷駿斗(中央)
撮影:古都栄二(テス大阪)

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『シャンソネッタ・テデスカ』
撮影:古都栄二(テス大阪)

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『シャンソネッタ・テデスカ』
撮影:古都栄二(テス大阪)

次には、石原完二振付の『trois amours~3つの愛の物語』。2010年に初演された石原の『GATE~開かれるべき扉』を改変しての作品。ベルリンの壁の崩壊から石原が感じた、人間が起こした戦争や不条理なものへの鎮魂歌であり、また、浄化されていく心を表現したいと振付けられたと聞く。今、また平和とはいえない世界になってしまっている中、新たなデュエットを加えて、3カップルと群舞やソリストパートとともに構成。以前の上演も観ており、ベルリンの壁崩壊直後にベルリンを訪れた身としても、後ろの壁が、今の世界の状況を思うと、現在もやはり、見えない"壁"があるのではないかという想いが頭を駆け巡りながら観た。主の3カップルは、若さ、みずみずしさを感じさせる伊東楓香と藤井颯の"愛は駆け巡る"、大塚春菜と塚本士朗のしみじみとした表現がしみ入る"鳥の歌─戦禍を逃れて早く故郷に帰りたい─"、そして、圧倒的な存在感でテーマを伝えた藤川雅子と鷲尾佳凜の"BLACK EARTH"。良いダンサーたちにより見応えある作品に仕上がっていた。

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『trois amours?3つの愛の物語』
鷲尾佳凜、塚本士朗、藤井颯
撮影:古都栄二(テス大阪)

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『trois amours?3つの愛の物語』
藤川雅子、大塚春菜、伊東楓香、鷲尾佳凜、塚本士朗、藤井颯
撮影:古都栄二(テス大阪)

そして最後は、『ラ・シルフィード』2幕を、新国立劇場バレエ団から小野絢子と奥村康祐を主役に迎え、末松大輔監修で。小野のシルフィードは動き、表情、すべてに細やかな意味が感じられ、加えて香り立つ魅力がある。この人は本当に妖精なのではないかと思えてくるような。奥村のジェームズもアレグロのパの甲の美しさ、そして、こういった役でいつも優しげな彼の男らしさも以前より増しているように感じられ、さすが、と思いながら観た。ともに出演したダンサーたちの良い刺激にもなったのではないだろうか。
(2024年9月1日昼 ロームシアター京都サウスホール)

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『ラ・シルフィード』
シルフィード:小野絢子、ジェームス:奥村康祐
撮影:古都栄二(テス大阪)

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『ラ・シルフィード』
シルフィード:小野絢子、ジェームス:奥村康祐
撮影:古都栄二(テス大阪)

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