ヘスース・カルモナのエネルギー溢れるサパティアード、フラメンコ・フェスティバル 2018

Flamenco Festival 2018 Ballet Flamenco Jesus Carmona
「フラメンコ・フェスティバル 2018」 バレエ・フラメンコ・ヘスース・カルモナ

"IMPETUS" by Jesus Carmona『インペトゥス』ヘスース・カルモナ:振付

ニューヨーク・シティ・センターで行われたフラメンコ・フェスティバルは今年で18回目を迎えました。メインステージの3つ目のプログラムは、最終日のヘスース・カルモナの『インペトゥス(勢い)』です。この作品名がシンクロしているように、ヘスース・カルモナは、今、勢いに乗っています。
去年のフラメンコ・フェスティバルのニューヨーク公演にもカルモナは15分ほど出演していたのですが、 圧倒的実力に示していました。
その1年後には、カルモナ自身のカンパニーのニューヨーク初公演が行われ、大成功を収めました。今後、カルモナはますます世界的に活躍し、歴史に残るバイラオールとなっていくと思います。
https://www.chacott-jp.com/news/worldreport/newyork/detail000063.html
https://www.chacott-jp.com/news/worldreport/newyork/detail000067.html

カルモナは、体幹を鍛えるために「TRX」(Total Body Exercise)というアメリカ海軍シールズが開発したトレーニングを行い、1時間20分の舞台を最高の肉体の状態で踊り、息切れしないために、「呼吸法」も学び訓練しているとのことです。これを聞いて、カルモナの圧倒的実力の秘訣が少し理解できました。
『インペトゥス』はカルモナの振付で出演はカルモナ自身も含めて6名(男性3名、女性3名)ルシーア・カンピーリョ、アゲダ・サアヴェドラ、マルタ・ガルヴェス、アンヘル・レィエス、クリスティアン・ガルシアです。
ミュージシャンは5名、ギター、カンテ、ヴァイオリン、パーカッションです。曲はギタリストのダニエル・フラード、オスカル・ラゴによるもので、スペインの作曲家のイサーク・アルベニス(ピアニスト)、ラファエル・リケーニ(ギタリスト)、マリオ・エスクデロ(ギタリスト)の曲もフィーチャーしていました。

© Beatrix Molnar

© Beatrix Molnar

照明は、ダヴィッド・ペレスです。この作品は全体を通して、照明にこだわりが感じられ、スペインの中世の絵画のように明暗が強く、舞台上に劇的な場面を作っていました。舞台背景が全体に真っ暗な中に、踊っている舞踊手の部分だけ明るいスポットライトが当たり、その舞踊手の踊りが終わるとライトが消えて、次に踊る別の舞踊手にスポットライトが当たっていきました。
9曲が休憩なしで連ねられた公演でした。カルモナはほとんど出ずっぱりで踊りました。カルモナは最初の曲、中間の曲、最後の2曲の全部で4曲をソロで踊りました。

最初は舞踊手5名が舞台上に出ていて少し踊り始めました。そこに、カルモナが前に出てきて、舞台真ん中で、ソロでゆっくり踊り始めましす。鳥が翼を動かしているような手の動きをしていて、ピルエット3回転やシェネなど回転を振付に多く入れていました。時々、サパテアードも入れます。カルモナはバレエ経験があるので基礎がしっかりしていて、バレエとコンテンポラリーの影響を受けた振付でした。
次に女性たちが3名出てきて踊り始めました。ゆっくりと、1人が大きなマントンを持ち、大きく広げたまま、別の舞踊手へと一人ずつ渡して振り回し、踊りながらマントンを持ち替えていきました。
やがて男性のカンテがソロで歩きながら前に出てきて歌いました。そして男性2名、女性3名の舞踊手が激しいリズムで踊り始めました。フラメンコ色が強く、サパテアードが激しく速打ち回転も加えられ、カルモナも出てきて加わりました。音楽もサパテアードも激しく速くなっていき音量も大きくなり、迫力が出て盛り上がりました。

© Beatrix Molnar

© Beatrix Molnar

そしてパーカッションになり、カルモナがソロで踊りました。素晴らしいリズム感で正確な速打ちで、迫力があり圧倒的な実力を見せつけました。リズムを身体に溜め込みつつ、タメの時は静止し手だけを動かし、だんだん速くサパテアードで盛り上がります。動きにとてもメリハリがありました。やがて男性2名が加わり、すごく早い速度の速打ちで動きも速く迫力がありました。他の男性のソロもあり、またカルモナのソロもあり、サパテアードを激しく入れながら、手足の振付も大きく加えて優雅に踊り、洗練された振付でした。
男女のパレハもありました。男女ともバレエシューズで踊りました。鳥が翼を広げてはばたいているような手の動きをしていました。振付はバレエベースで、リフトもあり、クラシコ・エスパニョールやフラメンコの要素もある踊りでした。
そして、カンタオールが歌い、舞踊手3名がコンパスとして周りを囲んで、その真ん中でカルモナがソロで、インプロビゼーションで伝統的フラメンコを踊りました。さすが正統派フラメンコを習得してるカルモナならではの、本物の大迫力のフラメンコを観ることができました。カルモナはピルエット10回転もあります。
次に、女性2名と男性1名の踊りがあり、カンピーリョがカスタネットを長く鳴らして演奏しながら踊りました。カンピーリョも元スペイン国立バレエ団出身で、カスタネットが得意だそうです。この公演でも、全体を通してスパイスとして効いていたので良かったです。
終盤はカルモナのソロが続きます。2曲とも長く、周りをミュージシャンや舞踊手に囲まれて、真ん中でカルモナが周りの音を聴きながら即興でサパテアードを思い切り速打ちしていき、ダンスバトルのように盛り上がる場面でした。これは伝統的フラメンコのインプロビゼーションの踊りです。
カルモナのサパティアードは、リズムは正確、音も大きく鳴らすことができ、身体の中心軸はビクともしないほど安定していて動かないです。そのように極限まで体幹が鍛え上げられている鋼のような肉体から生み出されるサパテアードは、観ているこちら側も息を止めて見つめてしまうほどです。とても男性らしいエネルギーに満ちあふれていました。
ニューヨーカー達はすごく感動に包まれていて、カルモナのこのインプロビゼーションのバイレの盛り上がりの最中には、涙を流しながら観ている人々もいました。
初めてのフルレングスのニューヨーク公演は大成功でした。カルモナは、まだまだこれからも伸びていくバイラオールです。今後、さらに世界的に活躍し続けることでしょう。
(2018年3月11日夜 ニューヨーク・シティー・センター)

© Jesus Vallinas

© Jesus Vallinas

© Jesus Vallinas

© Jesus Vallinas

ワールドレポート/ニューヨーク

[ライター]
ブルーシャ西村

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