ジョージア国立バレエが『くるみ割り人形』を上演、芸術監督就任20周年のアナニアシヴィリが記者会見

ワールドレポート/東京

香月 圭 text by Kei Kazuki

ジョージア国立バレエが12月5日~12月27日に来日し、日本初演となるアレクセイ・ファジェーチェフ、ニーナ・アナニアシヴィリ振付/演出『くるみ割り人形』の上演を行う。東京・神奈川・埼玉、千葉、福島、山形、新潟、群馬、栃木、静岡ほかにて全19公演が予定され、バレエ団総勢65名での来日となる。7月22日に行われた来日公演の記者会見では、芸術監督のニーナ・アナニアシヴィリとプリンシパルのニノ・サマダシヴィリ、そしてティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使が登壇した。

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左から、ティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使、ニーナ・アナニシアヴィリ、ニノ・サマダシヴィリ 写真提供:光藍社

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左から、ティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使、ニーナ・アナニシアヴィリ 写真提供:光藍社

前回ジョージア国立バレエとして来日公演を行ったのは2012年、当時の国名はグルジアと表記されていた。また、2017年に開催されたアナニアシヴィリのガラ公演では、ジョージア国立バレエのダンサーたちも出演している。アナニアシヴィリは、ボリショイ・バレエのプリンシパルとして活躍し、アメリカン・バレエ・シアターなど世界中のバレエ団に客演した。2004年より故国のジョージア国立バレエの芸術監督に就任し、今年で20年目を迎える。
レジャバ大使は、ジョージアについて、人口370万人ほどの小国だが、オリンピックでメダルを多く獲得するなど強い精神をもつ国民だと言う。そして舞踊界のジョージア出身者としては、ジョージ・バランシンとワフタング・チャブキアーニ(1941~73年まで芸術監督)の名を上げた。また、「アナニアシヴィリはジョージアの人間国宝的な存在なので、大統領に話しかけるよりも緊張します! 世界に多くのファンを持つアナニアシヴィリが、今ではジョージア国立バレエの監督として故国の伝統をつないでます。素晴らしいバレリーナが母国に貢献している姿は、私の自信になっております」と胸を張った。

ジョージア国立バレエ『くるみ割り人形』写真提供:光藍社

ジョージア国立バレエ『くるみ割り人形』写真提供:光藍社

今回上演される『くるみ割り人形』について、アナニアシヴィリは「伝統的な『くるみ割り人形』とは違い、20世紀初頭のジョージアが舞台。ジョージア人の医者の家族という設定になっており、子どもたちもクララとフリッツではなく、バーバラとレヴァンというジョージア風の名前になっています。冒頭にはジョージアの伝統的な踊りが登場します。舞台の装飾も特別に今回新しく作り、ダヴィド・ポピアシヴィリという画家とそのチームが手書きでこつこつと描いた装飾になっています」と、くるくるとよく動く大きな目と美しい手の動きは、現役バレリーナだった頃の華を思い起こさせる。
また、「チャイコフスキーは、トビリシのオペラハウスの近くで滞在していた時期があり、トビリシをとても愛していました。ある日、聴こえてきたララバイ(子守歌)にインスピレーションを受けて(アラビアの踊りを)作曲したというエピソードを聞いています。チャイコフスキーの『くるみ割り人形』には、ジョージアに対する愛が感じられるのです」

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ニーナ・アナニシアヴィリ、ニノ・サマダシヴィリ
© Dance Cube Web Magazine

芸術監督として過ごしてきた感慨を聞かれたアナニアシヴィリは「この20年はあっという間でした。これまで自分が手がけてきた仕事の結果を今、見ることができているということを嬉しく思っています。私たちの劇場では、様々なゲストを招き、毎年6月末に国際バレエフェスティバルを開催しており、今年で5年目になります。劇場はいつも満席で、お客様がいつも楽しんでくださっていることが嬉しいです」
バレリーナを目指したきっかけについては「私は運動が得意な子どもで、サッカーもやっていました。8、9歳ぐらいのときにアイススケートの学校に通っていましたが、氷上で『瀕死の白鳥』を踊ったときに、母が本物の羽でチュチュのような衣装を作ってくれました。白鳥の腕の動きも習って、マイヤ・プリセツカヤのように踊りました。それが、バレエへの転向のきっかけになったと思います。10歳のときにトビリシのバレエ学校に入学し、4年後、ボリショイ・バレエ学校に移りました。アイススケートを始めてから少しずつ川が流れるようにバレエの道へと入っていきました」と、白鳥の身振りも交えながら、当時を振り返った。
また、「これまでアナニアシヴィリのバレエ団というイメージが強かったと思いますが、私の名前から独立して、ジョージア国立バレエ自体が質の高いカンパニーとして飛び立っていけることを願っています。そして海外に進出していく中で、このバレエ団を通して、ジョージアという国があること、その国から来た芸術だということを知ってもらうことが私たちにとって非常に重要な任務だと考えています」

ヨーロッパ名門バレエ団のソリストたちによるガラ・コンサート「バレエの妖精とプリンセス」「親子で楽しむ夏休みバレエまつり」に出演中で、『くるみ割り人形』出演予定プリンシパル、ニノ・サマダシヴィリは「日本の観客の皆様の前で踊れることができて嬉しいです。日本の文化も和食も大好きなので、今年の夏の公演も、とても楽しみにしております」「金平糖の精の踊りは音楽も大好きです。音楽に対して正確さが求められるパ・ド・ドゥなので、特に注意を払っていますが、踊るのが楽しくてしかたがないくらい好きです」と語った。

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ニノ・サマダシヴィリ
© Dance Cube Web Magazine

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アナニアシヴィリがプロデュースするワインを前に。左から、ニノ・サマダシヴィリ、ニーナ・アナニシアヴィリ、ティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使 写真提供:光藍社

そして、ジョージアの文化とジョージアの特産品であるジョージア・ワインについて紹介するミニイベントが行われた。ここでアナニアシヴィリはジョージアの「くるみ」について、「くるみはジョージア料理では、トマトあるいはきゅうりと一緒にサラダに使うこともあれば、お菓子にも使われます。ぶどうジュースのペーストとくるみを固めた〈チュルチュヘラ〉という郷土菓子があります。私はいつも携帯していて、時間がないときや、お腹がすいたときに食べます」
ジョージアはワイン発祥の地とされ、ワインづくりの歴史は約8000年前に遡る。「クヴェヴェリ」とよばれる容器を用いたワインづくりの古い伝統は、ジョージアの無形文化遺産に指定され、現在にも引き継がれている。アナニアシヴィリもワインをプロデュースしており、伝統製法で作られたものもある。彼女をモデルにしたバレリーナが描かれた愛らしいラベルは、『くるみ割り人形』の美術を担当したダヴィド・ポピアシヴィリの手によるもの。アナニアシヴィリは「私が作るワインには、皮も中の実も黒いという特徴がある、サペラヴィという最古種のぶどうも使われています。ジョージアでは、子どもにお水を飲ませるときにワインを少し入れるなど、小さい頃からワインに親しむ取り組みをしています。ワイン造りの工程は難しく、非常に労力が要るものです。ですから、ワインをつくる方々に対する感謝と敬意はとても大切だと思っています」と、長く親しんできた故国のワインについて語った。

ニーナ・アナニアシヴィリ芸術監督就任20周年記念
ジョージア国立バレエ『くるみ割り人形』

2024年12月5日~12月27日
Webサイト: https://www.koransha.com/ballet/georgia/

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